【#どうする家康】第5回「瀬名奪還作戦」時代考証担当・平山優氏の解説ツイート

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K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

忍びは、飢饉や戦乱により自分の故郷を捨て、流民となったあぶれ者たちや、不良たちが、生きるために盗み、強盗などに手を染め、集団化したり、少人数で活動したりしたアウトローたちがその供給源です。当然、彼らはその過程で命を落としていく者たちが続出したと思われますが、そこを生き延びた者たち

2023-02-11 14:14:51
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

は、昼夜を問わず、とりわけ夜に命がけの活動をこなす技量を身につけているのです。戦国大名たちは、彼らの技量について「武士が真似しようとしてもできるものではない、下手をすると命を落とすから絶対に真似をするな」(結城政勝)、「夜技鍛錬の者たち」(上杉謙信)などと驚嘆しています。詳しくは

2023-02-11 14:15:02
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

拙著を御覧下さい。また、忍者考証をお願いしています山田雄司氏の『忍者の歴史』角川選書、山田雄司・三重大学国際忍者研究センター編『忍者学大全』東大出版会(近刊)は、必読の研究書です。これらにより、戦国の忍びについての研究は、一挙に進むことになり、いろいろなことがわかってきたのです。

2023-02-11 14:15:13
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

忍びの衣装については、かつての忍者物のような真っ黒な装束はできるだけ避け、暗い衣装ながら、通常の村人ら市井の人々と変わらぬものにしてあるのは、その成果を取り入れたものです。#どうする家康 #時代考証の呟き

2023-02-11 14:15:33
忍者学大全

山田 雄司,三重大学国際忍者研究センター

(4')伊賀者の活躍

K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

(4)伊賀者の活躍 三河に伊賀者がたくさんいたなんで信じられない、といったご意見を頂戴しています。でも、上記の研究で、伊賀者、甲賀者を始め、忍びたちが各地の戦国大名や国衆に銭で雇われていることはもはや疑いようがありません。なかでも、三河は伊賀者を始めとする忍びたちに関する記録が

2023-02-11 14:16:48
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

けっこう多いのです。ここでも、『三河物語』を事例に紹介しておきましょう。まず、刈谷城水野藤九郎信近を伊賀衆が暗殺したというお話し。同書によると、今川方が伊賀衆を呼び寄せ、水野領にやすやすと潜入し、何カ所にも渡って待ち伏せの忍びを伏せておき、遂に水野信近を討ったとあります。水野信近

2023-02-11 14:16:59
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

は、永禄3年桶狭間合戦直後、岡部元信によって討ち取られており、この逸話はこの時のものと考えられます。また、来週放送予定の、三河上之郷城攻めに際して、家康は「西之郡之城(上之郷城)ヲ忍取に取せ給ひて、鵜殿長勿ヲ打取、両人之子供ヲ生取給ふ」(上之郷城を忍びたちに攻め取らせ、鵜殿長照を

2023-02-11 14:17:09
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

討ち取り、彼の二人の子供を生け捕りにした)とあるのです。かなり伊賀衆が三河で活動していることがはっきりとわかりますね。ただ拙著『戦国の忍び』では、この事例を入れ忘れてしまいました。残念です。#どうする家康 #時代考証の呟き

2023-02-11 14:17:27

(5)大鼠の最期の言葉に込められた史実

K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

(5)「半蔵様が死んだら、俺たちの妻や子に誰が銭を渡してくれるのか」という大鼠の最期の言葉に込められた史実 私は、この台詞を拝見して驚嘆しました。よくぞ、書き込んでくれましたと私が舌を巻いたのには理由があります。この台詞には、戦国大名に雇用される忍びたちの実態が端的に表現されてい

2023-02-11 14:18:22
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

るからです。皆さんは、銭で雇われた忍びたちが、銭を持ち逃げしたり、逃亡したりしないのか、信用できるのか、と疑問に思われると思います。それを防止するために、忍びたちの組織はい防止策を講じていました。まずは、忍びの主要メンバーを各グループに配置して、勤務評価や監視を行わせています。

2023-02-11 14:18:33
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

裏切りや逃亡は、追っ手がかけられ、殺害されます。これは武家も同様ですよね。そして、重要なのが、大名は忍びの妻子を人質として確保しているということです。これは武田信玄が、忍びたちの妻子を甲府に確保しておき、裏切りや逃亡を防いだと『甲陽軍鑑』に記されていることからも窺えます。ですがこ

2023-02-11 14:18:46
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

れは同時に、大名側は忍びたちの妻子を保護し、安全を保障してもいるのです。そして忍びは任務を全うすれば、足軽大将(忍びの統率者)を通じて、褒賞が支給されるのです。このことを、わずかな台詞で表現した古沢さんの力量と、そして大鼠、服部半蔵の演技に、私は画面前でただただ脱帽していました。

2023-02-11 14:19:00
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

ビールグラスを持ったまま、思わず立ち上がってしまったほどです。恐れ入りました! #どうする家康 #時代考証の呟き

2023-02-11 14:19:25

(6)本多正信の台詞に登場する「師崎」について

K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

(6)本多正信の台詞に登場する「師崎」について 本多正信が、服部半蔵に瀬名母子らの奪還を依頼した台詞で「夜陰に紛れて駿河の浜から船にお乗せしてしまえばこちらのもの。水野殿に師崎(もろざき)あたりの港をお借りし、お迎えすればよろしいかと。半蔵殿、任せたぞ!」とありました。お気づきに

2023-02-11 14:20:34
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

なられましたか?実は、第一稿では、「水野殿に××あたりの港をお借りし」とあって、地名が決められておりませんでした。私は第一稿を拝読したときに、駿河から元康の配下が瀬名たちを奪還したら、すぐにそのまま三河の港に入ればいいのに、なぜあえて水野信元を頼ろうというのか、と考え込みました。

2023-02-11 14:20:46
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

ですが、古沢さんは瀬名らが奪還したのが、元康の願いを受けた織田信長との共同作戦、というご自身の設定が込めているのではないかと感じました。元康自らが命じつつも、彼の願いを聞いて、同盟国織田信長が人質奪回を差配し、尾張の水野信元に協力させたと氏真に印象づけることで、織田・徳川同盟対

2023-02-11 14:20:57
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

今川氏真という対立の構図を、いっそう引き立たせる効果を狙っているのだろうと、私は解釈しました。そこで、どの港がいいか、考えました。そして、中世の太平洋水運および三河湾水運の担い手の一つであった知多半島の南端師崎に白羽の矢を立て、制作陣に提案したところ、採用されたものです。

2023-02-11 14:21:09
K・HIRAYAMA @HIRAYAMAYUUKAIN

師崎には、千賀氏という海の武家がおり、後に徳川氏に仕え、水軍の一翼を担っています。師崎の皆さん、楽しんで頂けましたか? #どうする家康 #時代考証の呟き

2023-02-11 14:21:31