戦車小話~オイ車の副砲はどんな砲だった?

実態がイマイチよくわかっていない日本の重戦車「オイ車」。その副砲はなんとなーく47mm砲という説が主流になっていますが、それって妥当なの?というおはなし
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

『日本の重戦車』掲載の図では、オイ車の副砲は少なくとも一式47mm戦車砲として書かれてはいないように見えます。とは言え確かな話もまだ無さそうなので、現時点では「不明」と答えるべきかもです #マシュマロを投げ合おう marshmallow-qa.com/messages/7485d…

2023-11-23 16:14:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ええと念のため確認。オイ車の搭載砲について文字での記述は残っていないものの、しかし断面図からして主砲は96式15cm榴弾砲でほぼ確定済。しかし副砲については判断材料が乏しく推測以上のものはない。 ……というのが現時点までに分かっている所で合ってますかしら?さらに先の話って出てましたっけ

2023-11-23 16:19:15
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

オイ車の副砲について「現状では不明」というのが最も確からしい回答だというのを踏まえた上で、あえてあまり確からしくない推測もしてみましょう。といっても使えるのはこの断面図くらいです。より鮮明なものが見たい方は『日本の重戦車』をご覧くださいまし pic.twitter.com/rDweA9fglW

2023-11-23 16:33:02
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

まずおさらいとしてオイ車の主砲を見てみます。主砲まわりに寸法の記載はないものの、外観の概形は96式15cm榴弾砲のようであり、また図上の大きさも砲身長と防危板(というか揺架ですが)の長さが96式15榴のそれとよく合致しています。よってオイ車の主砲の正体にはほぼ議論の余地はありません pic.twitter.com/bsUlEOqLfK

2023-11-23 16:45:26
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

いっぽうオイ車の副砲については砲耳までしか書かれておらず、副砲塔の中の様子はわかりません。副砲の概観や砲身長がわからないので推測の材料に乏しいわけです。しかし砲塔リング径は大体分かるので、それと砲口の位置からして、搭載できる砲の全長の上限がおおよそ割り出せます pic.twitter.com/Jy1I9E0QpT

2023-11-23 16:48:28
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただまあ副砲塔の内部が書かれていないのは「そこまで具体的に決まっていなかったから空白になっている」みたいな可能性もあり、図に書かれた副砲の砲口位置なり砲身外径なりは仮置きのものでしかなかったりするかもしれません。その場合、これからのおはなしは全て無意味なものになります

2023-11-23 16:53:05
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さてまず質問のお題、94式7cm戦車砲を突っ込んだ場合。この砲は寸法的にはまったく問題なく収まる……どころかあまりにも短いので、砲口位置を図にあわせると砲耳位置が合わずに前に偏り過ぎてしまいます。砲耳前後重量バランスが崩れるのは肩当仰俯式には大変不味い。個人的には妥当でないと思います pic.twitter.com/eFDi4zKUHL

2023-11-23 16:58:58
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

次に1式47mm戦車砲の場合。こいつは長すぎちゃって砲口位置を合わせると防危板が砲塔リングに干渉する、それどころか後座した砲尾が砲塔後壁に激突するまであるので物理的に搭載不可能です。(図の砲口位置を信用していいとすれば)オイ車の副砲は1式47mm戦車砲を書いたものではない筈です pic.twitter.com/xwndFyCnHX

2023-11-23 17:02:37
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

オイ車の副砲として47mm砲説が根強い[誰によって?]のは、恐らくは砲身下に駐退復座機を配置した外観からの推測が広まったものではないかと思います。でも寸法的にはとても成立しそうもないので、これは7cm戦車砲説よりもさらに妥当ではないと考えます

2023-11-23 17:05:49
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

おっと注意書きを忘れてました。1式47mm戦車砲の防危板長、砲全長を「概算」としたのは、これらの砲についてそのへんが正確に分かる資料を持っていないので、やむを得ず側面写真を計測した数字を用いたためです。なので数cm程度の誤差は十分にあり得ます

2023-11-23 19:38:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかし1式47mm戦車砲はオイ車の副砲塔に搭載可能な限界から40cm前後の位ではみ出すと考えられるわけなので、概算に数cm程度の誤差があるとしても結論は変わりません。ごあんしんください

2023-11-23 19:43:15
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかし47mm戦車砲にはよく知られた砲身長48口径のもののほかに、新軽戦車用の47mm戦車砲(短)という35口径の試作も存在しました。これなら長さ的には問題なく収まります。でもこいつは駐退復座機を砲の左右に振り分けて配置しているので、外観からの推測とは噛み合わなくなるんですよね

2023-11-23 17:10:00
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただ駐退復座機の配置は砲の設計上の根本的に重要な部分というわけではなく、わりと軽率に移動させてしまっても構いません。なので「駐退復座機が砲身下にあるバージョンの47mm(短)」が存在していれば問題はないのですが、その説を採るとまったく未知の砲の存在を仮定することになります

2023-11-23 17:13:30
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

個人的に少しアリかなと思っているのが99式7.5cm戦車砲。砲の全長的にまったく問題なくオイ車副砲塔に搭載可能で、かつ砲耳位置も概ね一致します。まあ最終的な砲耳前後重量バランスは防盾の重量次第でもありますが、こいつは仰俯が歯弧式なので肩当式ほどバランスに敏感でないのも悪くないポイント pic.twitter.com/6WYRVZUNjr

2023-11-23 17:18:25
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ただしホイに搭載された99式7.5cm戦車砲I型は駐退復座機が砲身上にあるので、そのままではオイ車の図と一致しません。この場合もやっぱり「砲身下に駐退復座機がある未知のバージョン」の存在を仮定しなければならないという、47mm(短)と同じ問題に出くわしてしまいます

2023-11-23 17:19:50
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

また図は省きますが、1式37mm戦車砲の場合は砲口~砲耳が1252mm、砲口~防危険板末端までが1949mmなので、99式7.5cmと同様に成立します(砲耳位置はいい感じ、後方空間には余裕がある)。ただ砲身がちょっと細すぎる。37mm砲なら砲口外径は6cm少々ですが、図では外径11cmくらいあります

2023-11-23 17:27:04
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

他の砲で砲口外径に着目すると、1式47mm戦車砲は8cm弱、94式7cm戦車砲は10cm、99式7.5cm戦車砲は11cmくらい。なのでこれも99式7.5cmが一番それらしいです。でもそもそも「図では砲口外径が11cmくらい」というのはあくまで図からの採寸であって、実際そう寸法が書かれている訳ではないので注意

2023-11-23 17:34:53
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

というわけで。件の断面図から読み取れる限りではオイ車の副砲は99式7.5cm戦車砲というのが一番妥当性が高いようだと個人的には思うのですが、それでも幾らかの仮定を必要とするし、あくまで当て推量以上のものではありません。冒頭で述べたように、もし図の副砲が仮置きだったりすると根底が崩れます

2023-11-23 17:38:01
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

いけね。数字はいいんですが横棒の縮尺がズレてました。実際はこんな感じです。1式47mmは絶望的にはみ出して、99式7.5cmはかなりギリギリ(最も長い弾種でも弾薬全長505mmなので装填動作は可能ではあるが)。こうやってみると後ろの余裕が増す37mmは悪くない選択かも知れませんね pic.twitter.com/P1Z7Y9LZav

2023-11-23 20:01:58
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

もうひとつ。オイ車の任務的にはどういう副砲が適していると考えられるかという質問については、個人的には94式7cmちょっと微妙で、47mm(短)と99式75mmはそれよりは妥当ではないかしらと考えます。後二者でどちらが良いかは好みが分かれるところでしょうか

2023-11-23 17:45:34
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

といっても実際のところオイ車の具体的な立ち位置がどう考えられていたのかは正直よく把握しておりませんが。でもまあ一般的な「突破戦車」の像に当てはめると、敵の対戦車砲に耐えてながら対戦車砲や陣地を破壊できて、そしてその穴を塞ぎにきた敵の戦車も返り討ちにしたいわけです

2023-11-23 17:48:17
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

主砲の15cm榴弾砲は重築城物への火力としては最高に素晴らしいですが、対戦車用には(極端な敵の重戦車を想定しない限りは)威力過剰かつ手数不足で少々使いにくいです。もうちょっと小回りの利く対軽陣地・対戦車武装が副砲としてあると良いというのは、まあ妥当なところで

2023-11-23 17:51:40
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

その点、94式7cm戦車砲は対戦車砲潰しにはなかなか悪くない武装ではあります。近距離でも不発になりにくい低初速の榴弾が使えて、しかも弾量の割に軽くて手数が良い。しかし対戦車武装としては41年の日本軍の水準から見ても落第点でしょう。対戦車目的で新戦車に採用するようなものではありません

2023-11-23 17:58:47
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

47mmは対戦車用途には最良です。何しろ当時開発された最新の対戦車武装なのですから、その用途・その時点における一つの最適解と認識されていたと考えて差し支えないでしょう。また仮にその能力で不足する相手が現れたとしても主砲がありますし。ただし榴弾威力のほうはかなり塩っぱい事になります

2023-11-23 18:05:16
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

99式7.5cmはより榴弾威力に振ったものです。7.5cmという口径は野砲と同じですから、野戦で出くわす可能性のある軽陣地一般にそこそこ有効なことが保障されています。いっぽう対戦車能力は47mmより一回り下(遠距離ならほぼ同等~至近距離で7割)ですが、中軽戦車相手であればまあ一応足ります

2023-11-23 18:12:17