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ウチューじん・ささきさんによるコマンドゲレーテについての解説

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ウチューじん・ささき @uchujin17

そもそも「WW2時の戦闘機の動力制御には何があってどういう手順で操作したのか」を知らないと、コマンドゲレーテで何がどう自動化されてパイロットにはどんな利便性が提供されたのかがわからないのですにゃ。 twitter.com/hayate0611/sta…

2023-06-03 08:17:09
四式 @hayate0611

コマンドゲレーテ、日本語の本では軽く凄いと書いているだけで詳しく解説したのをまだ読んだことない(知らないだけのに可能性大、読むのを避けている著者のに書いてあるかもだがw) twitter.com/uchujin17/stat…

2023-06-03 07:31:56
ウチューじん・ささき @uchujin17

コマンドゲレーテは「レバー1本で吸気量・混合比・プロペラピッチ・点火時期そして過給器の1速/2速切り換えを自動管制した」と言われますが、まずこれは事実なのか。他の飛行機ではそれらは全部手動だったのか、それとも何らかの自働機構があったのか。

2023-06-03 08:19:55
ウチューじん・ささき @uchujin17

この中で面倒なのは「プロペラピッチ」で、ドイツ式のプロペラピッチ管制は他国(アメリカ式)と操作系が違います。アメリカ式だとピッチレバーはプロペラガバナーに作用してプロペラの回転数上限を制御します。

2023-06-03 08:21:09
ウチューじん・ささき @uchujin17

ピッチレバーを例えば3000rpmに設定すれば、スロットルを押し込んでゆくとアイドル状態(例えば1200rpm)から低ピッチのまま回転数が上がり、3000rpmに達すると回転数はそこから上がらず、ピッチが立つことで推力が変化します。

2023-06-03 08:23:08
ウチューじん・ささき @uchujin17

ピッチが立つとプロペラはより多くの空気を掻き出すようになり、エンジン負荷が上がり、それはブースト圧の変化として現われます。アメリカ式の操作体系では「持続戦闘運転(MIL)2800rpm/56inHg、戦闘緊急運転(WEP)3000rpm/62inHg」のように表記されます。

2023-06-03 08:26:43
ウチューじん・ささき @uchujin17

ドイツ式の場合、Bf109E-3以前は手動変節で、スロットルレバーの上にはピッチの上げ・下げスイッチがあり、計器板にはブースト計・回転計のほかに「ピッチ計」という特異な計器が付いていました。

2023-06-03 08:27:23
ウチューじん・ささき @uchujin17

手動変節ではスロットルを前後するのに呼応して左手親指でピッチを「上げ」に操作してとブースト圧と回転数を望みの範囲に納める必要がありました。これはさすがに不便でパイロット負担が大きかったので、E-4以後ではプロペラガバナーが導入され「自働」のポジションが追加されます。

2023-06-03 08:29:31
ウチューじん・ささき @uchujin17

プロペラピッチを完全自動制御にしないのは、巡航時には燃費を稼ぐために「低回転+高ピッチ」という状態を意図的に作る必要があるからです。スロットルを押し込む=高回転・高ピッチではこの操作ができません。

2023-06-03 08:31:11
ウチューじん・ささき @uchujin17

Fw190でもピッチだけはコマンドゲレーテから切り離して手動変節操作することで巡航運転設定ができるようになっていたようです。でもそれってアメリカ式の3本レバー操作(スロットル・ピッチ・ミクスチャー)より便利で楽なのかなぁ?

2023-06-03 08:33:59
ウチューじん・ささき @uchujin17

混合比(ミクスチャー)操作も単純ではなく、始動時には原則として最濃(フル・リッチ)、タキシング中はプラグ汚染を防ぐためエンジンが息をつく直前くらいに薄め(リーン・アウト)、離陸時には再びフル・リッチにして、高度が上がるのに応じてリーンアウトしてゆきます。

2023-06-03 08:35:56
ウチューじん・ささき @uchujin17

セスナみたいに単純な飛行機でも、急旋回とか失速・回復とかのマニューバーをやるときには原則としてフル・リッチに入れます。セスナに自働混合比制御(AMC)はついておらず、ミクスチャーはエンジン始動から停止までずっと手動制御です。

2023-06-03 08:37:53
ウチューじん・ささき @uchujin17

大気密度(主に高度、気温と湿度にも影響される)に応じて混合比を自動調整するAMCは零戦にも付いていました。二次大戦時の一線軍用機クラスなら大抵付いていたんじゃないかなぁ?なので別にFw190コマンドゲレーテの専売特許ではないと思います。

2023-06-03 08:39:35
ウチューじん・ささき @uchujin17

ミクスチャーもエンジン温度が上がったとき意図して過濃(オーバーリッチ)にするとか、残燃料が心細いときにエンジン過熱してもいいから過薄(オーバーリーン)にしたい場合があるので、完全自動おまかせだけでは不安で、大抵の飛行機はAMCを切って手動制御にできるはずです。Fw190はどうだろう?

2023-06-03 08:42:15
ウチューじん・ささき @uchujin17

点火時期が可変できる航空エンジンはあまり多くないけれど、R-2800だとCシリーズ以後でSpark Advance Operating Unitという機能が追加された。制御は手動ではなくブースト圧に連動した自動式。

2023-06-03 09:18:54
ウチューじん・ささき @uchujin17

スロットル制御もスロットルレバーがバタフライバルブを直接パタパタ動かすのではなく、スロットルレバーの前後はAutomatic Boost Control Unitに入ってこれがスロットルを動かす。ついでにADI(水噴射)の管制も行う。Boost Controlの導入時期がはっきりしないけど、やっぱりCシリーズから?

2023-06-03 09:22:00
ウチューじん・ささき @uchujin17

過給器の切り替えについては、少なくともF6FのR-2800-10では手動のみでAUTOは無かったらしい。ただしP-51Dには気圧(高度)に連動した1速/2速の自動切り換え機能が付いている。(P-51B-1のマニュアルには無いので後から追加された?) pic.twitter.com/bVRl2Ck3w9

2023-06-03 09:33:57
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ウチューじん・ささき @uchujin17

なのでコマンドゲラーテが管制しているとされる「吸気量(ブースト圧)・混合比・プロペラピッチ・点火時期そして過給器の1速/2速」は、少なくとも米軍機では機種によって・時期によってばらつきはあるけれど、自動制御装置が導入されつつあったことになります。

2023-06-03 09:35:42
ウチューじん・ささき @uchujin17

米軍機にあってFw190に無いものは冷却系の管制。Fw190にはオイルクーラーシャッターもなければカウルフラップもありません。米軍機ではこれらもサーモスタットによる自動制御と手動オーバーライドが実装されていました。

2023-06-03 09:36:37
ウチューじん・ささき @uchujin17

Fw190のコマンドゲラーテが特異なのはその機能ではなく、米軍機ではプロペラガバナー・ブーストレギュレーター・AMCなど複数の装置に分散して実装されていた自動制御が、1箇所に集中実装されていたことではないかと思います。 pic.twitter.com/IiOrPNe1wB

2023-06-03 09:38:49
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ウチューじん・ささき @uchujin17

これは諸刃の剣で、コマンドゲラーテさえ稼動していればエンジン管制の大部分が機能するのであちこちを別々に整備する必要がない反面、コマンドゲラーテが故障すると複数の機能がいっぺんに損失してしまう冗長性の欠如というリスクもあったはずです。

2023-06-03 09:40:30
ウチューじん・ささき @uchujin17

ドイツ機についてはDB601系エンジンの「パワーエッグ・コンセプト」…前線での整備は必要最小限にとどめ、ピストンリング交換などの整備はエンジン丸ごと設備の整ったデポに送って行う発想に似て、コマンドゲラーテも「前線では基本的に弄らない・デポで調整検査済みのユニットを取り付ける」という

2023-06-03 09:42:27
ウチューじん・ささき @uchujin17

運用を前提にした装置だったのではないか、と思います。

2023-06-03 09:43:06