石工の魔女短編・煙管石の乙女
- motikinako_kuzu
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あそこにでっけえ煙管石が見えるだろう。わしらがパイプに使う、濡れれば柔らかく、乾けば艶やかに固い、不思議な石。あそこのでっけえ石はわしらを守る神様の宿り石。わしらはらからを守る大いなる豹の石なんだよ。分かるかい。だからいたずらなんかしたらいかんよ。
2023-01-19 01:53:49老爺が少女にそう語り聞かせた。少女はにっこりと笑って大きく頷いた。良く話を聞く良い子だった。 そんな二人の後ろで、矮躯の少女を肩に乗せた、大理石で出来た巨大な女魔物の像(女ガーゴイル)がばさりばさりと飛んできて村に影を作り、大事なトーテム像をむんずとつかんで持ち上げた。
2023-01-19 01:55:35「……対価は払う」 ばらばらばら。 黄金がばらまかれた。家一つ分もあるほどの。 ばっさばっさばっさ。 そうして大理石の乙女と矮躯の魔女は飛び去っていった。 長老と少女は顔を見合わせた。 「あーーーーーっ!!!」 「うわーーーっっ!!!」 泥棒だった。罰当たりで不敬で金回りの良い。
2023-01-19 01:57:02それから二週間。猟はうまく行かねえわ馬は機嫌を損ねるわ首長はタンスに小指ぶつけるわと部族は散々だった。下手人の正体は分かっている。石工の魔女と呼ばれる、あらゆる石から魔物を産み出すおぞましき魔女だ。神聖なトーテムが損なわれることは決してあるまい。あれには魔除けの力が宿るから。
2023-01-19 01:59:01しかし守護のない生活にはもう耐えられない。如何に恐ろしい魔女であろうと、如何に勝ち目のない戦いであろうと、精霊の加護をこの手に取り戻すため、部族の男達は手に槍を、弓をもって戦の準備を整え、いざ向かわんとするところだった。
2023-01-19 02:00:24ところがふんふんと鼻息荒く男達が里を出た三十分後、わいわいと男達は元気良く帰ってきた。 泥棒を目撃してしまった少女は家から顔を覗かせて様子を見てみた。
2023-01-19 02:01:35かつての煙管石と同じものが、あまりにも美しい女の姿をして男達に連れられて歩いてくる最中だった。 手足の先には獣の様相を見せ、背には部族の祈りの言葉が残されている。薄く笑いを湛えた顔はあまりに穏やかで美しく、背から生えた翼の先に至るまで調和の取れた美しさであった。
2023-01-19 02:03:19「……! 精霊様……ちがう、女神様だぁ……!!」 憧れに瞳を輝かせる少女に気がつくと、煙管石の乙女はにこりと笑いかけてきて、少女は栄光に身を震わせ、理由もなく嬉しくなるのだった。
2023-01-19 02:04:29煙管石の乙女はいやもうどう扱うんだと会議は紛糾した。男達は美しさに骨抜きになっていたが長老は「しかしこれは魔女の手が加えられたのでは……」としぶった。 しかし会議の席で「女神様!!女神様だよ!!あたし達とお話しするために、人間に似た形になったの!!そうでしょ!!」と言う者が。
2023-01-19 02:05:59少女だった。目はキラキラ頬は紅潮して憧れを全身に漲らせている。 煙管石の乙女は少し言葉に迷った。 「いや、あー……私はそんなに大層なものじゃあ、ないのだが」 「女神様!!」 「まぁ、うむ……」 「むう、うむ……」 煙管石の乙女も長老もそれに押されてしまった。
2023-01-19 02:07:41まぁーー女神様ならしかたねえな、美しいし、という雰囲気が村には広がった。煙管石の乙女は時おりしか訪れないが、それでも村の者達には優しく、まさに神か精霊のように振る舞った。
2023-01-19 02:08:45パイプはそのむらでは特別なものであった。成人として認められた物は自分のパイプを持つのだ。煙草は精神を落ち着かせ、精霊との交信をもたらす、聖なる薬の一種であった。そして煙草を栽培、採取するのは女子供の大事な仕事の一つであった。
2023-01-19 02:09:55「精が出るね。良いことだ」 煙草を採取する少女を煙管石の乙女は眺めていた。 「女神様!!」 煙草で一杯の籠を手に少女はかけよる。 「それは、これから家に?」 「はい! おじいさまの分と、おとうさまの分と、お兄さん、お母さん、おばあさまと……」 「そして、キミの分だ、そうだね?」
2023-01-19 02:11:49その日は少女の成人の日であった。 「はい!」 煙管石の乙女はにっこりと答える少女に頷いた。 「ふむ……ちょっと、失礼しよう」 煙管石の乙女は籠をそのあまりにもしなやかな指先で見聞する。 畏れ多くも光栄な事に喜んで籠を差し出す少女。 煙管石の乙女は、その中から一等良い葉っぱを選り分けた。
2023-01-19 02:13:17そうして、それらをつまんで口に含んだ。 咀嚼し、嚥下する。 喉の動く様も美しくなまめかしかった。 そして見惚れる少女に煙管石の乙女は、 「……うん、口を開けてくれないか」 と。 少女はいわれるがままに力を抜いて、口を開いた。
2023-01-19 02:14:31「……ちゅ、ふっーーー♡」 「……!? んむっ、んんんんっ!?♡♡」 その唇に深く、舌を喉奥まで絡めるような口付けをした。 少女の身体をがっしりと両の手、両の足で絡めとり、頭を羽交い締めにして、決して逃れられないようにして舌をねじれ、絡めさせ、唾液を掻き出すように。
2023-01-19 02:16:03「ふっ、ふぅーーーー♡♡♡」 少女の喉を通って、煙と言うにはあまりに湿っていて、濃密で、甘く、焼けつくような吐息が肺を満たす。 「ふぉ゛っ♡♡ ぢゅっ……ぅ゛っ、う、おぅ゛っ……♡♡♡」 舌を引きずり出されそうなほどからめとられて、強制的に喉を開かされて、煙管石の乙女の煙を注がれる
2023-01-19 02:18:04少女のはじめての口付けで、はじめての喫煙だった。 煙石の乙女が腹の中で燃やした煙草が、あまりにも甘い香りになって少女の呼吸器の全てを焼く。
2023-01-19 02:18:50「おっ、ぅっ♡♡ ぅ゛ーーーーーっ♡♡♡」 そして初めての絶頂。先日初潮を向かえたばかりの少女は暴力とまで言える愛情を注がれ、腰砕けになって全身の力を抜いた。 しかし、へたりこむことは煙管石の乙女が許さなかった。 「ん、ちゅう……♡ れる、ずるるるっ♡♡じゅっ、じゅご、じゅ♡♡♡」
2023-01-19 02:20:52少女が幸せな気持ちでとろんと瞳を開くと、川端で、自分の身体は綺麗に現れ、衣服は選択されて木の枝に干されていた。 煙管石の乙女は傍らに座ってにっこりと少女の顔を眺めている。 「へ、ふぁ……めがみ、さま……♡」 煙管石の乙女は目覚めの挨拶として、十秒たっぷり舌を絡める口付けをした。
2023-01-19 02:24:20「ふぇぁぁ……♡」 「どうだった、初めての喫煙は?」 「よかったぁ……♡ ですぅ……♡」 語彙力の低下した少女を、うんうんと煙管石の乙女は満足げに見る。 「魔女様は好意には必ず対価で応える。私も、キミからの格別の好意に応えてみた訳だ……これを」
2023-01-19 02:26:10煙管石の乙女は、少女の手に石造りのパイプを握らせた。 身体の一部かのように自然に手に馴染み、身に付けていないことが不自然と思える作りであった。 装飾は簡素ながら美しく、磨き抜かれた石には顔が写る程だった。 煙管石の乙女の身体を削り出した時の破片から作った品であった。
2023-01-19 02:27:56「キミの成人祝いだ」 「……めがみさまぁ……♡♡」 「うん」 「めがみさまとけっこんしますぅ……♡」 「それは出来ないかな。私は魔女様と結婚しているから」 「えへへぇ……♡」 脳みそのとろけた少女には聞こえていないようだった。
2023-01-19 02:30:17以来、煙管石の乙女を女神であり、精霊の筆頭であるとし、魔女様をその伴侶たる、多情にして神域の才を持つ工芸の神として崇め、煙管石の乙女を第一の妻であり主とする崇拝が、一人の巫女によりもたらされた。 人として、人間を第二の夫や妻とすることは許されたが、常に煙管石の乙女が主であるとする
2023-01-19 02:32:42