東京国立博物館紀要第五八号『東京国立博物館所蔵「木挽町狩野家伝来資料について」から武田信玄像を追ってみる

日光81 @nikko81_fsi

東京国立博物館紀要第五八号を熟読。富山藩御用絵師の木村立嶽が、幕府奥絵師の木挽町狩野家所蔵の信玄像模本を元に模写。同様の信玄甲冑像の内、経緯が比較的わかっている貴重な例。で、この木挽町狩野家旧蔵模本を追いかけるなかで、この紀要と出会い… twitter.com/nikko81_fsi/st…

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図録「謙信越中出馬」何が驚いたかって、原本が見つかっていない、逍遙軒筆高野山成慶院旧蔵の武田信玄像の写本が富山市郷土博物館も所蔵しているってこと。長浜に伝来している像(2枚目)と添えられた文字が一致。また写された経緯が比較的ハッキリ。甲冑像の足跡を追うには押さえなくちゃ。 pic.twitter.com/DyuU1wftEZ

2022-11-26 11:09:23

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東博で8,000点を超える模本を所蔵し、半数以上がこの木挽町狩野家伝来の模本群。その東博への収蔵経緯も複雑で、研究も始まったばかり。注目されたのも2000年以降というから研究史としては、ごく最近といえるんだろうなあ。

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昨年度紀要で、その着手されたばかりの模本群の、現時点でわかっている研究成果が披露されている。すぐに、元々高野山成慶院にあったと思われる、武田信玄甲冑像の原本に行き着くわけではないけれども、重要な示唆がいくつかあった。わくわく。

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①収蔵経緯について。4800点を超える模本群の大半がハッキリしないのだけど、明治8年・明治19年・明治24年・昭和24年の記録がある。分類なども錯綜しており、系統的に研究を進める困難さをよく理解できる。目を引くのは、明治19年、木挽町狩野家10代当主・雅信の子から寄贈。 twitter.com/nikko81_fsi/st…

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この中に『武田信玄出陣屏風絵』なるものが含まれている。これがそのまま、例の甲冑像に結びつくかはわからないが、どういう肖像か、気になる所。実物を公開なり、写真を何かに掲載されたりされないかな。

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②模写のされ方。明治8年に狩野雅信から直接買い上げた記録の残る模本のいくつか、画像掲載があったのだけど、伝・足利尊氏像模本（文化5年写）あたりは、その一部だけが彩色される様子が、一部の信玄甲冑像とよく似ている。 twitter.com/nikko81_fsi/st…

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例えば富山市郷土博物館蔵、東大史料編纂所蔵など、特に未完の模本と近い印象をうけ、実際に木挽町狩野家に多数の模本が収蔵されたであろうと想像できる。とはいえ、この膨大な模本群の中から、原本から直接模写された像に行き当たるのは容易ではなさそうだ。

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ただ、模写のお手本となった模本に、ひょっとしたら原本から模写された経緯などが記載されていたりするかもしれない。その可能性を感じられただけでもワクワクはする…みたい…ｺﾞｸﾘ

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③幻の木挽町狩野家コレクション。実は模本を大量に所蔵するだけでなく、原本となる古画蒐集も相当行っていたらしいこともわかった。これがまた興味をそそられるんだわ… twitter.com/nikko81_fsi/st…

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『訂正増補考古画譜』によると、かつて所蔵されていた具体的な古画の言及があり、また『甲子夜話』（武田クラスタとしては、信玄公芋虫苦手エピで有名なアレです）にも、文政年間の記述として相当な古画があり、何と文政12年3月の文政の大火で、原本を収蔵していた土蔵が焼失したのだとか。

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どのような古画があったか、今時点で判っている中に、武田信玄に関わるものはなかった…『甲子夜話』の言及では、「土庫はすべて焼亡し一物も遺らず」とあるそうで、もし高野山成慶院旧蔵の原本を木挽町狩野家で所蔵していたなら、この時に焼失している可能性が高い、ということになるかもしれないな…

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その他古画の虫干の記録として、当時の当主の日記での言及や、蓮池鍋島家文書所収「狩野伊川院曝画録」なる史料もあるそうで、ひょっとするとこの中に信玄像への言及があるかも知れない…このあたりを今後追求していきたいぞ。興味は尽きない。