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『輪るピングドラム』OP「ノルニル/少年よ我に帰れ」が届いた朝に思ったこと

素晴らしいOP曲は、いろいろな事を語りかけてきますね。 『輪るピングドラム』の「ノルニル」も実に素晴らしいです。
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小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

『輪るピングドラム』OP「ノルニル」のCDが届いた。ライナーノーツの歌詞を読んで、細かい部分で何を歌っているのかやっとわかった。セカイ系の本質を歌っているようで、なかなか面白い。

2011-10-10 10:59:37
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

「ノルニル」を聴いていて思ったことだが、セカイ系が好きな人は元々『現実』を平行世界が存在するある時空間上の一点と見ている、少なくとも、この現実と違う世界が存在していて欲しい、もしくはそのほうが面白いと思う感性を共有しているんだろうということ。もちろん理論物理学的な意味ではなくね。

2011-10-10 11:33:01
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

むしろ理論物理学的な意味で世界線を理解しているのなら、もっと楽に現実を観察できるんだけど、セカイ系でいうところの世界線にはそれを隔てる絶対領域のような壁が存在していて、それを運命と呼んでいる。しかもその運命はある種キャラクター化されており、皮肉屋でかつ意地悪という設定のようだ。

2011-10-10 11:37:18
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

世界線を隔てるその壁は、基本越えることはできない。しかしある一定の条件が揃った時に穴が空いて、キャラクターはその穴を通じて、今とは違う現実――自分がなんらかの力を持ち、この世界すら変えられる可能性を持つ場所(セカイ)へとシフトすることができる、というのが共通概念な訳だ。

2011-10-10 11:40:06
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

元々「このままならない現実」は、時代を超えて人が共通して直面するもので、小林秀雄流に言えば「無常」に対する「有常」の世界がモロにそれな訳だが、昔だったらそれを突破する為の手段として宗教があった。その辺りは『無常ということ』の冒頭の鎌倉時代の「なま女房」が象徴的に示しているのだが…

2011-10-10 11:46:39
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

戦後生まれの僕らにとっては生まれた時からすでにそういう「永遠のもの」は身の回りにはなく、おまけにその前の世代が代償として手に入れたはずの「経済的繁栄」も本当に幸せを約束してくれるかというと、実に微妙という困った時代に生きているという共通背景が、別の突破の為の穴を探させるのだろう。

2011-10-10 11:53:25
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

元々「こうあって欲しいなぁ…」という素朴な願いは、『ドラえもん』等を除けば、ティーンエイジャー向けコンテンツ的には少女漫画における重要なテーマである「恋愛」と結びつくことで、長く生きながらえてきたものだ。要するに「先輩が私を好きになってくれたら…いいなぁ」というアレである。

2011-10-10 11:57:50
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

本来全世代的・全時代的なテーマである、「この世はままならない」というテーマが、確かに人格形成の為には重要なファクターであるとはいえ、それにしても何故「恋愛」程度にまで矮小化されてきたのかというと、(続く)

2011-10-10 12:01:15
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

そこにあるのは、各々の人が直面する現実における格差が、戦後一見「小さくなった」ように感じられていた時代が確かにあったからだろう。そこでは、「ままならない」のは人の心ぐらいで、それ以外はお金で埋めることができる。場合によっては、人の心さえも…という意識があったのだろう。

2011-10-10 12:03:08
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

もっとも少女漫画においては、人の心をお金で買ってしまうという展開は「恋愛」の神聖性に抵触するから、あまり露骨にそういう展開は避けられていたとは思うが、レディースとかまでいくと平気でそういう展開は実際にあった。

2011-10-10 12:05:24
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

つまり何が言いたいかと言うと、世界線を隔てる運命の壁が非常に低く感じられていた時代があったと言うことだ。その時代には、運命の壁を越える為のツールは「お金」だった。「お金」さえあれば、自分達の世界を取り囲む壁に穴を開けて、自分の願望が全て叶う世界に飛び出せたはずだったのである。

2011-10-10 12:07:46
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

このあたりの人々の思いを分析しつつ、その思いが結果生み出したゆがみについては、藤原新也のエッセー『東京漂流』『平成幸福音頭』とかがよく描いていると思う。「宗教」や「共同体」の代わりの座を占めた「お金」は確かに一時の幸福を生んだのは事実だが、同時に世代間の断絶を生み出したという。

2011-10-10 12:11:33
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

藤原新也が描いたのは、80年代から90年代の断絶された家族の肖像だったが、まだその時代、「断絶」は敢えて目を背けてしまえばまだ見逃すことが出来る程度の穴だった。普段朝の食卓で話すことはない家族でも、無理矢理リゾート地に出かければ、理想の家族を演じることは可能だったのである。

2011-10-10 12:16:52
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

しかしその穴は、バブル経済の破裂、911におけるアメリカの絶対性の伝説の崩壊、そして延々続く市場および政府の失敗を通じて拡大し、今や誰の目からも背けられないほど巨大なものとなった。日本だけでも、もはや地域間格差以上に世代間格差のもたらす矛盾は、解消不能なレベルにまで来ている。

2011-10-10 12:18:14
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

同時に自分がいまいる世界線を他の世界線と隔てている壁は、高く厚くなり、その前で凍り付いている人々を見て、運命はますます冷笑しているという訳である。そういえばピングドラム12話の女神は、島本須美さんが声を当てていらっしゃった。ナウシカや音無響子と同じ声で笑う「女神」…素晴らしい。

2011-10-10 12:22:17
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

うん。一時壁を低く見せておきながら、その側までやってきた人たちの目の前で壁を引き上げられる。こういう経験をされたことのある人達の間でしか、セカイ系はウケないのかもしれない。その様子をかつての女神と同じ声で笑う「運命」、実に皮肉が効いた配役。(続く)

2011-10-10 12:28:56
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

そして人々を囲むその高く厚い壁を突破する方法は、「本当はない」。それが世界中のまともな宗教の奥義なのだが、面白いことに宗教が世俗化すると、ある一時を境に「その方法はある」と称しはじめ、それに「免罪符」という名前を付けて売り出しはじめる。(続く)

2011-10-10 12:30:45
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

宮部みゆきの『火車』にも同じようなエピソードがある。「蛇が何故脱皮するのか」という話だ。蛇はいつか足が生える、足が生えた方が幸せだと信じて、脱皮をし続けるのだが、世の中には脱皮に疲れてしまったり、そもそも脱皮の仕方すら知らない蛇もいるという。(続く)

2011-10-10 12:33:56
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

そして中には、そんな蛇に足が生えているように見える鏡を売りつける賢い蛇もいるという。多くの宗教が売ってきた「免罪符」とは、その「足が生えているように見える鏡」のことだ。「蛇は蛇だよ。蛇には足がないものだよ」と理解できれば楽になれるはずなのだが、それがわかる人は少ない。(続く)

2011-10-10 12:36:46
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

セカイ系とか厨二病的コンテンツと言われるものが流行る背景には、このような現実に対する諦めがあるが故に、自分の今いる世界についても相対化することで多少なりとも現実の辛さを忘れたいという共通意識があるんだろう。(続く)

2011-10-10 12:41:54
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

そう考えるとセカイ系の主人公達が、ある意味天才揃いなこともよくわかる。世界線を隔てる壁を超えて、次の世界線へとシフトできる人のことを、「天才」と定義するからだ。そういう意味では、ジャンプ系も変わることがない。多分その表現をストレートに見せるか、ひねって見せるかぐらいの違いしかない

2011-10-10 12:45:02
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

さて『輪るピングドラム』だが、13話まで見た段階で、運命→恋愛→宗教→そしてまた運命、という形で物語を構成する要素が深まりつつ、ある種の螺旋形状を描きながら展開している最中だ。間もなく第2番目のOPとして「少年よ我に帰れ」が流されるとのこと。この物語の行く末が実に楽しみだ。

2011-10-10 12:49:50
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

おそらくこの物語で、運命を超えられる何かである「ピングドラム」の正体は明かされないものと思う。それはなにか形として描くことが出来るものではなく、この物語が描いているものそれ自体が「ピングドラム」であるからなのだと思う。

2011-10-10 12:56:11
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

良い物語に付けられるOPは、本当に沢山のイメージを与えてくれる。ホント、「ノルニル」はいい曲だ。しばらく仕事中のBGMはコレに決まりだな。あと早く『輪るピングドラム』オフィシャルサウンドトラックが欲しいデス。

2011-10-10 12:59:59
小林信行 Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

イシイジロウさん(@jiro_ishiihttp://t.co/KnsxMKht のご質問へのご返答という形での補足です。元のツィートはこちら(http://t.co/BtUugydo)にまとめてありますので、関心がございましたらよろしくお願いします。

2011-10-10 19:17:11
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