デス・フロム・アバブ・セキバハラ #4
イグゾーションがチョップを押し込む!のけぞるニンジャスレイヤー!その胸元へと、全カラテを重点した痛烈なランスキック!「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーの体はワイヤーアクションめいて吹っ飛び、ストーンヘンジの岩のひとつに背中から激突する!岩に亀裂が入るほどの威力! 24
2011-11-19 22:33:26ニンジャスレイヤーの体はそのまま、岩に背を預けて座るように地面に落下した。糸の切れたジョルリじみて、頭も手もだらりと垂れ下がっている。本来ならば早々に間合いを詰め、カイシャクして爆発四散させるべき場面だが……イグゾーションは距離を取ったままジュー・ジツを解かない。何故か?! 25
2011-11-19 22:38:33「…すべし……ンジャ…殺すべし…」ニンジャスレイヤーの「忍」「殺」メンポから漏れる不吉な言葉を、イグゾーションは聞いていた。前回、刑務所の戦いでは、戦闘不能に陥ったとばかり思っていた相手が同様の状態から復活し、ニンジャソウルを高め、狂戦士じみた奇襲攻撃をしかけてきたからだ。 26
2011-11-19 22:45:17「ニンジャ、殺すべし!」閉じられていたフジキドの両目が再び開かれた。右の黒眼はセンコめいて小さく赤くなり、ユーレイじみた光の軌跡を空中に残す。ナムアミダブツ!フジキドの肉体が限界に達したことで、彼のニューロンに憑依するナラク・ニンジャの力が一部だけ強制的に引き出されたのだ! 27
2011-11-19 22:49:44「「イヤーッ!」」再び激突するカラテ。だが今回はニンジャスレイヤーがイグゾーションを凌駕!(((やはり不利か!)))イグゾーションは3連続側転でニンジャスレイヤーの3連続キックを回避すると、そのままストーンヘンジ上に跳躍した。コーナーポストめいた攻撃を仕掛けるつもりか!? 28
2011-11-19 22:56:48いや、違う!イグゾーションは上空の暗黒太陽を見上げて口元に笑みを浮かべると「イイイヤアアアーッ!」跳んだ!高く!焼け焦げた肉の放つ香ばしい臭いにつられて舞い下り始めていたバイオハゲタカや巨大バイオスズメを飛び石代わりに、次々と高く!跳躍!ブッダ!まるで平安時代のニンジャだ! 29
2011-11-19 23:02:23おお、この信じ難い光景を仰ぎ見た常人は等しくニンジャリアリティ・ショックに襲われ、発狂し、アサイラムへと強制収用されるであろう!イグゾーションが接触したバイオ猛禽の目、鼻、口、耳から光が放たれ、数百あるいは数千の生体ミサイルとなって飛来する!「これが真のフーリンカザンだ!」 30
2011-11-19 23:07:30「ヌウウウーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投じた。カブーム!カブーム!カブーム!誘爆が起こらない程度の小爆発が、空中でいくつか咲いた。人間と比べれば、バイオ猛禽の体は遥かに小さい。正確に命中させれば一撃でヤキトリにできる。だが……この数はあまりにも常軌を逸している!! 31
2011-11-19 23:15:21地平線の彼方からこの光景を観察する者がいたならば、セキバハラ荒野の上空に咲く白く無慈悲な菊の華が見えたことだろう。これぞデス・フロム・アバブ!ニンジャスレイヤーにはヘルタツマキという大群一掃用の殺戮スリケン・ジツがあるが、ヘルタツマキは真上の敵を撃墜することができないのだ! 32
2011-11-19 23:20:15ナムサン!絶望的状況である。もし、この時ニンジャスレイヤーの肉体をコントロールしていたのがナラク・ニンジャだったならば、それでも何か人間の想像を超えたジツによってこの窮地を乗り越えたかもしれない……だがフジキドは、荒野に捨て置かれたガンドーの存在に気付いてしまったのだ。 33
2011-11-19 23:24:13バリキ爆弾が全てニンジャスレイヤーに迫り来るわけではない。しばしば流れ弾めいて何発かの生体ミサイルがガンドーへと飛来する!フジキドはスリケンを投じ、流れ弾スズメを撃墜し、岩の陰にサイドフリップしてハゲタカ爆弾を回避し、丘を駆け下り、ジグザグ走行しつつガンドーのもとへと急ぐ! 34
2011-11-19 23:29:59「ハハハハハ!私の裏を掻くことは不可能だ!」上空からイグゾーションの高笑いが響く。ニンジャスレイヤーは、白い光の小爆発によって少しずつ視界が削り取られてゆくのを感じながら、ガンドーを決して見捨てず、闇雲にスリケンと回避だけを続けた。そのためだけに鍛えられたマシーンのように… 35
2011-11-19 23:40:30聴覚も爆発音に聾され……視界はさらに狭まり……力を失ったニンジャスレイヤーの体は跳躍中にハゲタカに食いつかれ、爆発し、ゆっくりと回転し、連続的小爆発に包まれる……フジキドの意識がニューロンのフートンの奥へと……遠ざかってゆく……右眼のセンコが……消えゆく…… 36
2011-11-19 23:43:56ミサイル攻撃開始から約3分後。全てのバイオ猛禽を撃ち尽くしたイグゾーションは、江戸時代を髣髴とさせるキリングフィールドへと変わったセキバハラ荒野へと、しめやかに着地した。 38
2011-11-19 23:46:05そしてニンジャ装束に付着した薄汚い羽を払い終えると、やや芝居じみた調子で、両耳に手を当てた。そして精神を集中させる。「……素晴らしい!まだ微かに息があるのか!」イグゾーションはダイミョ・ショーグンめいた支配者の足取りで、ゆっくりと鎮魂の丘へと向かう。 39
2011-11-19 23:49:31おお、何たる機転か……イグゾーションの一撃で亀裂の入っていたシメナワ立石が、ニンジャスレイヤーの決死のカラテによって破壊され、ガンドーの体はその下で無傷のままに隠されていたのだ。だがうつ伏せで横たわるニンジャスレイヤーの体は、刑務所グラウンドの戦闘直後よりも酷い有様だった。 40
2011-11-19 23:54:42もはやニンジャスレイヤーの体はぴくりとも動かない。イグゾーションは凱旋するナポレオンめいた足取りで丘を登ろうとしている。その頃、フジキドのニューロン内にあるローカルコトダマ空間のチャノマでは…… 41
2011-11-19 23:56:318畳の暗い和室。色褪せた妻子の写真や数個のショドーが砂壁に掛かっている。ラオモト戦以来、長らくナラク・ニンジャが寝たきりとなっている安らぎフートンの横には、フジキドが苦虫を噛み潰したような顔で正座していた。「ナラクよ、すまぬ……オヌシならばガンドーを捨て生き延びただろうが」 42
2011-11-20 00:03:22だがナラクの目は開かない。ザリザリザリザリ!ザリザリザリザリ!突如、精神チャノマに置かれたアンティーク調TVにノイズが走った。「これは……?以前もに確か……」フジキドはTVのボリュームダイヤルを回す。『……すべし……殺すべし……ニンジャ……殺すべし……』 43
2011-11-20 00:06:36ナラクか?いや違う。耳を澄ます。ショウジ戸で四方を囲まれた精神チャノマの外側から、その声は聞こえてくる。いや、風のようにどこからか流れてくる。もし読者諸君が秋の夕暮れに、ゲイシャ旅館でうたた寝した経験があれば、フスマの隙間から忍び込んでくる冷たく湿った風を知っているだろう… 44
2011-11-20 00:12:52精神チャノマに引き篭もっているフジキドはリアルスペースでの方向感覚を失っていたが、その怨念レギオンめいたモータルソウル集合体の風は、実のところ彼が破壊したシメナワ立石のひとつから吹き込んでいた。「これは!」不意にナラクが上半身を起こす!振り返り驚きの目でそれを見るフジキド! 45
2011-11-20 00:19:01「でかしたぞフジキドよ!ここは、セキバハラか……!」ニンジャスレイヤーの意識が醒める。ローカルコトダマ空間は黄金に光り輝く01011010101011に変わり、高速上昇を開始した静止軌道エレベーターから見る夜景めいて無数の光の点の集合体に変わり、縦に長く伸び、消えていった。 46
2011-11-20 00:25:17それを見たイグゾーションは戦慄した。いや、彼に憑依したニンジャソウルが、ナラクの存在を感じ取って本能的に戦慄したのだ。彼が丘を登り、瀕死のニンジャスレイヤーの横へと歩み寄ったとき……突然それは物理法則に反するような動きで立ち上がった。両腕をニンジャ殺しの黒い炎で包みながら。 47
2011-11-20 00:30:14それを見た瞬間、イグゾーションは反射的にセルフバリキ・ジツを使っていた。暴走が起こらないギリギリの状態へ……多少のニューロン損傷は度外視する……目、鼻、耳、口から白光!「…ドーモ、マズダニンジャ=サン、ナラクニンジャです」両目を赤く発光させたニンジャスレイヤーがオジギした。 48
2011-11-20 00:35:44