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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
@NJSLYR
ほんの僅かな時間のうちに、ネオサイタマのビル群を覆っていた緑の衣は、茶色く乾いた、残骸じみた蔦の群れへと変わり果てていた。繁茂した時以上の速度で、正体不明の奇怪な植物は死に絶え、その生命を引きずり戻されていった……マルノウチの巨塔に。 35
2023-05-12 21:36:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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スゴイタカイビルを覆う植物は健在。全域から剥ぎ取った緑の力を集めて密度を増し、より強靭に、うねり、群れ、結び合い、エメツじみた黒色に変じて、高く高く、成層圏を指して伸び続ける。この瞬間、衛星写真からネオサイタマを見た者は、地表にハッポースリケンじみた模様を見ただろう。 36
2023-05-12 21:43:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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空には黄金立方体が自転する。その実在性は極めて強固になりつつあり、割れた月より余程近くに感じられた。廃東京タワーの頂上に佇むシナリイは扇子を口元に当て、星空めいた黒い瞳を物憂げに細めた。「カリュドーンの力を糧に、キンカク・テンプルはいずれ現世に質量を結ぶ。セトの目論見が成るか」37
2023-05-12 21:51:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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運命は既にシナリイの手を離れた。もはや彼の干渉出来ぬ場所へ、カリュドーンの獣……ニンジャスレイヤーは行ってしまった。だが、授けたセプク・オブ・ハラキリを彼が用いる猶予はいまだ残されている。否、むしろキンカクの具現化が進む程、好機は近づく。「事をなせ。ニンジャスレイヤー＝サン」 38
2023-05-12 21:57:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「イヤーッ！」「イヤーッ！」そして今、リズミカルに響き渡るセイケン・ツキの叫びは徐々に統制を乱しつつあった。同期を外れた、いわば、意志の叫びが入り混じるようになった。セイケン・ツキを打ち破ったニンジャソウル憑依者たちが、カラテを込めて跳躍する、命の叫びだった。 39
2023-05-12 22:01:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「なんだい。アタシ達だけじゃなさそうだ」ひび割れた道路を唸り走るノブザメ・バイクに騎乗したレッドハッグは興味深げに呟いた。並走する反重力バイクのレイテツはこめかみに手を当て、UNIX装甲のニンジャソウル感知機能を働かせた。「……我々と同じ方角に向かうニンジャ達というわけか」 40
2023-05-12 22:07:51
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「あっちはどうなってンだろうね」レッドハッグは進行方向の黒い柱を見た。二人は断裂した道路を事もなくバイクで跳躍し、対岸へ着地し、走り続ける。「噂は幾つか拾っている。エネアド社が実効支配しているという話の確度が高い」「エネアド社？まあいいさ」レッドハッグは言った。「行きゃわかる」41
2023-05-12 22:13:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「隊長！」「隊長ッ！」KATANA治安部隊の者たちが合流してきた。レイテツは頷いた。何をすべきか。そこに何があるのか。今はわからずとも、何かが彼らを駆り立てている。その答えはマルノウチにあるのだ。そしてレッドハッグは道路沿いのビル屋上を飛び渡る影に目を留めた。 42
2023-05-12 22:21:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「イヤーッ！」凛とした強い叫びを伴い、何人かの仲間を伴って飛ぶ影。オールドカブキチョに獄麗あり。獄麗にネザークイーンあり。既にネオサイタマ市民ではないレッドハッグはそれを知らぬが、秀でた体躯としなやかな身体づかいを、彼女は強い印象と共に記憶していた。「へえ。まるで10年前だ」 43
2023-05-12 22:25:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「前方に緑。そして複数のエメツ反転炉反応」レイテツが警告した。「マルノウチだ。そして実際、ID群はエネアド社の企業軍。噂通りだったか」「隊長。エネアドに接触しますか」隊員のニンジャ、バゼラードがレイテツに並んだ。レイテツは頷いた。「企業協定に基づく事情聴取を行い、情報を得る」 44
2023-05-12 22:31:48
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「そう友好的に行くかね！」レッドハッグは薄笑いを浮かべた。「アタシのニンジャ第六感は言ってるよ。あんな場所を敢えて囲んでる奴らだ。まともじゃないよ。木っ端のマッポ紛いどもを相手に、そんな連中がどんな話をしてくれるッてンだい」「KATANAをナメるな。企業協定は神聖だ」「だといいね！」45
2023-05-12 22:35:59
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ゴウ！彼らは風の中へ、黒々と輝く緑の中へ突入した。塀めいた木々の連なりを貫き抜けると、黒い草原が彼らを出迎えた。遮蔽物が急に開けたのだ。反射的に、彼らはドリフト停止した。幾つもの多脚戦車、野営テント、監視塔ユニット。エネアド企業軍が、天に向かって伸びる黒い柱の前に陣取っていた。46
2023-05-12 22:40:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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レッドハッグはサーチライトや警告の類いを予期した。だが、あって然るべき企業群としての対応は無かった。……なにか、奇妙だ。レッドハッグはレイテツ達を振り向こうとした……その時だ！「「「イヤーッ！」」」黒い草原を金色の波が走ったかと思うと、陣営内から黄金に燃える影が次々跳躍した！ 47
2023-05-12 22:45:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「な……！」レッドハッグの鍛え上げられた戦士としての筋肉が、思考より先に反応した。彼女は黒いカタナを閃かせ、影たちが投じてきたものを切り払った。黄金のスリケンの群れを！「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」跳躍した黄金の影達は重力よりも遅く落ちながらスリケンを投げてくる！ 48
2023-05-12 22:48:10
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「グワーッ！」「グワーッ！」投じられた数百の黄金のスリケンが流星めいて降り注ぎ、KATANA部隊が被弾した。「イヤーッ！」レイテツは氷の壁を生み出し、盾としたが、氷はすぐさま亀裂にまみれて白化し、砕け散った。「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」防ぎきれぬ……「イヤーッ！」 49
2023-05-12 22:50:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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ソーマト・リコール現象に入りかけた隊員達は、突然、彼らの只中に後ろから走り込んできた者の大きな背中に目を見張った。その者が両手を翳すと、半球状のエネルギー・ドームが拡大し、黄金のスリケンの群れを押し戻し、弾き返したのである。「獄麗……ネザークイーン＝サンか」レイテツは呻いた。 50
2023-05-12 22:53:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「そういうアータはKATANAの氷鬼、レイテツ＝サン」半球状のムテキ・バリアを拡大維持しながら、ネザークイーンは振り返って微笑んだ。「何が何だかわからないまま来たけど、アタリのようね！どういうコトよ？あら、そっちはレッドハッグ＝サン、アタシを覚え……」「イヤーッ！」黄金の影達が着地！51
2023-05-12 22:57:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」影達は着地即前転して立ち上がり、勢いのまま殺到してきた。黄金の輝きは、彼らの不定形の眩い炎じみた装束ゆえだった。彼らはネオサイタマに跋扈したフェイスレスにも似た特徴を有しながら、より禍々しく冒涜的であった。中身はエネアドの兵士達だ！ 52
2023-05-12 23:04:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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一体彼らが何者なのか判断する猶予もないまま、KATANA隊員とレッドハッグは得物を構え、ネザークイーンのバリア内へ貫通してくる黄金の影達と切り結んだ。「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」そこへ……「イヤーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「アバーッ！」突入加勢した者達！獄麗！ 53
2023-05-12 23:09:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「ハハァ、やっぱりマトモじゃない！直感てェのは当たるもの！コイツらだ！」ブライカンは細めた目を光らせた。「アタシにあられもないセイケン・ツキをさせてくれた礼をしなくちゃねェ。濡れちまったァ……」「イヤーッ！」スコーピオンが黄金影の胴体を二人まとめて貫いた！「「アババーッ！」」 54
2023-05-12 23:14:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「このバリア！保つのかい？」レッドハッグはネザークイーンに叫んだ。スリケンの嵐はいまだスコールじみて降り来たり、半球状のムテキバリアに跳ね返っている。ネザークイーンは凄まじい笑みを返した。「アータ達が頑張る限り、アタシも気張るわ」「何よりだ」レッドハッグは黒い輝きを閃かせた！ 55
2023-05-12 23:20:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer
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「イヤーッ！」「アバーッ！」反物質めいた謎の黒いカタナにバターめいて切り裂かれた黄金影の胴体をバゼラードは掴み、自身の敵の攻撃に対する盾とした。その横から切り込んだのは、やはりKATANA隊員のニンジャ、ルーンリーフだ。バリアの傘の下、イクサは流動化し、乱戦が始まりつつあった！ 56
2023-05-12 23:33:01