『文化がヒトを進化させた』(ジョセフ・ヘンリック, 今西康子 著)の感想

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ヒトが地球上でもっとも持久走が得意な動物だ…って話は最近では有名になってきたけど、そのわりに水を飲むのが苦手じゃね？ロバは3分間で20リットル、ラクダは10分間で100リットルも飲めるけど、ヒトの胃は10分間で2リットル程度しか飲めない。これって欠陥のある設計じゃね？って本を読んでいます。

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自然界でヒトに匹敵する長距離ランナーはリカオンやオオカミのようなイヌ科の動物たちなのですが、彼らは涼しい朝夕の時間帯か、寒冷地帯でしか狩りを行えません。ヒトは昼間の炎天下の下で、獲物が熱中症で倒れるまで追いかけ続ける「持久狩猟」をする種として進化したようです。

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Q. アテネ五輪のような炎天下でも（大量の発汗で体温調節することにより）フルマラソンを走れる唯一の動物であるヒトは、にもかかわらず、なぜ胃に2リットルしか水を蓄えられないのか。 A. 水筒を発明したから。

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（面白すぎて身悶えしている）

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愛犬家の方々は「ワンちゃんはヒトよりも暑さに弱いから夏のお散歩は気をつけて！」と獣医師や先輩愛犬家から叩き込まれると思うのですが、その背景には進化の違いがあるわけですね。

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ジョセフ・ヘンリック『文化がヒトを進化させた』という本です。哺乳類は乳糖不耐症がデフォルト設定で大人になると牛乳が飲めなくなるのに、ヒトは飲める人がかなりいるのはなぜか？程度の内容を期待していたら、もっと射程の広い議論が展開されていました。

怒れる旦那 @MOshimegai25543

@rootport おい誰か、数秒で2リッター飲み干すフードファイターの映像貼ってやれ 一日必要な水分が違う生き物を並べて得意苦手とか言ってもなぁ 必要ないから飲みに行かないだけとしか言えん 大量の水を飲むのは危険だしな 猫なんて体重あたりの飲水量もっと少ないし

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『文化がヒトを進化させた』は、人類史の書籍としては考古学や化石人類に関する記述・考察が少ないという弱点があると感じます。直前に読んだ『神は、脳がつくった』が考古学と化石研究の比率が高かったので、なおさらそう感じます。しかし、

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一方で、心理学的な研究や、民俗誌的な研究に関する記述は豊富です。「人類の進化」という視点ではやや物足りませんが、反面、「ホモ・サピエンスはどういう動物か」という疑問に対しては鋭い洞察を見せてくれます。

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ビジネス書っぽい読み方もできる本だと感じました。たとえばリーダーシップとひとことで言っても、恐怖と威圧にもとづく「ドミナンス」と、信望と名声にもとづく「プレスティージ」との二種類に大別できる……なんて話題は、中間管理職・経営者の人には学ぶところが大きいのではないでしょうか。

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ドミナンスでもプレスティージでも、他人の行動を支配できます。が、後者のほうが、自発的に他人からの協力を引き出すことができる。では、どうすればプレスティージを得ることができるのか？という疑問にも、様々な文化圏の事例を紹介することで答えてくれます。

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プレスティージによって支配力を得ている人は、自分を強そうに見せる必要がないし、攻撃的にふるまう必要もない、冗談で場を和ませることを得意とする……みたいな話を読んで、どうしてもプーチン大統領とゼレンスキー大統領の二人を思い浮かべずにはいられませんでした。

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あー、そうか。デヴィッド・M・バス『男と女のだましあい』（2000年初版）の頃には「ユーモアのセンスがあると異性を誘惑できる」くらいのことしか言えなかったけれど、20年たった今は研究が進んで、もっと深いレベルで「なぜ人類はジョークを言うのか？」という疑問に答えられるのか。

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「ユーモアのセンスが異性に対するセックスアピールになる」という仮説そのものは、まあ、おおむね正しいと思う。顔面偏差値70オーバーのイケメンとの恋愛遍歴を重ねて、最終的にお笑い芸人と結婚した……なんて美人女優のことがすぐに思い浮かぶ。問題は、なぜユーモアのセンスが魅力になりうるのか。

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20年前は、ユーモアのセンスはクジャクの羽根みたいなもんじゃね？程度のことしか言えなかった。けれど、ユーモアのセンスがプレスティージにかかわるのであれば、話が変わってくる。冗談の上手い人の周囲には、「一緒にいると楽しい」と感じる仲間が集まり、集団内での地位が高まるとしたら…？

朱戸アオ「ダーウィンクラブ」「ウイルス事件簿」連載中 @acatoao

この本は大変面白かったが同時に怖い本でもあった。非常にざっくり説明すると人間の進化は文化的背景とセットだというもの。例：火を使えて煮炊きできる→硬いものを噛む必要がなくなる→顎が小さくなる。 文化がヒトを進化させた―人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉 amzn.to/3J192t6 twitter.com/rootport/statu…

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QT「読み書き能力が高まるとどうやら顔認識が苦手になるらしい。なぜなら、こうした（※文字認識のための）脳領域を（※成長過程で）急ごしらえすることによって、その隣にある顔認識担当の領域、紡錘状回が割を食うからである」──ジョセフ・ヘンリック『文化がヒトを進化させた』p388

2023-06-09 15:14:23

朱戸アオ「ダーウィンクラブ」「ウイルス事件簿」連載中 @acatoao

本の前半では世界に打って出たヨーロッパの冒険家たちの遭難、全滅のエピソードがいくつも語られる。「文明人」は「未開の地」ではそこで文化を蓄積してきた「未開人」よりも劣っており、その場所では生き残ることができない。日本人のほとんどはここでは生き残れないだろう。 mainichi.jp/articles/20230…

朱戸アオ「ダーウィンクラブ」「ウイルス事件簿」連載中 @acatoao

そして様々な社会でいかに人類が文化を蓄積してきたかが語られる。どうしてそんな作業をするのか誰もわからないままトウモロコシに灰を混ぜる。（トウモロコシ主体の食事はナイアシン不足を招くがアルカリ成分を加えるとトウモロコシ内のナイアシンが吸収可能になる…私も書いててよくわからん…）

朱戸アオ「ダーウィンクラブ」「ウイルス事件簿」連載中 @acatoao

似たような例が膨大に語られる。そして怖い文章が… 「自分の直感や体験を重んじる個体は排除され、先祖伝来の習慣や信念など、貯蓄されてきた知恵を信じたそれに従う個体だけが生き残ってきたのである。生死を分ける重大な局面では得てして、自分の体験や直感に頼って行動するとまずいことになる。」

朱戸アオ「ダーウィンクラブ」「ウイルス事件簿」連載中 @acatoao

まったく言及されてないが、我々現代人は「その考えは古い、正しくない」と先祖伝来の習慣を捨ててきた結果遭難しつつあるのではないか…。 と読んでて怖くなりました。

テラヤマアニ @kowagari

おれ、異常者のレベルでスピとかオカルトとか嫌いなので、朝のテレビで「今日は牡羊座が」云々言ってるのを見るだけで眉間にしわが寄ってしまうのだけど、今読んでる本で頭ガツーンとぶん殴られる衝撃受けた。進化人類学から読み解く、占い文化の役割についての話が書いてあった。