伊藤康英さんによる管弦楽版「ぐるりよざ」の解説
【お知らせ】今日の19時20分よりNHK-FM全国放送にて、管弦楽版「ぐるりよざ」が取り上げられます。先月、川瀬賢太郎氏指揮名古屋フィルにて演奏されたもの。是非お聴きください。http://t.co/UfPorpeO
2011-10-23 09:03:11管弦楽版「ぐるりよざ」について。その1)吹奏楽版を1990年に書いた当初より、管弦楽をイメージしていたため、是非管弦楽版を作りたいと思っていた。それで、1999年には小田野宏之氏指揮の京都市民管弦楽団で演奏。その後ミュンヘンなどに演奏旅行を行っている。
2011-10-23 09:05:11その2)その後、2004年だったか、改訂するつもりで新宿交響楽団(高畠浩氏指揮)に取り上げていただいたが、1楽章を改訂するのみに留まった。
2011-10-23 09:06:34その3)それと相前後して、鈴木竜哉氏指揮の、四芸祭オーケストラ(東京芸大、京都芸大、愛知県芸大などのメンバーによる)で演奏されたものの、オーケストレイションの不完全さを痛感、再度の改訂を行うこととした。
2011-10-23 09:09:09その4)吹奏楽に弦を加えただけのオーケストレイションではダメで、もっと弦を鳴らさなくてはならない。そんな折、2007年初頭になって、ダグラス・ボストック氏よりスイスのアールガウ交響楽団でとりあげたいという話になり、それを目標に改訂することとした。
2011-10-23 09:10:46その6)改訂に際し、男声合唱を全楽章に用いることとした。そのこともあって、第2楽章は大幅に変更することにした。約50小節ほど長い。
2011-10-23 09:12:08その7)第2楽章は「さんじゅあんさまのうた」「だんじくさまのうた」といったメロディを使っている。このメロディを使って、林望氏作詩の「想念」という隠れキリシタンを歌った詩を載せて歌曲を作ったことがある。http://t.co/khuE0OkN
2011-10-23 09:14:01その8)http://t.co/khuE0OkN ちなみに、このYouTubeでの曲(詩の原題「想念」を「いんへるの」(=インフェルノ=地獄)と改めた)はその後改訂し、今年の奏楽堂日本歌曲コンクールに出場し、第2位を得た。
2011-10-23 09:15:28その9)その「いんへるの」の改訂版を収めたCDは、明後日発売されます。CD「そこにあなたがいてくださることは」。http://t.co/O4pYuiG0
2011-10-23 09:18:52その10)さて、その「いんへるの」を逆に「ぐるりよざ」第2楽章の中間部に用いることとした。結果、訳50小節ほど長くなることとなった。
2011-10-23 09:20:24その11)2007年に書きあげ、2008年3月に初演された改訂版(これは最終の改訂版で、以前の版はすべて破棄する)では、当初、男声合唱をオプション扱いとしていた。というのは、この曲の演奏ごとに合唱を手配することは容易ではないだろうと思ったからだ。
2011-10-23 09:22:00その12)しかし、スイスでの初演では、15名ほどの男声を用意してくれて、それが大変に効果的なものだった。そこで、スコアからoptionalの言葉をカットすることとした。
2011-10-23 09:22:48その13)2管編成の、あまり大きくないオーケストラならば、そして、わりとしっかりとした声を持っている男声合唱ならば、合唱は15名から20名いれば十分だろう。30名いたらかなり立派に響くと思われる。
2011-10-23 09:24:03その14)スイス初演は2008年3月2,3,4日、スイスのアーラウにて。日本初演は同年4月28日、下野竜也氏指揮、九州交響楽団。両者とも男声合唱が含まれた版。
2011-10-23 09:26:16その15)そして今年になって、川瀬賢太郎氏指揮の東京シティ・フィルにより、2月26日に演奏。これは合唱を用いずに演奏された。男声合唱が入るととても効果的になるため、この時に合唱が入らなかったのは些か不満ではあった。が、合唱なくても十分に効果的であることが証明された。
2011-10-23 09:28:35その16)さて、9月に演奏され、本日オンエアされる名古屋フィルも、合唱無しの版。ほんとうは合唱が欲しいところではあるが、合唱の有無にかかわらず、広く演奏されるようになると嬉しい。
2011-10-23 09:29:46その17)ちなみに、管弦楽版では、特に弦を鳴らすためにずいぶんといろいろな工夫をしたつもりである。詳しくはオーケストラスコアをご覧ください。http://t.co/Cr77ZzfP
2011-10-23 09:31:10その18)たとえば、ヴァイオリンに、吹奏楽では用いられない高音域をあえて用いた(ために、コンマスから「高い!」と言われた)。
2011-10-23 09:31:44その19)弦を鳴らすためには、効果的な弓の返しも必要だと思う。もともと吹奏楽用に書いているので、どうがんばっても弓順がうまくいかない箇所もあったが、虐に思い切って吹奏楽版とは全く異なるリズムを書いたところもある。
2011-10-23 09:32:50その20)たとえば、第3楽章の最後(スコアの79ページ)の弦楽セクションは4分音符で演奏させることで、弦を効果的に鳴らすことができた。しかし、だからといって、このスコアを見て新たな吹奏楽編曲など作るなんて愚かしい話。
2011-10-23 09:34:28その21)・・・と論じていると、オーケストラからの編曲方法についての問題点など書きたくなるのでここで止めるとして。
2011-10-23 09:35:09その22)ところで、オーケストラ版にはハープが入っている。これは、吹奏楽版初演間もないころ、秋山紀夫先生が指揮するソニー吹奏楽団でとりあげていただいたときに、ハープを入れて欲しい、という要望があり、
2011-10-23 09:36:24その23)それならば、いまちょうど管弦楽版を書いていますからそれにハープを入れることにしましょう、そうしてそのハープ・パートを特別に吹奏楽でもお使いください、と言ったため、ハープを使用している。
2011-10-23 09:37:19その24)今、私が担当する洗足のグリーン・タイ ウィンド・アンサンブルにても「ぐるりよざ」を練習しているが、(11月26日19時本番at前田ホール。私が指揮をします)、ここでもハープを入れた。が、2楽章だけは困ってしまうこととなった。
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