『輪るピングドラム』OP「ノルニル/少年よ我に帰れ」が届いた朝に思ったこと

素晴らしいOP曲は、いろいろな事を語りかけてきますね。 『輪るピングドラム』の「ノルニル」も実に素晴らしいです。
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Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

まず「世界線」について。僕は厳密に相対性理論を学んでいる訳でないので、間違いがある可能性もあるという前提での回答になりますが、元のツィートで触れている「世界線」は相対性理論でいうところのものとは違う概念です。

2011-10-10 19:18:58
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

相対性理論における「世界線」とは、『四次元時空の中である粒子が動く経路のこと』(http://t.co/2sUj4yzt)です。これは元々一般相対性理論が、時空のゆがみの程度を重力の根源として扱う必要上提唱された概念ですので、「世界」という言葉にさほど深い意味はないと思います。

2011-10-10 19:22:00
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ただ「元々この粒子が四次元空間で動く様を仮に観測できるとしたら」という思考実験を様々な人がしたところ、どうやら「電子レベルの粒子に関しては、ある確率以上の精度でその位置が確定できない」ということがわかってきたという流れがあります。いわゆる量子力学の誕生です。

2011-10-10 19:24:16
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

晩年のアインシュタインが、量子力学の確率論が決定する世界観に関して、「神はサイコロを振らない」として徹底的に反論のための研究をし続けていたというのは有名なエピソードです。

2011-10-10 19:26:11
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

どちらが正しいかどうかはわからないのですが、ものすごく乱暴に言ってしまえば、相対性理論の方は世界を完全決定論的にとらえており、量子力学のほうはある一定の確率に従う非決定論的にとらえているという傾向はあると思います。

2011-10-10 19:27:58
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

この手の話題が科学に新たに導入されると、その思考法は他の様々な分野にも大きな影響を与えます。特に相対性理論や量子力学はこの宇宙における粒子の振る舞いを扱える分野ですから、その理論に対して宗教の立場からもコメントがあるのはご存じの通りで、当然エンタティンメントにも影響を与えています

2011-10-10 19:31:39
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

何故そんなに他の分野の人まで含めて、この「神の方程式」に興味があるのかといえば、それはおそらくこの方程式の一意性が保たれるのかどうかが、この世界が一意的なのか、そして未来は一意的に解かれるものなのか、それとも他の可能性世界はあるのだろうかという、興味と直結しているからでしょう。

2011-10-10 19:35:27
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

さてここで少々話を飛ばしますが、これらの思考法に影響を受けたエンタティンメントの分野の内でも、コンピュータゲームというジャンルに話を絞ってみます。コンピュータゲームの中でもADVゲームというジャンルには、シナリオフローという概念があります。

2011-10-10 19:41:28
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

本来物語を作る時には、作者の頭の中で様々な展開が想定された上で、取捨選択が行われ、最終的に一本道の作品として提示されるのですが、コンピュータ上でのADVゲームの場合はそのコンテンツの性格上、その分岐を直接プレイヤーの目の前で再現することができます。

2011-10-10 19:42:47
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ですので、ADVゲームが「現在プレイヤーが辿っているシナリオの違い」としてパラレルワールドをひとつの作品中で同時に扱うのが得意なのはご存じの通りだと思います。僕が先のツィートで言っている「世界線」は、このフロー上の線のように世界の進行を見ているという感覚を差しています。

2011-10-10 19:44:46
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

相対性理論は別として量子力学の場合には、世界線の観察にはこの「観察者」の存在が大きな意味を持ちます。何故なら観察者が観察という行為をすることによって、ある一定の確率で世界は分岐し、その分のパラレルワールドが生まれることになるからです。

2011-10-10 19:46:54
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ただしこの場合のパラレルワールドは、ある一定の確率分布に従ってある密度を持って分布しているはずなので、大局的には大きな差がないというのがポイントです。これが確率論を導入する意味なのですが、ADVゲームのフローはそれとは違い、その辿っている道が違えばまったく展開も違うのが理想です。

2011-10-10 19:50:05
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

従ってフローを構成している各々のルートとルートとの間には、単なる条件分岐を超えた何か非常に高くて厚い壁があるというイメージに繋がります。世界を別ける壁といいますか、先のツィートではそれを「絶対領域」「運命」と呼んでみました。

2011-10-10 19:53:50
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ひとつしかルートが見えないフロー上に乗っているとそのルート自体が「運命」のように思えるのですが、複数のフローが存在することを前提にすると、むしろ運命とははそのフロー上のルート間を隔てるもののほうがふさわしいような気がします。

2011-10-10 19:54:45
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

これはフローからフローへのジャンプは特別な条件が満たされていなければ「基本的にはできない」ということに基づいています。ゲームの場合でも、デザイナーの意図以外にそういうことが起こってしまったら、それは「バグ」ですので修正されるべき対象になります。運命を勝手に変えてはいけないのです。

2011-10-10 19:58:58
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

セカイ系とは、自分をとり囲んでいる陰鬱でつまらない世界が、なんらかのきっかけで大きく変わる瞬間を取り扱うジャンルだと思います。

2011-10-10 20:03:30
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

そういうジャンルの作品が大きく受けられてきている背景にあるのは、今自分がいる世界をシナリオフロー的に考えるADVゲーム的な思考が割と一般化したということと、そのフロー間を自由自在にジャンプして移動することは、たやすくないという共通認識があるからじゃないかなと思った次第です。

2011-10-10 20:04:32