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◆宝条の初登場 [1-1]で書いたように、主要な人物は#1 でほぼ姿を見せていますが、宝条だけは#5 で初めて登場します。その場面、氷柱が桂の玄関口で桂木と少しだけ会話をしたとき、店内には宝条が座っていました。さりげなく異形のものがそこにいたことになります。
2023-03-06 12:10:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
◆桃山の訪問 #6 では桃山が黒崎の部屋を訪問して、神志名のことを聞いたり伝えたりしますが、そこから急に黒崎への謝罪も行われます。同じ場所で、神志名が抱えているもの、桃山が抱えてきたものが相次いで明らかになる好い展開だと思いました。
2023-03-06 12:11:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
◆白石の過去、神志名の過去 2006年版のドラマ『クロサギ』では、白石や神志名の過去にかかわるエピソードが一定量盛り込まれていましたが、2022年版の『クロサギ』では、おそらく容量の関係もあって、それらが詳しく描かれることはありませんでした。
2023-03-06 12:12:04![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
それらは早瀬の言葉で短く説明されているだけですが(#3 で白石の過去、#6 で神志名の過去)、それはそれで整った形(《異時同形》)になっています。神志名については、#1 以来見てきた彼の行動の遠因がここでわかったのが印象的でした。
2023-03-06 12:12:45![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
また、黒崎と同様、彼らも「詐欺師に人生を狂わされた」点で《異所同形》の例と見ることができます。《異所同形》の例は本来[5]で挙げるべきでしたが、[5]の記述が長くなりすぎたので、ここで書いておきます。
2023-03-06 12:13:12![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
◆#1、#3、#4、#8 #1、#3、#4、#8 では、各回の終わり際に氷柱と黒崎の会話があります。どれも氷柱の呼びかけを黒崎が受け止める形ですが、以下に示すようなパターンの組み合わせで多様な形ができています。
2023-03-07 12:14:47![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
氷柱の論理 #1:思いは同じだがやり方が許せない(やり方にフォーカス) #3:やり方は違うが思いは同じ(思いにフォーカス) #4:どんな状況になっても私はあなたを気にかける(個人にフォーカス) #8:あなたを違う世界に連れてったのはこの世界(世界にフォーカス)
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◆#6 #6 は、原作(『クロサギ』201-207話)にかなり忠実な構成だと思いますが、黒崎が手に血の幻影を見る場面は、原作の別の回(『新クロサギ』91話)からの転用と思われます。
2023-03-07 12:18:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
それがここに転用された理由は、一つには、#6 が、御木本との決着がついた#5の直後に配置されていることと関係ありそうです。もう一つには、氷柱の言葉が楽観的すぎることを、黒崎の反応によって明示するためとも思えます。
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原作では、氷柱の言葉に対する黒崎の否定的な反応はモノローグで示されていますが、ドラマでは、言葉ではなく幻視によって端的に示されているといえます。
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一方、氷柱の言葉は楽観的すぎるとしても、氷柱にとって黒崎と出かけることはそれほど嬉しくて、その気持ちが出てしまったものと思われます。氷柱の気持ちも、原作では氷柱のモノローグで示されていますが、ドラマでは氷柱の仕草や表情で端的に示されているといえます。
2023-03-07 12:20:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
とくに、事前に黒崎から食事に誘われたとき、氷柱が思わずにやけてしまうところとか、鏡で服装を確認してるようすとか、とても可愛くて好いシーンだと思いました。
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◆モノローグ このドラマでは、モノローグはそんなに多くないと思いますが、#1 での黒崎、#3 での黒崎、#9 での氷柱、#10 での黒崎などの例があります。
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#1 の黒崎のモノローグは、自室で黒崎が亡父に語りかける形をとっており、亡父との対話ともいえるものです。#3 の黒崎のモノローグは、前述の氷柱の言葉と涙に対する応答であり、氷柱には言ってないけど、心は動いたことを示しています。
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#10 では、まず前半の氷柱との会話の中に、モノローグではないけれど、半ばモノローグのような発言があります。それは黒崎がこれまで一人で持ち続けてきた家族への思いを、初めて他人に明かしたような内密性が感じられます。
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#10 の後半には、手紙の形をとった黒崎のモノローグがあります。これは#6 や#7 の氷柱の言葉への応答であり、#8 で中断していた黒崎の言葉の続きでもあるといえます。
2023-03-07 12:24:37![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
つまり、#6 で氷柱が語った黒崎の未来への希望とか #7 で氷柱が語った法律の力への願望とか、これらはその時点では黒崎の心に届かなかったように見えましたが、それなりに届いていたことが、この手紙から窺えます。こういった手紙は、独白でもあり、時間差をもって行われる対話ともいえます。
2023-03-07 12:25:15