稲川淳二の『つぶやき怪談』(2023.09.28)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

道を一本、反対側に入ったとこにね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、その建物の話、聞いたんですけど。 市ヶ谷あたりは大学が多いんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

東京理科大とか法政大学とか、 いろいろ大学があるんです。 学生さんも多いんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その大学を卒業した連中が、 何かで会うことになって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おぉ、なつかしいなァ。 学生時代を思い出そうじゃねぇか」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って、男4人で飲みはじめたんですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

“あーだこーだ”言いながら、 ガーッと飲んで、ごきげんでね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

一軒終わって、そのまま帰ればいいんだけど、 まだみんな所帯も持ってないし、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんな若い年齢じゃないし、何か名残惜しい。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おい、じゃあ次は、あそこの店行ってみよう」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って盛りあがって、ウァーって飲んで、 また“あーだーこーだ”しゃべって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「じゃ、次はあの店行こーぜ」って。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

何軒目かの屋台で飲んでる時、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おい、お前、もう電車なくなっちゃうから帰ろうや」 って誰かが言い出して、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おう、そうだなぁ、じゃ、もう帰るか」 って話になって、帰りかけた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そして歩き始めたら、 ポツ、ポツ、ポツ、バタ、バタ、バタバタって、 雨が降り出した。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あぁ、雨降ってきたよ。 こりゃだめだ。どっかで雨宿りするか」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いや、走っていこうよ、電車に間に合わねぇから。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

走っていきゃ、そんな濡れないし、電車乗れるよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

って言った時、 4人が4人とも気がついた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ここ、どこだっけ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

酔っぱらってるせいもあるけど、 学生時代さんざん過ごした街ですから、 わからないわけがない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも方向がわからない。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おい、俺たちどこまで来ちゃったんだ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

わからない。 「いや、どこか大通りに出ればわかるんじゃねぇか」