笠井潔 講演会 「3.11とセカイ系」 まとめ

ceno_sougouさんによるまとめ 2011.11.5. 中央大学文学会主催 笠井潔 講演会 「3.11とセカイ系」
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藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

新聞やテレビは真実を伝えてない! 僕等を騙している! ってのは、一面で真実だと思うんだけれど、ネットや対面で会っている人たちに騙されることだって多いのだろうに。直接会って話している相手一人が「騙している」のか「真実を言っている」のかすら分かりやしないのに。

2011-11-12 06:03:07
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

ということを今考えていたんだけれど、ちょうど読み終わった笠井潔さんの『吸血鬼と精神分析』(というか矢吹駆シリーズ)の「本質直観」ってよくできていると思った。かなり錯綜する情報と真偽不明な発言の中から、多様な解釈の存在を認めた上で「真相」を見抜くってのは。

2011-11-12 06:05:00
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

「操り」というテーマもミステリでは重要だと思うんだけど、「メディアに操られている」は、「党に操られている」「国家に操られている」などと変奏が可能な問題系な気がする。真偽が不明で、恐怖や不安と疑心暗鬼の状態の「組織」の中でどう考えるべきかのモデルという側面があるなぁ、と感じた。

2011-11-12 06:07:36
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

自分や周囲の身の安全や今後の生活に具体的に関わる場面で、否応なく情報収集と真偽の確定を迫られるような本気で切迫した状況を体験したことがないのだけれど、本格ミステリの真相はちゃんと見破るぐらいの能力をつけないと、そういうときにおっかない気がしないでもない。

2011-11-12 06:23:01
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

しかしねー、現実に僕は「本質直観」を多分、使えない。あらゆるトピックがこの世にはあり、情報も錯綜し、真偽も、善悪も、安全か危険かも分からない状態では、脳が計算上は無限に近い分岐を考えなくてはいけない羽目になるはずで、この計算上の無限の負荷から信仰への経路がある気がしないでもない

2011-11-12 06:25:14
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

そういえば、「311とセカイ系」の中で、ゼロ年代から現代に至るサブカルチャーを簡単にまとめたんだけれども、「セカイ系=社会がない」作品から、徐々に、大文字の「社会」はないけれども、「組織」が前面化した作品が増えたとして、『コードギアス』『けいおん』『ハルヒ』『まどマギ』をまとめた

2011-11-12 19:48:54
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

「日常系」も「組織論」作品の一派生系だと考えた方がいい。『コードギアス』のように闘争の中での管理職の苦悩を描くか、『東のエデン』のようにネットを通じた新しい組織のあり方を模索するか、『まどマギ』のように内ゲバしながら成長を目指すか、敵も成長も断念し日常をまったり楽しむ「日常系」か

2011-11-12 19:50:41
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

で、三池崇史の『十三人の刺客』の話をして、「太平の世の中で、悪い為政者が出そうなので殺そうとする」テロリスト組織の話をしたのだけれど、為政者も「テロ」を楽しみにしていて、敵も味方も「死」と「戦」に生の価値を見い出すしかない状態になっている暗澹とした世界観も2010年にはあった

2011-11-12 19:53:34
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

『十三人の刺客』のいいところは、他人を操って、他人の死や戦いや苦しみを「楽しみ」として消費しているお殿様が、最後刺されて、痛みの中で泣き叫んで泥まみれになって、「身体性」を回復するという話かと思いきや、その痛みも含めて「楽しかった」と言って礼を言って死ぬところなんだよねぇ

2011-11-12 19:55:28
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

で、こういう「死や戦争」から「生の意味」を手に入れるような『死の哲学』的なものは、311を経てどうなったのか? 被災地へのボランティアの高揚感や、テレビを見て高揚感を感じた人は「生の意味」を獲得したのか。あるいは、生々しい「死」や「災害」は、そんな夢想をキャンセルしたのか? と。

2011-11-12 19:59:08
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

311と「死の哲学」の問題はまたちょっと別の問題だけれど、311以後、国家が問題となったり、社会運動が活発化してきているけど、その中で体験される「組織」の問題、「組織論」的リアリティはこれからも反映/構築され続けていくんだと思う。

2011-11-12 20:04:50
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

このような組織の問題、自分が巻き込まれている状況を理解する状況を理解するツールとして、プロレタリア文学、第二次大戦下の文学、それから全共闘の影響のある作品群が参照ポイントとしてあると思うんだけど、もう一つ、ドラッカーの『マネジメント』的なものもまた参照項にされているのが現状か

2011-11-12 20:09:00
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

「組織と個人」というテーマが日本文学の中で明確に現れたのは、昭和初年のプロレタリア文学運動で、そこでは「政治的価値」と「文学的価値」についての論争が起こっていたとか。文学を目的のための手段にする政治と、自由であるはずの文学の相克が。(井口時男氏に拠る)

2011-11-12 20:12:44
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

それで、ふと気になって講談社文芸文庫の『戦後短編小説再発見』の「組織と個人」の巻を読み始めたのだけれど、これが面白い面白い…… 久々に、文学に、不意打ちで直撃を食らったような衝撃を味わっている。(前のポストは井口時男氏の解説から)

2011-11-12 20:15:26
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

「セカイ系」から「世界内戦」へ、というキャッチコピーを『サブカルチャー戦争』では打ち出したけど、個人的には「セカイ系」から「組織論」へ、だと思っている。警察小説ブームも、組織に巻き込まれた個人の物語として、感情移入しやすいからじゃないだろうか。

2011-11-12 20:21:54
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

ここでその組織の中身が実際にどうしようもなければ、68年的なものから距離を置く村上春樹のデタッチメントに共感する層は実際に増えるだろう、と思う。良い組織を作れるかどうかで、これからの創作はちょっと変わるかも。同時に、サブカルチャー側も、積極的に組織論モデルを提示していて面白い。

2011-11-12 20:27:51
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

「新しい組織論」みたいなものをきちんと提示できるか否かが、結構色々なものを変えるような気がしている。『東のエデン』は内容的に失敗していると思うけど、その試みは実に素晴らしかったと思う。

2011-11-12 20:30:57
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

あと、「社会」が「ソーシャル」になったという問題も踏まえて、それでも可能な「社会運動」って何かな、みたいな話が、「3.11とセカイ系」で話したことの問題意識にありました。「死の哲学」の問題は、サブカルチャーに表れている宗教性の問題というテーマで引き続き思考したいところです。

2011-11-12 20:41:19
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

宗教と政治も、おそらく切り離して思考するべきものではない、と思う。長崎浩さんの『共同体の救済と病理』も、笠井潔さんの『吸血鬼と精神分析』も、神山睦美さんの新刊『大審問官の政治学』も、組織と社会と宗教の問題が焦点化されていて、実際に運動を経験された方々の言葉の重みがある

2011-11-12 20:45:09
藤田直哉@『ゲームが教える世界の論点』『新海誠論』 @naoya_fujita

「3.11とセカイ系」で話したことと、話せなかった部分の補足、終わり。

2011-11-12 20:46:21
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