『幸福なXXXを』

第三話『慕情』
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幸福なXXXを。 @XXX2022_

アレクはリリスの前を歩く。

2023-05-29 21:06:33
幸福なXXXを。 @XXX2022_

だから気が付けなかった。

2023-05-29 21:07:39
幸福なXXXを。 @XXX2022_

宙に浮いている大きな看板。

2023-05-29 21:08:25
幸福なXXXを。 @XXX2022_

いつ建てられたかは分からないその看板がギィ、ギィと不穏な音を奏でていることに。

2023-05-29 21:09:24
幸福なXXXを。 @XXX2022_

それに気が付いたのはリリスだった。

2023-05-29 21:10:30
幸福なXXXを。 @XXX2022_

なんの前触れもないが、ふと空を見上げた時、看板が重力に従い下に落ちるのが見えた。

2023-05-29 21:12:27
幸福なXXXを。 @XXX2022_

落下点にいるのは、アレクだ。

2023-05-29 21:13:32
幸福なXXXを。 @XXX2022_

このままでは彼は死んでしまう。

2023-05-29 21:14:46
幸福なXXXを。 @XXX2022_

声を掛けたって、逃げろと叫んでもどうしたって間に合わない距離。

2023-05-29 21:15:27
幸福なXXXを。 @XXX2022_

だから彼女は手を伸ばす。

2023-05-29 21:17:13
幸福なXXXを。 @XXX2022_

彼女はアレクの腕を引っ張り入れ替わる。

2023-05-29 21:19:01
幸福なXXXを。 @XXX2022_

彼女は笑った、守れたことに安堵しながら。

2023-05-29 21:21:30
幸福なXXXを。 @XXX2022_

急いで駆け寄ろうと間に合うわけが無い。 彼はただ、呆然と見つめていた。 pic.twitter.com/I1LuFc9kep

2023-05-29 21:22:47
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幸福なXXXを。 @XXX2022_

「はっ、はっはっ…は…っぅ…」 受け止めきれない現実に目の前が暗くなる。 どうして?何故?何故こんなことに!!

2023-05-29 21:23:52
幸福なXXXを。 @XXX2022_

広がっていく赤に手が震え、視界が歪む。 足は明後日の方向を向き、息は細く、もう声すら出せずただしを待つのみ。 重くでかい塊は彼女を殺した。 pic.twitter.com/u1ttSBGCdH

2023-05-29 21:25:00
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幸福なXXXを。 @XXX2022_

こんなの、こんなの! 冗談だろう?

2023-05-29 21:26:36
幸福なXXXを。 @XXX2022_

「リリ、ス…リリス…!!」 ふらりと転げそうになる足を抑え立ち上がる、この絶望の中で生きているわけのない彼女が生きていると信じて。

2023-05-29 21:27:33
幸福なXXXを。 @XXX2022_

開いた目は虚ろで、それでも何処と無く和やかで幸せそうな顔だった。カタカタと震える手を伸ばし彼女に触れる。 pic.twitter.com/GrrG6KZR7h

2023-05-29 21:28:59
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幸福なXXXを。 @XXX2022_

「リリス!!」 ふと、息が止まった。 血液に塗れた彼女は動かない、もう…二度と。

2023-05-29 21:30:03
幸福なXXXを。 @XXX2022_

日が落ち夜の暗がりの中で彼はふらふらと帰路つく。 事情を沢山聞かれ、今回は不運にも看板が落ちてきてなくなってしまった事故として片付けられた。

2023-05-29 21:31:43
幸福なXXXを。 @XXX2022_

ズキズキと痛む目を片手で抑え、歩みを進める。 今直ぐに彼女の死を簡単に受け入れられる程心は強くなかった。 いつかは前を向き、歩かなければならないけれど今は、今だけは死を受け入れられたくなかった。

2023-05-29 21:33:24