対談「成田悠輔×東浩紀」「民主主義に人間は必要なのか ──『22世紀の民主主義』vs『一般意志2.0』」を見てのコメント ――人間的、動物的、機械的

『22世紀の民主主義』が22万部を突破し、いろいろなメディアで人気の経済学者・成田悠輔氏が、「ゲンロン」を創始した、日本の言論界をリードする作家/思想家の東浩紀氏と、「ゲンロンカフェ」で対談しました。 その対談動画(※ 有料放送 です。動画情報は、冒頭の公式リンクからご覧ください)を見た、まとめ主が対談内容にコメントしたもののまとめです。 AIやアルゴリズムにより、人間の政治家は不要になると言う成田氏と、ナショナリズムに必要不可欠な、人間の必要性を主張する東氏。「民主主義」をめぐり対立した二人の議論を、どう見ればいいでしょうか?
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しろうと @sirouto

さて、ただ一方的に自説を展開するだけでなく、ありうる反論も想定しておこう。これには、東氏が後半に触れていた、アメリカの「サバイバリスト」という集団の話が、関係してきそうだ。

2022-12-03 21:53:21
しろうと @sirouto

「サバイバリスト」とは、災害や戦争の非常時にも生き残れるよう、砂漠などで孤立した生活を送る人々のことだ。その彼らを、東氏は実際に取材したのだという。しかし、彼らは「ウォルマート(スーパーマーケット)」で水を買っていた、というオチがあった。もちろん、それでは非常時に困るだろう。

2022-12-03 21:56:31
しろうと @sirouto

同じ理屈で、成田氏の「メタバースの独立国家」に対して、東氏が「メタバースに国を作っても結局、飲料や食料は、スーパーで買うんでしょ? じゃあ『独立』してないじゃん! 現実に住んでる国家が攻められたり、石油が止まったら終わりでしょ。以上!」みたいに言う光景は、容易に想像できる。

2022-12-03 22:00:16
しろうと @sirouto

この論点については、物理レイヤーが最終的に重要なのはその通りだけど、メタバースのプラットフォーム運営企業がアメリカにあれば、世界最強の米軍に守られているし、シェールガス革命で石油も足りるので、意外と大丈夫そうだ。もちろん、個々の利用者の国が滅べば、その人はダメだが、全体は残る。

2022-12-03 22:05:03
しろうと @sirouto

ただ、安全保障を全面的に米国に依存した分、メタバースへの国家の規制には弱そうだ。「リブラ」も潰されたし。最近のニュースでは、イーロン・マスク氏の改革と、ツイッター社の投稿規制への影響が報道された。もし、メタバース上に国家があれば、そういうのの、もっと大きな出来事が起こりそうだ。

2022-12-03 22:07:58
しろうと @sirouto

さて、ここから、対談のタイトルでもある「民主主義に人間は必要なのか」というテーマに触れていきたい。対談では主に後半で、この話題を展開していた。

2022-12-03 22:10:54
しろうと @sirouto

この議論の対立軸を簡単にまとめると、「人間はAIに置き換えられるので、政治家はネコに置き換え可能」というのが成田氏の立場で、東氏側は「政治に人間は必要で、人間はAIに置き換えられない」という立場。

2022-12-03 22:12:25
しろうと @sirouto

まず、成田氏の立場について、詳しくは冒頭の成田氏についてのまとめを参照してほしい。簡単にまとめておくと、AIやアルゴリズムを利用した便利なWebサービス(たとえばGAFAのそれ)がすでにあるが、政治にもAIを使っていこうという立場だ。

2022-12-03 22:24:29
しろうと @sirouto

一方、それに対して東氏は、「結婚詐欺」の例を出す。「(婚約者たちが)何年か楽しい時間を過ごしても、後で『詐欺』でした、あるいは『AI』でしたと分かれば、崩壊してしまう(大意)」という。だから、結婚は人間でないと成立しない。これは、かなり説得力のある例だ。

2022-12-03 22:30:28
しろうと @sirouto

また東氏は、成田氏の本(22世紀の民主主義)は、「ナショナリズム」の問題を無視しているという。私自身も、成田氏の「政治家はネコに置き換え可能」は、言い過ぎたテーゼだと思う。たとえば、ネコがトップの国で、兵士が命を掛けて戦うか、という疑問がある。だから、国民国家は人間を前提にする。

2022-12-03 22:36:42
しろうと @sirouto

しかしそれでも私は、成田氏に賛同したい部分がある。直接「人間をAIに置き換える」ことはたしかに難しい。が、「動物をAIに置き換える」ことは結構成立しそうだ。あるいは、「物の動物化」が起きるかもしれない。どういうことか?

2022-12-03 22:39:07
しろうと @sirouto

たとえば、多くの人がご存知だろうが、最近のファミレスでは、「配膳ロボット」が皿を運んでくる。産業用ロボット(工場のロボットアームなど)は、昔からすでに実用化されていたが、一般人が身近で見られるロボットとしては、アレの存在感は大きいだろう。

2022-12-03 22:44:29
しろうと @sirouto

そして、ロボットが進化する可能性はまだまだある。たとえば、車輪ではなく歩行で移動するとか、簡単な受け答えができるとか。そういうロボットが普及してくると、人間と機械の距離感も、今と変わってくるのではないか?

2022-12-03 22:50:51
しろうと @sirouto

もちろん、AIと結婚しようという人は、ほとんどいないだろう。しかし、ペット的にロボットを持ちたいという人は、潜在的にいるかもしれない。もし、ファミレスの配膳ロボットが、歩いて皿を持ってくる時代になったら、そういう人は増えそうだ。

2022-12-03 22:53:14
しろうと @sirouto

「人とAIが置き換わる」というよりは「物の動物化」で、「ぬいぐるみ」「ラジコン」とか、今までは「物」のカテゴリーだったものが、AIやロボットによって、「動物」に格上げするとか、その位の変化はあるかもしれない。

2022-12-03 22:55:03
しろうと @sirouto

対談中の「教師がAIに置き換わるか」の話で言えば、教師の置き換えではなく、教科書や時間割がAIによって「動的」になる、という変化だけでも、だいぶ意義はあると思う。「ゲーミフィケーション」というが、教科書が電子化して、さらにゲーム化すれば、生徒の学ぶ感覚はだいぶ違ってくるだろう。

2022-12-03 22:57:45
しろうと @sirouto

あるいは、結婚詐欺の例を反転させれば、「仮面夫婦」という例を挙げられる。「結婚」という枠組みがなければ、全体が崩壊してしまう、というのが結婚詐欺の話だったが、逆に結婚の枠組み「しかない」場合、仮面夫婦になる。

2022-12-03 23:00:06
しろうと @sirouto

今は昔より、未婚や離婚が増えているのだから、仮面夫婦も増えているかもしれない。そして、AIと直接結婚はできないが、その心のスキマの方を埋めることは可能だ。たとえば、ペット的なロボットだとか、美少女UIを持つAIとのチャットサービスだとか。

2022-12-03 23:02:41
しろうと @sirouto

これは、分かりやすい説明のために、やや極端に単純化した例だが、そもそも「結婚制度」の「伝統芸能」化が起きるかもしれない。伝統芸能とは「よそ行き」のもので、外国に対しては日本の誇るべき文化だというが、実際に自分ではほとんど体験しないようなものだ。

2022-12-03 23:06:31
しろうと @sirouto

「よそ行き」の社会的な体裁を保つために、結婚はしているものの、キャバクラやホスト的な疑似恋愛サービスとか、ロボットやAIのような疑似ペットとか、実質的な心の拠り所は別、というのは十分想定できるだろう。

2022-12-03 23:10:50
しろうと @sirouto

結婚詐欺の話のように、AIとは結婚できない、大多数の人はできてもしないのは、まったくその通り。だが、形式と内容、「結婚」と「愛」は分離しうる。結婚より愛の範囲の方が広いから。たとえば、動物や機械とは結婚できないが、「愛犬」「愛車」のように、人間以外にも愛は注げる。

2022-12-03 23:13:44
しろうと @sirouto

少し別の角度から見よう。「AIイラスト」の話が、対談で少しだけ触れられた。が、「人間の仕事がAIに奪われる」とか、「AIが作るものは量産的で無個性」とか、そういう先入観が、一般の間でおそらく強いかと思う。別に間違っているわけでもないが、少し相対化しておきたい。

2022-12-03 23:21:58
しろうと @sirouto

youtube.com/watch?v=fpUpVz… Disturbed - Bad Man [Official Music Video] AIイラストサービス「Midjourney」を利用したMV作品。約2周間前に公開され、現在約160万再生。

2022-12-03 23:26:32
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しろうと @sirouto

べつにAIを使うと、作家性が消えてしまうとか、そういうわけでもない。この作品全体の表現、意図というものを強く感じる。もちろん、これは例外的な傑作であって、ファーストフード的に消費される、量産型のAIコンテンツの方が、量としては圧倒的に多いだろうけれど。

2022-12-03 23:29:54
しろうと @sirouto

ところで、「人間」と「動物」の議論は、一昔前の東氏自身が展開していた。とくに、精神科医の斎藤環氏との間で。その時は、東氏が「(情報環境によって)人間が動物化する」というような立場で、斎藤氏の方が「(言語を扱う)人間の本質は変わらない」というような立場だった。つまり、今回と逆だ。

2022-12-03 23:33:58