未完成の理想郷12話「斬れるものと斬れないもの」

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未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「はい、サービスタイム終了!さて、美しい家族愛も見れたことですし、俺は仕事に戻りますかね、この魂をぴったりの世界にもっていかなくちゃ。」 目をぱちくりしているプティを傍目に、いそいそと帰り支度を始めるパッチ。 「さっさと出て行け、クソヤロー。」

2023-11-05 22:20:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「ひん、大人しいと思ったらこれですよぉ、心に傷を負った俺は速やかに退場します。それじゃあ、皆さん最後の試験がんばってくださいね。」 「あ、待っ……行っちゃった。それよりも…」 嵐のように通り去っていったパッチに呆然とするプティだが、それよりも身体の様子がおかしいことに気付く。

2023-11-05 22:21:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「衝動が……消えてる?」 転生者たちをこの世界から追い出さなくては、そんな使命がずっと身体の中を巡っていた。その使命に突き動かされていた衝動が消えているのだ。 「あの魂……。」 あまり接したことはないが、自分の事を思ってくれている者だということはわかる。

2023-11-05 22:22:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「プティ?」 「どうやらそんな都合の良いことが起きちゃったみたいだね。」 「憲史さん、ネクタイをほどいてください。」 「え、でも。」

2023-11-05 22:23:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「もう大丈夫だぜ?私の占いがそう告げてる。」 「あ、はい。」 スルスルっとネクタイを緩め、身動きがとれるようになったプティはスカートに付着した砂埃をぱんぱんとはたき、凛とした姿勢でみんなの方へ振り向く。

2023-11-05 22:24:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「理由があったとはいえ、私は君たちと敵対していた存在。だけど、私はみんなと一緒にいたい!今までどう君たちを追い払おうか計画を練っていた身だ、戻るなんて烏滸がましい言葉は言えない。だから、これから、これから!私を君たちの仲間に入れて貰えますか?」 「……。」

2023-11-05 22:25:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

地面にそのポニーテールが付くほど深く頭を下げる。 一瞬の沈黙のあと、誰かの笑い声がこぼれ、それが伝染するよう広がっていく。 「「「もちろん!」」」 「……ありがとう。」 頬に温かい感覚。涙が一筋零れ落ちる。 この感動的な場面を祝うかのように今まではなかった桜の花びらが辺り一面に舞う。

2023-11-05 22:26:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「わぁ、綺麗…。」 「……全く野暮だね、感動的なのはとりあえず、置いておいた方がいいみたい。」 「え?」 ほら、とプティが指を指した先は草原エリア、その中心に聳え立つ巨大な木。 いままで青々としは葉が茂っていたその大樹は、今はその葉をピンク色に染めている。

2023-11-05 22:27:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「桜は草原エリアの大樹から?どうして…。」 その壮大な桜の木から吹きすさぶ花びらはどのエリアにも届く程の範囲に広がっていく。 「大樹が桜の花を咲かすのはNONAMEの4体のボスがやられた時、そしてその姿を現す時だ。」 ゴゴゴゴッと先程空島エリアが墜落した時の比ではない程地面が揺れる。

2023-11-05 22:28:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

大樹、いや、見慣れた草原エリアを中心に森林エリアの5割程亀裂が迸り、地面が盛り上がる。 すると、地面の中から巨大な顔のような者が現れたと思うと、 「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」 その生物のような何かは、ここまで離れていても鼓膜を突き破りそうな程の雄たけびを上げる。

2023-11-05 22:29:00
未完成の理想郷(完結) @uf_arkadia

「あれが最後のボス“草原エリア”だよ!さあ、最後の試練だ!」 世界の終わりのようなその光景を見ながら、プティは勇ましく剣先を草原エリアへと向けた。 pic.twitter.com/tEqZab8bBv

2023-11-05 22:30:00
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