主力小銃としての自動小銃と軽機関銃

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漢陽造 @Gew88suko

【"主力小銃としての自動小銃"と"軽機関銃"】 自動火器の黎明期である1880〜90年代、各国で多くの技師により…フランスなどでは組織的に自動小銃の開発が行われた。オーストリアのマンリッヒャー、フランスのムニエなどが有名だろう。 これらは既存の小銃を代替するものとして考えられていた 【続く】 pic.twitter.com/yOb7nN92xi

2023-01-25 12:00:14
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漢陽造 @Gew88suko

要は小銃の火力を向上させることで部隊全体の火力の向上を図る、というとてもシンプルな発想である。小銃の連発化やストレートプルボルトアクションの発明といった流れからすると、これはごく自然なものであった。 そこに変化を与えたのがマドセンだった。 pic.twitter.com/XX7GWs6cov

2023-01-25 12:00:16
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「軽機関銃」…「自動小銃」よりも能力の高い自動火器を分隊に配備し、他の兵士はその補助に回ることで分隊火力の向上が実現できるという発想である。既存の小銃を全て自動小銃に代替するよりは遥かに低予算で実現可能で、なおかつその有効性においても上回ると考えられた。 pic.twitter.com/U0ZN8fCvLW

2023-01-25 12:00:18
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マドセンはデンマーク本国ではRekylgevær(反動利用小銃)に分類されており自動小銃が軽機関銃へと変化していった経緯を反映している。 フランスもショーシャ氏の活躍もあってこちらの方針に転換しWW1ではMle 1915が活躍することになった… (ごく短期間で開発・生産・配備を行ったため問題も多かったが) pic.twitter.com/9ezZqLq0jv

2023-01-25 12:00:21
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一方、オーストリアのマンリッヒャー氏は軽機関銃の有効性に気付く前に亡くなってしまった… 結局オーストリア=ハンガリー帝国は軽機関銃を装備しないままWW1を迎えている。 また、イギリス軍が配備したルイス軽機関銃のように「機関銃の軽量化」の路線で産まれた軽機関銃も存在するため要注意である。 pic.twitter.com/knM4Q8qw1G

2023-01-25 12:00:23
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軽機関銃はWW1によりその有効性が広く認められ、戦間期(1920年代末〜1930年代)にはほぼ全ての軍隊がこれを満足に配備するようになった。そこで再び「主力小銃としての自動小銃」が注目されたのである。 その代表例がアメリカのM1ガーランドであり、他にもソ連のAVS/SVTやスウェーデンのm/42、 pic.twitter.com/3dRMKwZxrW

2023-01-25 12:00:24
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試作や比較的少数の生産で断念したものも含めればドイツ・イタリア・日本・チェコなど… かなり多くの国が自動小銃に再注目したのだ。 そのうちWW2の影響により実現できなかった国を含め、1940〜1950年代にはこの戦間期的…ひいては黎明期の自動小銃的な発想に基づく自動小銃達が主力小銃となった。 pic.twitter.com/wUMvyNmx6T

2023-01-25 12:00:26
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つまり、全自動射撃前提ではなくあくまで半自動射撃を主眼とした、手動連発小銃の延長にある自動小銃達である。 西側においては米国が7.62×51mmを標準弾薬にしてしまったからという事情もあるが、中間弾薬を用いる東側の自動小銃(SKS、Vz.52)にも全自動射撃機能はなく、それだけではないことが分かる… pic.twitter.com/8hLCjPmLxV

2023-01-25 12:08:26
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連発化に加え、小銃の高火力化を進めた要素としてもう一つ大きかったのがマンリッヒャーによるクリップ(チャージャー)給弾の発明である。 ボルトアクション連発銃の迅速な再装填に向けた最初期の試みとしてはジェームス・パリス・リーの箱型脱着弾倉であろうが、 【続く】 twitter.com/Gew88suko/stat… pic.twitter.com/mnX2dY6dD1

2023-01-30 00:35:38
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これを採用したイギリス軍の個人装備には予備弾倉がなく、平時は従来の単発銃の様に使用しつつ指揮官の号令によりマガジンカットオフを解除して連射を行う、という運用がされていた。 この様な運用はイギリスに限らず、フランス・ドイツ・アメリカなど…黎明期の連発銃において広く見られるものである pic.twitter.com/ZhHZuThQey

2023-01-30 00:35:40
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フランスのルベルM1886、日本の二十二年式連発銃、ドイツの Gew71/84など黎明期のボルトアクション連発銃で多く採用されたクロパチェック式はリフターと呼ばれる構造により銃身下部に弾倉を配置したことで当時としてはかなり多い装弾数を確保した。 しかしこの設計では迅速な再装填が不可能だった… pic.twitter.com/SsOQW3oPp8

2023-01-30 00:35:42
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結局クロパチェック式はどうやっても1発づつ弾薬盒から取り出して手動で込める必要があった。 同じ「クリップ以前」の連発銃設計でもアメリカが採用していたクラッグ・ヨルゲンセンではのちの1898年にはクリップに対応させる為の追加ユニットが開発されていたが、結局その採用は見送られている… pic.twitter.com/fFiIk5JxfJ

2023-01-30 00:35:45
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さて、最初に世に出たクリップ給弾小銃はフェルディナンド・マンリッヒャーが設計しオーストリア=ハンガリー帝国に採用されたM1885である。 特にエンブロッククリップと呼ばれる彼の特許は後に登場するべテリのチャージャーやマウザーのクリップなどと比較してもより素早い装填が可能であった。 pic.twitter.com/Qw6y8E4rx7

2023-01-30 00:35:47
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しかし、エンブロッククリップには欠点もある。 特に大きいのが「マガジンカットオフ」が構造上取り付け不可能である点だ。単発銃から連発銃への過渡期であった1880年代の小銃としては珍しく「単発銃」として使うことはできず「連発銃」として扱うしかない、特異な銃となっている。 pic.twitter.com/5aIy31ZnUG

2023-01-30 00:35:50
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WW1以降浮上した問題として小銃擲弾の運用上の不都合も存在する。 小銃擲弾は多くの場合空砲を利用して発射されるが、エンブロッククリップ給弾では空砲を上から1発づつ込めるのは困難だった。 pic.twitter.com/NAE0Fx5EGb

2023-01-30 00:35:52
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弾倉が空であれば薬室に直接込めることもできなくはないはずだが、間違いなく故障の原因になるため基本的にクリップごと再装填する必要がある。 実包を用いる設計にしたり、日本の擲弾筒のように超軽量な迫撃砲に代えるという解決策もあったが… pic.twitter.com/nZRxzI3Jkp

2023-01-30 00:35:54
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ほかにも現代のマニア間では大量生産されるエンブロッククリップの工作精度とそれに起因する給弾不良を危惧する声もある。 これについては箱型脱着弾倉にも言えるもので、杞憂というか言いがかりのような気もするが… pic.twitter.com/wgZSqD6Kzu

2023-01-30 00:35:56
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漢陽造 @Gew88suko

こうした欠点からエンブロッククリップはマンリッヒャー/Gew88系の一部やM1ガーランド程度にしか採用されず、 20世紀前半においてはマウザー系で用いられたようなストリッパークリップが、20世紀後半以降は箱型脱着弾倉が主流となり現在に至っている状況である。

2023-01-30 00:35:57
漢陽造 @Gew88suko

しかし連発銃の迅速な再装填のアイデア自体は相当に先進的なものであり、小銃という兵器の扱いを変えたと言っても過言ではない功績ではあるのだ。 もう少し評価されても良い人物であると思う… pic.twitter.com/sc43YpPMVf

2023-01-30 00:35:59
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ちなみにボルトアクションに限らない話で言えばスペンサー銃の管型脱着弾倉が小銃の再装填の迅速化に対する試みとして成功を収めた初の例であろう。 このようなカバンに入れて予備弾倉を携行した…ただし、レバーアクションの為扱う弾薬の威力が比較的低く、 pic.twitter.com/r9xp8ztOCP

2023-01-30 00:36:01
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漢陽造 @Gew88suko

ストック内に格納する方式のため装弾数にも限りがあった。 黎明期の連発銃ではコレをなんとかしようと試行錯誤した例がある。 マンリッヒャー氏が1880年、彼のキャリアの中で最初に書き上げた設計もそうした内の一つだ。 弾倉をリボルバーのように回転させるという発想で、ドイツ軍の試験も受けたそう pic.twitter.com/IUeLUaUOpS

2023-01-30 00:36:03
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