- sdokudaaki
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【感想 書きました🐟】この映画での魚の研究者の描かれ方と、実際の魚の研究者との乖離なども比較対象にして話をやや脱線させながら私なりに好きに語っています。ぜひ「良い映画だった」で終わらず、現実の魚の研究者の姿にも目を向けて欲しいです。 『さかなのこ』感想⬇️ cinemandrake.com/sakananoko
2023-01-28 07:01:30魚などの水生生物の研究者と言えば、あなたなら誰の名前を挙げるでしょうか?
私ならやっぱり「レイチェル・カーソン」を挙げます。レイチェル・カーソンは1962年に「沈黙の春」を執筆し、DDTを始めとする農薬の乱用の問題を指摘し、地球規模の環境保全運動の先駆けとなる視点を大衆に与えた人物として有名です。実はレイチェル・カーソンはアメリカ水産局の水生生物学者としてキャリアをスタートさせたという経歴があります。当時、女性の同分野の研究者は非常に希少でした。
映画ファンからも好評であろう『さかなのこ』ですが、私がどうしても引っかかるのが「性別は関係ない」というこの映画の姿勢です。
もちろん言いたいことはわかります。「性別に関係なく、お魚博士になれますよ」というどの子どもの夢も肯定するポジティブなメッセージは、エンディングでもいっぱい伝わってきました。
一方でこの「性別は関係ない」という姿勢は、いわば同性愛表象に対して「普遍的な愛です」とラベルを貼るのと同様な、一種のトピックの無色化の副作用があって…。
ちょっとクィア的な風味をだそうとしている狙いは感じます。“のん”を起用しているのもそうですし、その結果で自然に映像的に醸し出されるクィア的な絵面(例えばモモコと浜辺で並んで座っていると夫婦と勘違いされるとか)も同じく。
ただ、一連のこれらの意図の計りかねる演出はいわゆるクィア・ベイティングに足を踏み入れかねない安易さもあるので、少しそこは注意しないといけないんじゃないかな、と。
また、この“さかなクン”のようなキャラクターを作って世間に売り込んでいくという方向性のジェンダー非対称な構造とかにも本作はやや無頓着です。
このキャラクターを作って世間に売り込んでいく研究者の在り方は男性に有利だと私はつくづく思うのです。男性は学術業界では研究者になることが権威性に結び付きやすく、一方でそれは男性的な威圧感を増すことになります。そこで極端なキャラを被って世間と交流する。この方法だと“男らしさ”の圧迫さを緩和できるので便利です。
対する女性が研究者をやろうとする場合、自然動物分野でも女性はやはり舐められやすく、キャラを被れば余計にバカにされるだけです。
さかなクン”がネットでも支持を得て成功できたのは“男らしさ”の緩和を上手く扱いこなしているからであり、実はすごくホモソーシャル的な生存術であり、同時に科学に対する日本のメディアの態度でもあるんですよね(“さかなクン”のインタープリターとしての功績はじゅうぶん凄いですが)。
さかなのこ』では、魚の研究者になれなかったのは「おじさん」になっていますが、現実では魚の研究者に最も道のりが遠いのは女性、とくに作中で言えばモモコやミチコのようなステレオタイプに生きざるを得ない女性たちなのです。実際、女性の動物研究者は魚分野に限らず非常に少なく、男性が業界の中枢を独占しています。大学レベルだと自然動物系の学科は女子学生の割合が多いくらいなのに、キャリアアップしているのは男性ばかり。それが何を意味しているのかは…言うまでもないでしょう。
『さかなのこ』も5歳くらいの子向けの動画ならこれでいいですが、もう少し社会を見据えた作りであってもいいのではと個人的には思いました。自己批判的な視座がもう少しあればね…。
この感想記事の冒頭で取り上げたレイチェル・カーソンは、女性差別に晒されながら保守的な学術の世界でしばらく過ごし、さらに病気と同性愛差別に耐えながら、50代で亡くなりました(The New Yorker)。「沈黙の春」などの環境問題への実績は、その死後も大企業や保守派を黒幕とするバッシングで傷つけられました。女性の“さかなのこ”の現実は厳しいです。
アセクシュアルについて
以前に、Ace/Aroを作品で描くときにどんな注意がいるだろうかという視点でまとめたので、今回は「基礎編」からさらに発展した内容で整理してみました。 ⬇️アセクシュアル(アセクシャル)やアロマンティックを作品で描くときの注意点とは?【もっと考えてみる編】 cinemandrake.com/asexual-aroman…
2023-01-30 07:01:00日本でも宗教右派や保守層の人たちはLGBTQに否定的な態度をとっています。最近も自民党の「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合でセクシュアル・マイノリティに対して差別的な言論が出回っていることが問題視されました。差別的な発言をする政治家も各地で後を絶ちません
日本国内においても政治が図書館に直接的もしくは間接的に介入しようとする動きもゼロではなく、LGBTQの本をターゲットにすることもいつ起きてもおかしくありません
しかし、今後、日本でもLGBTQ関連の書籍が充実してくれば状況は悪化することもあり得ます。
アセクシュアルやアロマンティックを含めたLGBTQ関連の本がよりたくさんの子どもたちに読まれ、悩みや不安を解消する一助となるように、本を読む自由を守っていける未来を創ることが望まれています。
ロボットでもスポンジでもないよ
当事者コミュニティの間でよくネタにされるのは、Aスペクトラムのキャラクターがロボットみたいに描かれるということ。無感情キャラの定番です。また、『スポンジ・ボブ』というアメリカのカートゥーンアニメのキャラがアセクシュアルであると製作者が言及した際も「え、私たちはスポンジなの…」と当事者界隈はやや微妙な反応になりました(「スポンジ・ボブ」自体は面白いのですけどね)。日本だったらオタク文化によくありがちなクール系キャラにAスペクトラムを当てはめがちになるかもしれないですね。
ロボットでもスポンジでもないよ
当事者コミュニティの間でよくネタにされるのは、Aスペクトラムのキャラクターがロボットみたいに描かれるということ。無感情キャラの定番です。また、『スポンジ・ボブ』というアメリカのカートゥーンアニメのキャラがアセクシュアルであると製作者が言及した際も「え、私たちはスポンジなの…」と当事者界隈はやや微妙な反応になりました(「スポンジ・ボブ」自体は面白いのですけどね)。日本だったらオタク文化によくありがちなクール系キャラにAスペクトラムを当てはめがちになるかもしれないですね。