死ぬのがこわくなくなる話 第58話

渡辺浩弐 @kozysan

『死ぬのがこわくなくなる話』です。SHINE代表が昨日提示した思考実験を読み、驚きました。皆さんは、どう感じましたか。　　　 *未読の方、ぜひ@memeJekyll氏の、特に昨日のツイートを読んでください。

渡辺浩弐 @kozysan

オウム騒動の時のマスコミや評論家の対応、そこに表れた欺瞞、その弊害を、僕はかなり近くで目撃しました。このテーマについて、あくまでもフェアなスタンスを維持したいです。読者側にも、SHINE側にも、理解を頂きたいです。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

@kozysan 渡辺氏の立場は理解しています。その上で、有意義なコミュニケーションができるとしたら幸いです。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

ちなみに我々はそもそも「洗脳」という行為に価値を見出すことができません。洗脳される前と後で、自我が変化すると考えないからです。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

記憶と自我の関係について言及されている方が多いようですので、もう少し説明しておいた方がよさそうです。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

記憶は、あなたの存在を保証しません。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

あなたの記憶がオリジナルのものでなくても、改変されていても、一部あるいは全部がそっくり消えてしまったり入れ替えられてしまったとしても、あなたはあなたです。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

重要なことは、あなたが今自分を自分だと思っている、その感覚です。その正体は何なのかということです。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

そこから、もう一歩、考えを先に進めてみましょう。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

突飛なたとえ話ですが、あなたのもとに魔法使いが現れたとしましょう。そして、あなたは誰になりたいですか、と聞きます。その夢を今すぐにかなえてあげます。あなたは世界中の誰にでも、なりたい人になることができます、と。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

あなたは……誰でもいいのですが、例えばオバマ大統領になりたい、と言います。魔法の力で瞬時に願いはかなえられます。あなたはそう、なります。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

しかし、あなたは、あるいはオバマは、全く驚かないだろう。というか、気づきもしないでしょう。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

あなたは、オバマとしての日常を続けます。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

あなたの肉体はオバマそのものとなっているはずです。もちろん周囲の環境も。それだけでなく、記憶も、思考回路も。ハワイ生まれ、ハーバード大学を出て、弁護士としての活動を経て議員となり、2008年のアメリカ大統領選挙を勝ち抜いた、そんな人物です。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

目下、国内の景気対策に悩み、海外はリビアや北朝鮮に手を焼き、中国の動きに神経をとがらせる。プライベートな時間は娘達と遊んだり、時にはホワイトハウスの特設レーンでボウリングに興じたりもする。その時あなたの中には、そんな、オバマとしての記憶と意識しかない。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

もともとのオバマは、どうなったのでしょう。たぶん元のあなたの肉体や記憶そして環境を引き継いでいるのでしょう。そして自分がかつて第44代大統領だったことなどちらりとも思い出さないことでしょう。なぜならその頭の中にそんな記憶は、ないのですから。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

さて、あなた。今これを読んでいるあなた。あなたは実のところ、つい3分前まで、オバマ氏だったんですよ。そう言われて、すんなり信じられる人は、世界に一人だけでしょうね。

memeJekyll@SHINE @memeJekyll

しかし、あなたは世界の誰にでも瞬時になれる。そう断言することは、できる。ただ、今すぐオバマになったとしてもあなたは気づかない。その時、物質的なあなたの中には、ずっとオバマだった記憶が、物質的に存在しているだけだからです。

渡辺浩弐 @kozysan

確かP・K・ディックの小説で、宇宙人がとある地球人の体に入り込む、という話がありました。その人物の脳内に入り込み、記憶までを自分のものにしてしまう。ただし外見はそのまま。

渡辺浩弐 @kozysan

うすうす感づいていた妻に、ある日、夫は告白します。自分は本当は以前の自分ではない、と。ところが妻はそれを受け入れて……という内容だったように記憶しています。

渡辺浩弐 @kozysan

SF小説としては傑作ですが、思考実験としてはどうしても納得できないところがあります。記憶まで全部獲得したとしたら、もう当人すら、入れ替わったことに気づくことができないのではないかと考えられるからです。

渡辺浩弐 @kozysan

オバマの件も、宇宙人の件も、話として全く矛盾がないでしょう?　ということは、あなた自身も、少し前までオバマだったり宇宙人だったりした可能性があるんです。

渡辺浩弐 @kozysan

いや、あなた、というのは一般的な意味での読者ではなく、本当に「あなた」、つまり今ほらそこでこの文字を読んでいるあなたのことです。

渡辺浩弐 @kozysan

あなた「自身」は、数分前まで別の人の体の中にいたかもしれない。

渡辺浩弐 @kozysan

オバマだったかもしれないし、渡辺浩弐だったかもしれない。実はいろいろな人に入れ替わられ続けているかもしれない。いや今この文字を読んでいるあなたの純粋主観からみると、「実はいろいろな人に乗り移り続けているかもしれない」ということになります。