ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション #4
「……」フジキドは答えない。ナラクはフジキドの顔を見、呆れたようにかぶりを振った。「……なんと情けない」ナラクがなじった。「戻ってみれば、早速なんたる軟弱。先が思いやられるわ」「……」フジキドは瞬きもせずナラクを見ている。その両目からは涙が溢れ、流れ落ちるがままだった。45
2011-12-07 16:29:39「バカめ!おぞましいぞフジキド!」ナラクが、心底ヘドが出る、といったていで身を震わせた。「こうしておる間にもニンジャが近づいておる!先のマズダ・ニンジャに匹敵するキンボシだ。ワシが殺す。情に流される子供はフートンで寝ておれ!」「その必要は無い」フジキドは涙を拭い立ち上がる。 46
2011-12-07 16:37:30「オヌシはもはや私の身体を操り人形にはできぬ」「試してみねばわからぬ!ワシによこせ」「ダメだ」フジキドの目にもはや涙は無く、死海めいて怜悧であった。ナラクは舌打ちした。そして姿が消えた。フジキドは己のニューロンの中に油断ならぬ憎悪の塊、赤黒い邪悪存在が再び宿った事を感じた。 47
2011-12-07 16:49:47フジキドは前方の果てしない階段を見上げた。彼が見守る中、その朽ちかかった石段のイメージは無数の0と1とに還元され、音も無く消滅した。上から降ってきた光の粒がある。フジキドは歩いてゆき、受け止めた。銀の鍵。 48
2011-12-07 17:13:11フジキドは頭上の黄金立方体を見ようとした。あの立方体には今回の銀の立方体と関係する何かがあると、ふと推測したのだ。だが彼の目に入ったのは、ストーンランタンの明かりに微かに照らされる大空洞の天井部であった。彼は辺りを見渡した。トリイ・ゲートと御影石の石碑。ちぎれたシメナワ。 49
2011-12-07 17:24:12戻ったのだ。ニンジャスレイヤーは右手の中に握られたものを確認した。銀の鍵。実在している。「……」彼は懐にそれをしまい、もう一度石碑を見た。「シルバーキー=サン?どこだ」答える声は無い。かわりに、彼のニンジャ知覚力は、はるか後方、シルバーキーとは別のニンジャ存在を感じ取った。 50
2011-12-07 17:33:40『来たわ、来おったわ』嗄れた笑い声がニューロンをさざ波めいて騒がせる。『これは……ググググ!このソウル……マイニュ・ニンジャだ。ワシの凱旋にはなかなかに似合いの首級よ。ジュー・ジツを構えい、フジキド!』(シルバーキー=サンはどこだ、感じぬか)ニンジャスレイヤーは問う。 51
2011-12-07 17:50:44『無い』ナラクは淡々と答えた。『ワシにはわからぬ。気を散らすでない。戦えい』「……」ニンジャスレイヤーは振り返った。遠方、エレベーターとつながる壁の裂け目から、着実な足取りで一人のニンジャが姿を現す。宇宙めいた暗黒の装束。歩みを止めず、拳と手のひらを合わせてアイサツした。 52
2011-12-07 17:56:22「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ザイバツ・シャドーギルドのグランドマスター、ダークドメインです」「ドーモ、はじめましてダークドメイン=サン。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはアイサツを返し、トリイをくぐって進み出た。 53
2011-12-07 17:57:58「フン、たいそうな洞穴であることよ。キョートの仲間を放り出して穴ぐら遊びとは呑気なものだ」ダークドメインは歩きながら言った。「イクサの前に貴様にひとつ教えてやろう。手土産としてな」 54
2011-12-07 18:08:17ニンジャスレイヤーはジュー・ジツを構えた。「……」「ちょうど先程、報せを受け取ってな」ダークドメインは言った。「貴様のケチな見張り屋はさっきキョートで死んだぞ。あの……タカギ・ガンドーとかいうクズ虫はな」ダークドメインは足を止め、掌を前に掲げた。「そして今、俺が貴様を殺す」 55
2011-12-07 18:13:56(第二部「キョート殺伐都市」より:「ディフュージョン・アキュミュレイション・リボーン・ディストラクション」#4 終わり。#5へ続く) 56
2011-12-07 18:18:30