精神科勤務医歴20年・斎藤環氏が、日本精神科病院協会・山崎学会長インタビューについて語る

元精神科勤務医の立場から斎藤環氏が日本精神科病院協会・山崎学会長インタビューについて語ります。 内閣府障がい者制度改革推進会議総合福祉部会で委員として骨格提言策定に参与した社会福祉学者竹端寛氏の投稿を補足として追記します。
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斎藤環氏について

斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

私は2013年に筑波大学に就任しましたが、それまでは精神科病院(指定病院を含む)やクリニックの「現場」で二〇年以上の勤務医経験があります。もちろん患者を隔離拘束した経験もあります。保護と懲罰のいずれが目的だったか曖昧な処遇をした覚えもあり、今回の批判には自戒の意味もあります。

2023-07-09 15:48:04
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

そういうわけで私はクリーハンドではありませんが、多少なりとも内情を知る人間として批判は続けます。 「合法的」な身体拘束の問題は、以下の長谷川氏の論文に詳しく記されています。 yuki-enishi.com/kousoku/kousok…

2023-07-09 15:51:42

山崎学会長のインタビュー

斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

おお暴言だらけの会長インタビューが公開されてる。 tokyo-np.co.jp/article/261541 まるで人の話を聞く気がない。耳が要らない人に耳を分けてもらえばいいんじゃないかな。 この御方のせいで日本の精神医療の改革は氷河のように速いのだ

2023-07-07 23:36:26
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

山崎会長の「暴言」が、暴言に見えない方、「会長は現場を良くわかっている」と思いたい方が多いようなので、これから山崎会長発言の問題点を指摘していきます。

2023-07-09 15:34:43

後追いの法整備と合法性

法整備は後追いでされてきたにもかかわらず、遅れてきた法整備をもとに合法性を唱えるのは誤り。

斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

「基本的にね、精神保健福祉法に則のっとった拘束なわけ。それについて何だかんだ言うのは変だと思うよ」 「合法的なら問題ない」のであれば、1950年までは「座敷牢」も合法。1987年までは診断のいかんに関わらず、家族と医師が合意すれば強制入院(同意入院)も合法でした。

2023-07-09 15:36:58
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

「合法だから良い」という「現場的」な発想を悪徳病院の院長が言うならともかく、日精協の会長が言うのはいささか品位に欠けるように思われます。たぶん会長は「人間臭い、いい人」で、その人望ゆえの8期目なのでしょう。だとしても暴言は暴言です。

2023-07-09 15:38:49
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

精神医療関連の法律は、特に人権面がかなり遅れていて、外圧によって改正されてきました。精神医療の改革を願うなら、まず現行法が本当に患者の利益になっているのかを疑うべきでしょう。ちなみに内科での拘束の多さを例に挙げて批判をかわそうとするのは、「論点のすり替え」という初歩的な詭弁です。

2023-07-09 15:42:10

あいまいな定義・不明確なチェック

定義があいまいでチェックが不明瞭なので不適切な対応を行った場合も適切に行ったように装うことがされてきたのでは?

斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

身体拘束に関する精神保健福祉法の記述。 city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/c… 「身体的拘束を行っている間においては,原則として常時の臨床的観察を行い」「医師は頻回に診察を行うこと」などとありますが、「常時の臨床的観察」も定義づけられておらず、具体的な診察回数も記されていません。

2023-07-09 15:45:12
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

カルテや看護記録に適切に対応した「かのように」記載することは容易にできます。適切になされている拘束もあると信じたいですが、問題は不適切になされている拘束をチェックする方法も罰則もないことで、患者が死亡するなどの事態にならない限り、検証されることもありません。

2023-07-09 15:45:56
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

注射を拒否して暴れたため10日間もの身体拘束を受け、エコノミークラス症候群で死亡した患者の遺族が提起した訴訟では、名古屋高裁で拘束の違法性が認められ原告が勝訴。被告側の病院は全国の病院長などによる56通の意見書を提出し最高裁に控訴しようとしたが、最高裁がこれを受理せず勝訴が確定。

2023-07-09 15:53:30
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

山崎会長はただちに記者会見を行い、精神科指定医以外の非専門家の意見が反映された判決は容認できないと主張しました。この直後、厚労省は身体拘束の条件を緩和するような法改正を提案してきており、長谷川教授らの激しい反対を受け、この論文の時点では保留ですが予断を許さない状況です。

2023-07-09 15:57:37
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

私は長谷川教授の組織した「日本身体拘束研究所」のメンバーですが、現在よりも拘束の条件を緩和する方針はとうてい容認しがたいと考えています。それが可能な状況下では拘束は必ず濫用されるからです。

2023-07-09 15:58:50

日本で突出する身体拘束の多さ

日本は諸外国より重篤な患者が多いというエビデンスはない。にもかかわらず、身体拘束が多いのは濫用されているのでは?

斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

日本の身体拘束は、件数の多さも拘束期間の長さも国際比較では突出しています。日本の精神障害者だけが重篤で問題行動が多いことを支持する頑健なエビデンスは存在しません。また拘束件数は西日本よりも東日本の方が有意に多いというデータもあります。東日本の精神障害者だけが以下省略。

2023-07-09 16:00:41
斎藤環「自傷的自己愛」の精神分析 (角川新書) @pentaxxx

この統計が意味しているのはわが国の身体拘束が「現場」の恣意的な判断で、野放図に濫用されている可能性です。この件について、胸を張って「自分には一点のやましいところもない」と言える人とはたぶん対話にならないと思うので、私は私の立場と影響力の範囲でやれることを粛々とやろうと思いました。

2023-07-09 16:01:35

<補足> 家族に負担を背負わせる行政の無策について

竹端寛(たけばたひろし) @takebata

なぜ精神病院や入所施設を批判すると、障害者家族から批判されるのか。それは、家族が必死になってギリギリまで障害者を支えざるを得ず、限界を超えてやっとの思いで施設にお任せした、というトラウマ経験が背後にあるからだ。そして、そのトラウマを生み出したのも、行政の無策である。

2023-05-15 20:59:03
竹端寛(たけばたひろし) @takebata

重度障害者の尊厳と、障害者家族の尊厳は、本来ならば利益相反関係ではない。だが、国の責任を最小化している現状では、どちらかの尊厳を護ると、どちらかの尊厳が奪われる。だが、繰り返し書くが、これは宿命ではなく、国家責任を放棄しているから、不毛な二者択一論理に追い込まれるのだ。

2023-05-15 21:03:14
竹端寛(たけばたひろし) @takebata

これは先ほどNHKニュースで掲載されたけど、滝山病院事件でも全く同じ。二者択一の構造を放置した行政責任だと思う。→「退院が進まない背景には、家族が支えるか、精神科病院に入院させるかの2つの選択肢しかなく、地域での暮らしを支える社会資源が乏しいことがある。」www3.nhk.or.jp/news/html/2023…

2023-05-15 21:07:38
竹端寛(たけばたひろし) @takebata

この行政の無策をひっくり返そうとしたことがある。内閣府障がい者制度改革総合福祉部会の委員として、「骨格提言」作成に関与した。その中では、地域基盤整備10カ年戦略を提唱し、家族が丸抱えをせずとも地域で暮らせる社会資源を10年かけて作る、という明記した。   mhlw.go.jp/bunya/shougaih…

2023-05-15 21:16:02
竹端寛(たけばたひろし) @takebata

この提言を潰したのは誰か。それは、厚生労働省であり、厚労省にロビー活動され屈服した議員であり、その取り巻きのジャーナリストだった。「出来ない100の理由」を述べ立て、「出来る一つの方法論」を模索しなかったのは、厚労省だった。国の無責任に直面したのだ。 synodos.jp/opinion/welfar…

2023-05-15 21:18:42