右園死児報告の真島文吉新作ノベル。アメコミヒーロー小説『ラーヴァマン』。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

それ以降は誓ってヤラセ無し、本当の犯罪との戦いだったよ。ラーヴァマンは強かったし、特例で強力な装備も使えた。その内、本当に犯罪は減った。凶悪犯罪はな。それで良かったんだ。市長もせっかく確立したヒーロー像を軽犯罪対策なんかに割きたくなかった。スラムで起こる犯罪は新聞に載らないしな。

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新聞に載らなきゃ、犯罪は起こってないのと同じだよ。少なくとも市長はそう考えていたようだ。ラーヴァマンはメディアの目の届く範囲で、凶悪犯罪とだけ戦う。それで良かったんだ。それがヒーローの役目で、限界さ。国中の人間を1人残らず救うことなんかできやしない。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

罪悪感？なぜ？感じるはずもないさ。俺たち俳優はやるべきことをやった。実際世の中のためにもなったさ。ヒーローを延命させたんだからな。ラーヴァマンのいないこの街を想像してみなよ。ぞっとするだろ？きっと街中犯罪だらけ、警官だらけだ。スラムに集中してる方がまともな市民は幸せさ。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

どうせスラムに住んでるやつらなんか、税金もろくに納めてないに決まってる。ああいうやつらに公金が使われてると思うと泣けてくるよ。治安の礎くらいにはなってもらわんとな。ヒーロー不在地帯。だから犯罪者が集まる。それでいいよ。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

……なんだい、もう帰るのか。そうかい。ま、いいよ。ウイスキーごっそさん。忠告しとくが、俺の話を記事にしても誰も信じないぜ。それどころか市長の手下が飛んできて、あんたをどうにかしちまうだろうな。そのネタは使えないってことだ。悪く思うなよ。

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【調査報告。通報通り、俳優ダーレット・ホーンは機密を口外している。収容手続きを進められたし。報告終わり】 了

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小説「偽ヴィランの晩年」 #ツイッター小説 #このツリーの内容はフィクションです

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スクリームってヴィランがいてさ。もう、すっげえの。ベッドシーツかぶった半裸のおっさんが、高周波一歩手前みたいな声で叫びまくってんの。市長がビビって、逮捕でなく保護命令出したくらい。でもスクリームは、銃を持っててさ。まあ、最悪だよな。ガンガン撃ちまくってくる。

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スクリームは元シェリフ……保安官でさ。真面目に何十年も働いて、母親の介護のために引退したんだ。なけなしの金で郊外の古屋敷を買ってさ。でも、運が悪かったんだな。市の開発事業が始まって、周りに道路が通りまくってさ。土地の価値が出始めた。で、悪名高き不動産屋、スリーピースの台頭だ。

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古屋敷の周りの土地をあさりまくって、全部駐車場にしちまった。ひでえもんさ。スクリームの土地もしれっとかすめ取って、しかも屋敷の5センチ手前まで、駐車スペースでびっしり。スポーツカーやダンプが好き勝手に停めてさ、朝も夜もなく騒音まみれ。スクリームもお袋さんも参ってたよ。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

スクリームは腰の低い男でね。保安官にしては珍しい。スリーピースの本社に行ってはお忙しいところをすいません、って陳情してた。せめて駐車スペースを屋敷から遠ざけてくれませんか、とか、お金を出すので防音壁を建ててくれませんか、とか、涙ぐましいことを言ってた。

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でも、相手は愛も倫理も持ち合わせない悪徳スリーピースだ。ニコニコと話は聞くが、茶も出さずに追い返す。スクリームが食い下がると、文句を言ってるのはお宅だけですよ？とぬかす。当たり前だ。スクリームの家は郊外だから。一軒だけ被害を受けてる。その内スクリームのお袋さんがおかしくなった。

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なけなしの財産は屋敷の補修や防音グッズに使っちまってたから、入院できなかった。一年もたなかったよ。ポリスが踏み込んだ時、スクリーム達の寝室は耳栓だらけだった。スクリームはやつれて、またスリーピースに行った。そこで初めて恨み言を言ったんだ。そしたら、社長が本性を現した。

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でかい声出してよ。スクリームをクレーマーだの、社会不適合者だのなじりまくった。問題があると思ったらロイヤーを雇うべきだったんじゃありませんかね？って鼻で笑った。たっぷり30分は威圧恫喝した。それがトドメでさ。スクリームは、キレちまったんだよな。元保安官が、キレた。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

ものすごかったぜ。人体が人体を、あれほどまでに、さ。警報が鳴り響いて、スクリームは社長室を飛び出した。その後もものすごかった。スクリームの拳からは骨が飛び出してた。そして、最後には、4階の窓からガラスを突き破って飛び出したんだ。スクリームは入院したよ。彼は入院できた。公金でな。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

スクリームはもう壊れててさ。シーツを頭からかぶって、うるさい、うるさい、ってブツブツ言ってるんだ。1年くらい措置入院、で、すっげー寒い冬の朝に脱走した。それからずーっとこの街を徘徊してる。下水道とか、夜の学校とか、金持ちの別荘とか、静かな場所によくいるよ。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

銃と弾をどこから調達するか？ガンショップから強奪する時もあるが、大抵は支持者がプレゼントするね。スクリームにはファンがいるんだ。なにせ、地獄の悪徳スリーピースをぶっ潰したダークヒーローだからな。不動産屋に人生潰された被害者は多い。食い物や金を差し入れるやつもいるよ。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

……俺も支持者かって？おいおい、よしてくれよ。そんなワケねえだろ？支持者なんて言ったら、市長に逮捕されちまうぜ。へへ、悪いジョークさ。悪いジョークさ……。 了

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

小説「スクリーム信者との雑談」 #ツイッター小説 #このツリーの内容はフィクションです

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

テレサ・フィッシャーのことを考えると胸が痛くなる。今はホワイトフェイスって呼ばれてるんだっけ。画用紙に覗き穴開けて、顔に貼り付けてる、哀れな子。びっくりするくらい可愛かった。でもそれがあの子の呪いだった。あの子は私といる時だけ、安心してた。私がびっくりするくらいブスだったから。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

魚みたいって、よく言われる。外科的な疾患なのでは、って、真面目な顔して言うやつもいる。これでも努力はしたのよ。肌はすごく綺麗だし、首から下はハリウッドセレブにも負けない。でも、魚みたいって、よく言われる。あの子はフィッシャーだったから、つまらないジョークのネタにもなった。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

テレサ・フィッシャーは病んでたけど、良い子だった。自分の心の醜さを恥じてたし、何とかしようとしてた。あの子は被害者。ああ、あの子は今もきっと、私のことを心配してくれてる。ハイスクールで別れちゃったから、私がどんな大人になったか知らない。想像もしてない。私がこんな……。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

哀れな、トークショーの司会になってるなんて。このご面相でテレビショーの進行役だなんて。なりたくてなったわけじゃない。アルバイトで裏方をやってたら、ゲスな芸能人に目をつけられて、現代の見世物小屋みたいな番組に出演させられた。運悪く、人気が出てしまった。面白いって。個性的って。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

ものすごくブスだから、面白い。顔面の骨格が個性的。そう正直に言えばいい。結局みんな差別大好き、パワハラ大好き。そうでしょ。こんな番組を見るやつなんて、その程度でしょ。胸のばっくり開いたドレスを着て、魚みたいな顔をさらす。ゴールデンタイムに。尊厳を切り売りしてお金をもらってる。

真島文吉 @ASCIIART_NOVEL

テレサ・フィッシャーは良い子だから、こんな低劣番組は見ない。見ないはず。あの子にだけは軽蔑されたくない。あの子は私を見て自尊心を満たしていたけれど、絶対に態度には出さなかった。私たちは親友だった。それは永遠に変わらない。テレサ・フィッシャーとマーゴ・キーンズは結ばれてるの。