『とはずがたり』を読む

『とはずがたり』には光文社文庫からよい現代語訳が出ている。最初はあまり信用していなかったが、必要な情報をうまく訳文の中に入れて、古文の分かりにくいぼかした書き方をしているところをずばり補足しているが分かったので推薦したい。 『とはずがたり』の古文は和歌の文体であり、古文の達人でも現代人には難解である。うわさの性描写を目当てに読もうとしても、そんなものはない。前後のいきさつがあるだけだ。 鎌倉時代後期の皇室は御所があちこちにあるなど、予備知識が必要で、そういうのをネットで仕入れながら読む必要がある。
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Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

とはずがたり 巻5.12 yatanavi.org/text/towazu/to… ここよりや止まる/\と思へども立ち帰るべき心地もせねば、次第に参るほどに、物は履かず、足は痛くて、やはらづつ行く程に、みな人には追ひ遅れぬ。 自分を愛した男、後深草院の葬列をどこまでもどこまでも裸足で追いかける二条の姿が哀れである

2023-08-18 23:13:32
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

文章の力とはかくや。『とはずがたり』はこの一節ゆえに今も読みつがれているのであろうと思う。

2023-08-19 00:08:33
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

この一節は光文社古典新訳文庫のあとがきで教わった。翻訳自体は毀誉褒貶が激しいがあとがきだけであの本は価値がある。  古文の勉強もエロ本でと『とはずがたり』を読み始めると、その文章の難解さに跳ね返されてしまうが、この本に込められた女の情念を知ると俄然読み直してみたくなるだろう。

2023-08-19 09:05:05
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

岩波文庫校訂者の玉井幸助は、帝の側室にまでなりながら若くして宮廷から追放されたこの作者の失敗の人生に同情したか、解題で源氏物語の桐壺の更衣と比較して、息子に夭折され後ろ盾もなく、「甘やかされて育った世間知らず」「正直な人、生まれながらの自然人」だったからと弁明してやっている。

2023-08-19 10:05:28
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

愛に破れ、子もなく、キャリアも失った女、二条は、私は西行になると一念発起、出家して諸国行脚の旅に出る。人生において何も達成することのできなかったリベンジに、彼女は波乱万丈の人生をつづった本を残した。死ぬ前に自費出版に生きがいを見出す現代の高齢者たちに通ずるものがありはしないか。

2023-08-19 10:25:21
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

問はず語り_巻一 obaco.web.fc2.com/long/tohazu/to… とはずがたりの全テキストがもう一つあった。こちらは岩波文庫。

2023-08-19 21:17:03
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

この『問はず語り』全5巻を一本にしたものはこちら。 hgonzaemon.g1.xrea.com/Tohazukatari_A…

2023-08-19 21:17:31
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

帝の側室と書いたが正確には退位後なので帝の側室ではない。一方、後深草院は忌み名、諡(おくりな)で、帝から退位したあとの名前と言うわけではない。天皇であった時代も含めて後深草院なのである。これは今の天皇の呼び方とは違うので勘違いしがちである。

2023-08-20 11:15:24
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

この二条と後深草院の結婚は、本人が気付かぬうちに話が進んでしまうこと、父親が「女は従順にすべき」と初夜の忠告をすること、しかし、おぼこ娘の二条は何も気付かないこと、結局夫に抵抗してしまい乱暴に扱われてしまうことなど、モーパッサンの『女の一生』のジャンヌとそっくりなのは驚かされる。

2023-08-20 11:45:15
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

巻1 6 かくて日暮らし侍りて湯などをだに見入れ侍らざりしかば yatanavi.org/text/towazu/to… 今宵はうたて情けなくのみあたり給ひて 「あたりたまふ」は初見では分からないが、人に接するという意味か。要するに、院は初めての夜は何もせずに帰ったが次の夜は強硬手段に出たということ。

2023-08-20 11:54:11
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

とはずがたり 現代語訳 巻一1~6 : 讃岐屋一蔵の古典翻訳ブログ sanukiya.exblog.jp/25803389/

2023-08-20 17:48:45
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

岩波文庫『問はず語り』で一般の人間が通読して理解するのはほぼ不可能だと思われる。しょつぱな第二段落ひらがなの「ここのかへり」が一個の単語で「九返」だと知らなければネット検索も出来ない。そういう例が無数にあるからである。

2023-08-20 19:15:08
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

かと言って光文社古典新訳文庫の翻訳は原文にない言葉がぽんぽん放り込まれているので信用し難い。モーパッサン『女の一生』の翻訳もそうで、これでは女性翻訳者のものは「原文にはこんな事書いてないかも」と警戒してかかる必要がある。

2023-08-21 09:37:44
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

第一巻2、雪の曙(実兼)からの衣類の贈物の最初の「薄様(うすやう)八つ」は包み紙のことではないか。八つの紙に包まれていたのであろう。 「〜」とかきたる硯のふた(=盛付の台のうえ)に、はなだのうすやうに包みたる物(=果物など)ばかりすゑてまゐる(第二巻12資行が申し入れし人)。  とある。

2023-08-21 11:07:35
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『とはずがたり』は全5巻に分かれ、それはたった一つある写本に従っているが、段落分けは本によって違っている。岩波文庫は全巻通しの段落番号がついているが、他の本は各巻ごとの段落数である。光文社文庫の翻訳に至っては、どの校訂本を使ったかも書いてないので段落分けの根拠は不明である。

2023-08-21 12:29:56
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

彼女はもがくのをやめた。そして…おとなしく着物をぬがせた。彼は…手さばきも軽く、一枚一枚とじょうずにまた敏捷に、身につけたものをぬがしていった。彼女は相手の手から胴衣をひったくって、それで顔を隠し、足もとに取り捨てられた着物のなかに、真っ白な裸のまま立っていた(第二部4章末363p)。

2023-08-21 23:08:25
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

強引に事を進めたあと後深草院は二条に永遠の愛を誓ったりするが、飽くまでかたくなに無言の二条を不憫に思った院は、翌朝御所に帰るときに車に載せて一緒に連れて行くのである。その車中で、まるで今から彼女を盗み出していくかのように、院はさらに二条に愛を誓うのである(岩波文庫26p)。

2023-08-23 17:49:13
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

讃岐屋一蔵の古典翻訳ブログ sanukiya.exblog.jp とはずがたりを全訳したブログがある。

2023-08-23 18:13:36
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「平包み」(岩波文庫18p)は今の風呂敷のことで、平包みが室町時代から風呂敷と呼ばれるようになった(風呂敷のwiki)。 とすると、「紅の薄様八つ…二つ小袖など平包みにてあり」(同)は「〜などが風呂敷に包んであった」という分かりやすい意味になる。

2023-08-23 18:22:08
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『とはずがたり』は角川文庫が昭和43年の終戦記念日に最初に出て、一日遅れで岩波文庫が出たが、注も訳もなくとても読めない岩波文庫ばかりが売れたせいで、この本の怪しげな評判は広まったものの実際に読んだ人はほとんどいない状況が続いていたというわけ。

2023-08-24 13:11:05
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「さらば、などや『かかるべきぞ』ともうけたまはりて、大納言をもよく見せさせ給はざりける」(21) 院が長年の思いを告白して口説くのに対して、自分に黙って事を運んだ院をなじる二条。小さい時から院にも甘やかされて育っているので恐いもの知らずに反抗するのである。

2023-08-24 14:18:59
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「さてしも、かくては中々あしかるべきよし、大納言しきりに申して出でぬ。」(27p) 後深草院によって御所に娘が秘密の囲い者にされているのを父親が危ぶんで帰らせたということだが、「出でぬ」の前で主語が「私」に変わったのを自力で読み解くのは難しい。申し出たのかと読んでしまう。

2023-08-24 18:03:27
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

院が初日に二条に拒否されて、次の日にまた来てかき口説くのに対して、 「いまやいかがとのみおぼゆれば」(24)も分かりにくい。  そこで小学館版の久保田淳は「いさやいかが(=さあどうかしら)」に変えている。注記がないが写本をそう読むことはできるようだ。 pic.twitter.com/6oXDbWqogM

2023-08-24 18:46:53
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Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

父親の指図で自宅に帰っていたら院から 「この程にならひて、つもりぬる心地するを。とくこそまゐらめ」(27p)と言ってきた。 「この間まで親しくしてきたので、募る思いもひとしおだ、急いで戻っておいで」となりそうだが、「つもる」を久保田は「日数が積もった」と解する。岩波古語に例文あり。

2023-08-24 20:10:43
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