ビースト・オブ・マッポーカリプス 前編 #6
ナムアミダブツ。何たる狡猾なエネアドの情報戦略であろうか。黄金立方体出現に伴う磁気嵐を利用し、暗黒メガコーポ各社の通信網を更に錯乱、分断しているのは、紛れもなくエネアド自身である。アヴァリスの覚醒という情報を持つセトは、当然ながら最速で事態に対応。そこに己の思惑を万全に重ねた。67
2023-02-18 17:51:03儀式の進行がオヒガンのエテルの流れに方向性を与えている。読者の貴方が極限のハッカーであれば、IRCコトダマ空間に築かれたエネアド社の暗黒IRCピラミッド要塞に注ぐ、激しいエテルの流れを見るだろう。セトの神話的技術が確立させたシステムにより、エネアドの論理タイプ速度は、もはや企業最速!68
2023-02-18 17:56:24ハッキングとは即ちハッカーのタイプ速度の総和によって決まることは周知の通りである!遅かれ早かれ、エネアド社は閉鎖空間で飼いならした支社を各社のバックドアとして活用、世界を支配する。全IRCネットワークを掌握、磁気嵐すらも意のままに、暗黒メガコーポ連合の頂点に君臨するのだ! 69
2023-02-18 18:00:00見よ!NSTV等の中堅メガコーポに至っては、これ幸いと莫大な利権に涎を垂らす!仮にこの真実を得たハッカーがいたとて、それを全世界に向けて暴露する方法はない。エネアド社の圧倒的論理タイプ速度が彼らを瞬殺するであろう!最早、ネオサイタマのジャーナリズムは死に絶えたのであろうか!? 70
2023-02-18 18:04:33……「否!」トイレの個室ドアが開き、ハンチング帽とトレンチコート姿のフジキド・ケンジが進み出た。隣の個室のドアが開き、ベレー帽とレザーブルゾン姿のドラゴン・ユカノが進み出た。鏡の前で、ブレザー姿のナンシー・リンが洗面所に腰掛け、二人が着替えるのを待っていた。「そう、否よ」 71
2023-02-18 18:08:58ナンシー・リンは懐から偽造IDを取り出し、フジキドとユカノに渡した。タキ達のハッキングによって取得したばかりの偽造IDだ。ユカノは嬉しそうにそれを首からかけ、ティアドロップのサングラスをかけた。ナンシーが口笛を吹いた。「キマってるわね」「こうしたアタックには説得力が必要ですから」 72
2023-02-18 18:12:24「ゆくぞ。今はまだ、カラテはならぬ」フジキドはユカノに念を押した。ユカノは頷いた。三人はトイレから廊下に出、一階ホールに戻った。彼らは堂々とエントランスの受付係のもとへ進み、オジギして、デジタル・データを焼き付けた偽造IDを提示した。「ドーモ。我々はNSTVから派遣されました」 73
2023-02-18 18:14:56凄まじく張り詰めたアトモスフィアが流れた。やがて見目麗しい受付係の男は無言でオジギを返し、ゲートを動かした。三人の報道特派員は、今こそ、獅子身中に入り込んだのである。 74
2023-02-18 18:17:03