擲弾筒・小銃擲弾のはなし②【フランス軍】

先日の投稿の補足的な内容。
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以前の投稿に対する補足的な内容です。良ければそちらも参照してね。(https://togetter.com/li/1968617)

漢陽造 @Gew88suko

Togetterの方についていた@1208Manakaさんのリプに対する返信を基に、少し整理してこちらの方にも書いておく。 英語圏にはどうやら「コマンド迫撃砲」なる謎区分があるらしい。これだからアングロサクソンは…(仏人並感) 【続きます】 togetter.com/li/1968617 pic.twitter.com/tVbBvGbFJm

2022-11-07 00:03:46
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漢陽造 @Gew88suko

該当ページを見たところ「擲弾筒」の流れには属さないものが多分に含まれていたので、その辺りの経緯を軽く解説していきたい。 まず、八九式重擲弾筒のどこが画期的であったか。 第1に、一般の歩兵分隊が運用する装備である点であろう。従来の小銃擲弾より連射性・威力・射程において優れていた。

2022-11-07 00:03:46
漢陽造 @Gew88suko

第2に、分解せず個人で運搬可能な点である。これにより先述のように前線分隊での運用が可能だった。 第3に、小銃擲弾の延長である為に口径が50mmに抑えられていた点である。他国のものはその限りでないが、八九式に関しては旧式の手榴弾も発射可能だった。

2022-11-07 00:11:28
漢陽造 @Gew88suko

この3点が評価され、1930年代後半に各国でブームになったわけである。 具体的にはイギリスの2インチ迫撃砲、イタリアのブリクシアMod.35などが挙げられる。もちろん先のまとめに出てきたフランスのMle.1937もその一つだ。 pic.twitter.com/3oklNducAV

2022-11-07 00:32:50
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漢陽造 @Gew88suko

極めて多くの国で採用された50mm級迫撃砲だったが、戦後は運用者が大きく限られてしまった。 最たる原因は、60mm迫撃砲の普及だろう。「コマンド迫撃砲」のリストにも多数含まれていたが、この口径もフランス軍の装備(Mle.1935迫撃砲)に由来する。

2022-11-07 00:43:19
漢陽造 @Gew88suko

WW2以前は75mm級を軽迫撃砲(中隊単位)、83mm級を中迫撃砲(大隊単位)とする場合が多かったが、フランスでは60mmのMle.1935を中隊単位の迫撃砲として採用していた。(画像は中国に輸出されたもの) コレをアメリカがWW2中にライセンス生産し、戦後には各国にばら撒いたのだ。 pic.twitter.com/ecQLD4IG1C

2022-11-07 00:45:54
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漢陽造 @Gew88suko

同じくフランス製のMle.1927に由来する81mm迫撃砲と合わせてこの2種の口径が西側の標準となり、50mm口径の独自規格は好まれなくなってしまった。 50mm級迫撃砲で標準規格を作れば良かったのでは、とも思うがアメリカ君が40mmの手持ち式擲弾発射器に進んだことも障壁になったのだろう… pic.twitter.com/ijEluQMsnf

2022-11-07 01:13:46
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漢陽造 @Gew88suko

2インチ迫撃砲とその後継としてL9A1を採用し、長年50mm級迫撃砲を運用し続けたイギリスでも順次廃止とされ、2004年までに一掃されてしまった…後継に関しては紆余曲折あり、結局40mmのアドオン式で誤魔化しているらしい。アメリカ君に振り回されるの辛いね pic.twitter.com/P15V1EmFUa

2022-11-07 01:20:47
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漢陽造 @Gew88suko

ちなみに一時候補に上がっていたのがオーストリア製のM6 60mm迫撃砲の特殊部隊向け軽量モデルである。「コマンド迫撃砲」の由来は大方この辺りだろう… ただ、50mm級よりも威力のある60mmを使用する関係上重量があり、緊急的な措置として少数が空挺に導入されたのみとなっている。(予算もないしね…) pic.twitter.com/EbLla8BiR1

2022-11-07 01:28:21
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  • ちなみに英国のL9A1は厳密には分隊単位の迫撃砲ではなく小隊単位の迫撃砲。小隊単位で超軽量迫撃砲を配備し弾薬を多めに充当するコトで中隊単位の迫撃砲を持たない、というのが英軍の方式でした。
    コレが廃止された現状の英国は81mm迫撃砲の下は40mmアドオン式となり、その中間の制圧火力に欠けています。あちらの記事を見るとFN MAGでなんとかするからいいんだもん!って主張してますが…ほんとう?
漢陽造 @Gew88suko

しかし、21世紀の現在でも50mm級迫撃砲を運用している国があるのだ。そう、フランスである。 先のまとめでも触れたLGI(個人用擲弾発射機)がそれだ。しかもコレ、 Mle.1937(50mm級迫撃砲)廃止からかなり期間を空けて1990年台に再び採用されたモノ。強い pic.twitter.com/CELG5dHlbD

2022-11-07 01:45:59
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漢陽造 @Gew88suko

LGIがなかった期間は、小銃擲弾に専用の対人榴弾がありそれを曲射していた。LGIはその上位互換というわけである。 そのためLGIは曲射弾道のみしか想定されておらず、小銃擲弾や手持ち式擲弾発射器にありがちな成形炸薬による対人/対装甲弾頭など半端な弾は存在しない。男は黙って榴弾なのだ… pic.twitter.com/DdCSTV8uZF

2022-11-07 02:00:03
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漢陽造 @Gew88suko

Q. 1930年代後半の50mm迫撃砲ブームの時アメリカはどうしてたの?結局その手の兵器持ってたの? A. 戦間期のアメリカ軍は兵器開発に欠ける予算に乏しく、50mm級迫撃砲も開発していませんでした。小銃擲弾がその役割を務めています。

2022-11-07 02:15:08
漢陽造 @Gew88suko

というか90年代の行き違いを考えると英仏で50mm級迫撃砲を共同開発して使っていれば万事快調だったのでは。 仲良くしようよ… twitter.com/Gew88suko/stat…

2022-11-07 16:22:21
漢陽造 @Gew88suko

それを横目に擲弾筒を復活させるフランスがなかなかイカれてるんですよね

2022-11-07 16:01:04
  • Fly-KというのはLGIの生産を請け負っているラインメタル社が他国へのセールスの際に使っている名称。現状採用実績はUAEのみです