NOSU~従順なロボット~
- keramischmond
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ノスは、遠くに行くことにした。場所は決まっていない。いや、決めなかったというほうが正しいだろうか。主人であるアトム、そして生みの親である所長のことを忘れたわけではない。むしろ、ただの型落ちロボットに可能性を与えてくれたことに対して失礼だと思ったからだ。
2011-10-27 21:01:48幸い、旅をするにあたって、障害はほとんどない。あるとすれば、活動するためのバッテリー充電くらいのものだ。ノスは、形見を手に歩き始めた。
2011-10-27 21:06:34もしかしたら、人の旅よりも楽だったかもしれない。金は必要ない。充電は人の家に上がりこんで交渉すればいいこと。メンテナンスは中で勝手にやってくれる。ノスはただひたすらに歩き続けた。
2011-10-27 21:08:58ノスは野宿で夜を明かしていたのだが、その日は、充電してくれる家が見つからなかった。補助的な役割の太陽電池はある。しかし、時間は夜だ。それも役には立たなかった。
2011-10-27 21:14:06そこに、酔った若者たちが興味を示した。「ん?なんだこいつ?止まってやがる」機嫌でも悪かったのか、ノスは、させるがまま、なすがまま、ノスは地面に叩きつけられ、若者たちにおもちゃのように扱われた。
2011-10-27 21:21:21ノスが目を覚ましたときは、朝だった。「こ・・これは・・・なにが起こったノス・・?」ノスは自分の姿に愕然とした。手は千切れ、足は見当違いな場所を向き、顔の表情は作ることができなかった。
2011-10-27 21:25:14唯一、声はほんのすこし出すことができた。しかし、助けを呼ぶにはそれは小さすぎた。「自分はもう、起き上がることはできないノスね・・・」
2011-10-27 21:28:46ノスの前に人は通りかかることはあった。でも、室岡所長が言っていた通り、「ロボットは使い捨ての時代。」ボロボロのロボットに一瞥をくれるだけで、それ以上のことはなかった。 4章終
2011-10-27 21:33:44ノスはひとつづつ事態を把握しようとした。しかし、ひさしぶりの電気通電だったようで回路のパンクを起こしていた。
2011-10-27 21:45:04「エラーを起こしてるな?ははっ、無理もない。壊れる運命のお前を拾ってきてやったんだ。感謝しろよ?」「あなたは一体誰ノ・・・」ブツッ・・・・「あ、まだ調整ができてなかったか。」
2011-10-27 21:47:28「ええと・・・1253ページ・・・(初期電源投入時と保存時からの復帰方法・・・っと・・・・」カチャカチャ・・パンッ「・・・・ス?」「す・・ってなんだよ!」「ええと、ここはどこノス?」「ここは俺の仕事場兼書斎・・かな?」
2011-10-27 21:52:44「俺は富樫。富樫麟太郎だ。よろしく。」「よろしくノス・・・ぼくはなんでここに・・?」「いやな、俺がな、ロケハンしてたら、あまりに旧型のロボットが捨ててあったもんで気になって近づいてみたらな、なんか直せそうだったんで拾ってきたんだ。」
2011-10-27 21:59:25「なんか雑な理由ノスね・・」「雑とか言うなよ!・・あ、そういえばこれは一体なんだ?あまりに分厚い書類だったから覗いてみたが、どうやらお前の設計図みたいじゃないか?」「ああ、それは・・」ガタッ・・ゴロッ「ああ、まだ手と足ついてないんだからしばらくおとなしくしてろ。」
2011-10-27 22:05:56ちぎれた手と足はまだ直っていなかった。「お前、名前は?」「のす、ノス」「そうか、ノスか。俺はちょっと出かけてくる。おとなしくしてろ。な?まあ、その姿じゃ何もできなさそうだが・・」「わかったノス」「よし。じゃあな」
2011-10-27 22:09:39ノスは、なぜ自分は助かったのかがまだ理解できていなかった。しかし、助かったことは真実。そのことを充分理解し、感謝しようと心に決めた。
2011-10-27 22:26:32しかし、助けてもらって感謝することは当然として、自分のマスターも、お金も持たない自分にそれ以上のことは自分にはできない。「これからどうしよう・・」ノスは頭の中で反芻した。が、頭の中で回り続けるだけで、結論は出ない。
2011-10-27 22:32:58そうこうしている間に、富樫が帰ってきた。「お?充電は済んでいるようだな。ノス?」「富樫さん・・・」「ん?なんだ?」「僕はどうしたらいいノスか」「なんだ藪から棒に?」「僕は自分のマスターも、お金も持ってない。あなたにお礼をすることもできません。」
2011-10-27 22:40:04「ノス・・・いいんだよ、そんなこと考えなくても。まだ体は直ってないんだ。まだしばらくここにいるといいよ。」「そうノスか・・・?じゃあしばらくここにいさせてもらうノス!」ノスはこのとき、この人に、できるかぎりのことで恩返ししようと決めた。
2011-10-27 22:47:59ノスは、人に甘えたことはなかった。今までは、自分がロボットとして、マスターに誠心誠意尽くすことしか考えていなかった。ノスは自分の心の変化に、多少の違和感を覚えながらも、初めて会った富樫さんに尽くすことでその違和感をかき消そうとしていた。 4章終
2011-10-27 22:56:03