- shiratetsu18
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住人の中には彼女と同じ福岡出身の者が2人もいたりして、そいつらとの馬鹿な暮らしぶりを話すと、彼女が「シライシのアパートに行ってみたい」と言うので、学校帰りにバスで2人して降り立って連中に紹介したら、彼女はあっという間に皆から親しまれ、「順ちゃん、順ちゃん」と呼ばれるようになった。
2011-12-09 10:24:15彼女が部屋に来たといってもそれはアパートに来たぐらいの感じだったということだ。いつも皆が集まってる部屋に来て、連中の貧乏すぎる話に笑い転げたり、妹だと言い張って謎の女を部屋に泊める住人の話を興味深そうに聞いてたり、皆の飲み食いした食器を洗ったりしては門限に合わせて帰るという感じ。
2011-12-09 10:31:38僕のアパートに順子が寄ってったけど、皆と一緒にいたから僕の部屋には入らずじまいだったなんて日もあれば、僕がまだ寝てる時間からアパートに来てて、起こすと悪いからなんてことで連中の集まる部屋で遊んでたなんてこともあったか。その部屋って何だ?サロンか。ポータルサイトか。とりあえず部屋。
2011-12-09 10:48:30彼女は僕の友人らのことを他の友人らが呼ぶニックネームで呼んだ。山ちゃん、マーちゃん、恭二、なんて風に。僕だけが、苗字の呼び捨てであるところの「シライシ」で呼ばれていた。僕は彼女を「順子」と呼んでいた。友人の1人が「順ちゃん、彼女なんだからシライシって呼ぶのはどうなん?」と問うた。
2011-12-09 12:50:04順子は「シライシは最初シライシって感じだったから、シライシなん」なんて笑って答えていたか。そうだった、やっぱり彼女にとっての最初の僕は誰だか知らないけれど、シライシっていう人。シライシ君って感じじゃないからシライシ、ということだったのだろうなぁと。僕はいつから順子と呼び始めたか。
2011-12-09 13:45:00僕は最初に話してからわりと当初から順子と呼んでいた気がする。知ってるクセに「どのじゅんこ?順子?長渕剛の順子だね?」なんて話をした憶えがある。彼女は順子と呼ばれることは初めてだけど好きだと言っていた。「順子」と呼ぶとそれはそれはいい顔で振り向くのだ。「ん?なん?」なんて言うのだ。
2011-12-09 15:04:52外泊届の話はどうなった?結局泊まったのか?性的にどうなった?(笑)みたいな興味も皆にはあるのかしらん?それらは後述します。させてください。TLを汚さぬ程度に楚々と。いや僕は、あの頃を思い出しながら、当時の思いを反芻することってできるのかなぁなんて思ったので戯れに書いているのです。
2011-12-09 15:18:12僕の真っ黒140字ツイート群に目を留めていただいてる方々のみならず、当の僕自身、彼女との何を書こうとしているのか…なんて思う。僕には長いこと、作為なき人への憧れのようなものがあって、おっちょこちょいだとか天然なんて言われながらも狡猾さとは無縁の真っすぐさに魅了されてきたのだった。
2011-12-09 18:00:53彼女を初めて見た時、深い緑色のジャケットがすごく似合っていたこと、(女の子らしからず)そのポケットに両手を突っこんでいたこと、じーっと掲示板を見つめていたこと、ふくらはぎに包帯が巻かれていたこと、という多くの興味ポイントや、その容姿のみならず魅了ポイントに溢れる女の子だったのだ。
2011-12-09 18:18:13彼女をよく知らない間は興味を抱いていたこと(例えば脚に巻かれた包帯だとか)が、作為なき本人の口から語られて次々に明かされていくにつれ、僕の彼女への興味はどう変化していったのだったか。火傷はバイクのマフラーでできたものだった。知らない事がだんだん減っていき僕の思いはどう変化したか。
2011-12-09 23:28:36順子が僕の部屋に外泊届を引っさげて泊まりに来た夜のことは、正直あまり憶えていないというとブン殴られるだろうか。結論から言えばその日は何ごともなかったというか、性的な何かは執り行われなかったというか。「え?順ちゃん今夜ここに泊まり?ヒャッホーイ!」などと住人らに歓待されただけで…。
2011-12-10 02:25:03気が利くやら気が利かないやらで我がハイツの連中は、例のポータル部屋に集合し、酒やら何やらを買い込み、順ちゃんを囲む会というかなんというか。みなのアホまみれな話をきかせ笑わせていた。順子は、グラスを洗ったり目を丸くしたりケラケラ笑ったりしていた。ブカブカの僕のジャッチを穿いた姿で。
2011-12-10 02:36:44ハイツの連中らに「順ちゃんをシライシと一緒のベッドに寝せてなるものか!」というような意識があったろうか?そこまで無粋ではなかろう。だけど、その夜はそういうことはいいんじゃない?という感じだったし、順子も寮とは違う夜というものを楽しんでるようで。2人で部屋に戻ったのも明け方だった。
2011-12-10 09:09:53明け方であろうがまだ夜だ。明けるまでの暗がりはまだ夜だ。ですからここはひとつ…なんてほどに性的な何かに執着していなかったのか眠かったのか、僕は順子に何をするでもなく寝てしまったような記憶がある。多分あの子はユニットバスの中で1人ゴシゴシと下着を洗ってるみたいだから先に寝たような。
2011-12-10 09:40:14おまえ彼女が工作までして部屋に初めて泊まりに来てんのになに寝てんだよ、四半世紀前から草食か、若き血潮はたぎってないのか、余裕ぶっこいてんじゃねーよとお嘆きの諸兄に告ぐ。タワケが!草食なんて概念は当時にはあらぬわ!むしろ好色ですわ。身体ともに健康な男子どころか猛々しかったと言える。
2011-12-10 09:53:21ではなぜに僕が先に寝たのか。あのね、彼女はね、順子はね、多分ですけどね、その時まで男性と一緒のベッドに寝たことがなかったんですよね。それは彼女から聞いていたし、ユニットバスからなかなか出てこないあたりにもなんていうか、コトに臨む際の作法もわからず…なんて彼女の緊張が伝わるわけで。
2011-12-10 10:01:06人によって様々だとは思うが、そういったジリジリとした想いの絡み合いの時期こそが恋愛の醍醐味たる時期じゃないのかね?自分が相手に受け入れられるのかどうか?こう言うとどうなるのだろう?こんな事を言ったりやったりすると怒るかな?とか。彼女の期待と困惑がドア越しに聞こえてくる音に交じる。
2011-12-10 10:10:29「洗濯し終わったらシライシはもう寝てた」ら、あの子はどうすんのかな?なんて興味もあったかもしれない。我ながら意地悪だ。次に目を覚ましたのはしばらくの後だったが、何かの気配を感じてのものだったように思う。人の気配。順子の気配。ふと見ると、順子は座って僕の寝顔を見ていた。まっすぐに。
2011-12-10 10:28:35しつこいが改めて記憶の時間をさかのぼる。初めて彼女をみたのは肌寒さの残るキャンパスの掲示板の前。深い緑色のジャケットで両手をポケットに突っ込んで掲示に見入る後ろ姿。長い髪。背は高め。ふくらはぎに包帯。学内によくいるタイプの女の子とはちょっと違う、異端の匂い。奔放な感じすらあって。
2011-12-10 10:36:25名前を知った。クラスも知った。だけどなかなか予測のつかない子で、掴みどころのないところがあって。あの時の彼女がこうして寝てる僕の傍でじっと寝顔を見てるなんてどういうことよ。こういう感慨というのは、今思い返してるからであって、当時は持ち得なかったものなのだろう。万事順調です!的な。
2011-12-10 10:52:06あの子いいな。容姿が好み。髪がサラサラだ。緑色が似合ってるなぁ。ちょっと猫背?どこの学部?学科?1人暮らしかな?お金持ちの子?どんな声だろう?どんな匂いがするのかな?音楽なに聴くのかな?恋人いるのかな?僕の手に負える?なんて思ってた時期をとうに過ぎて、?が次々と明かされてきてて。
2011-12-10 11:02:32興味とは、関心とは、いまだ知り得ぬものにのみ向けられるのか。知り得たものに向けられる感慨はいかばかりか。恋愛とは何か。不確定を確定していく道のりに過ぎないのか。素敵だけどちょっと手に負えないんじゃないの?なんて相手がまっすぐに自分を受け容れてくれたら、その先にある感情は何なのか?
2011-12-10 11:13:54「ねぇ順子、実家に雨戸ってついてた?ここさ、学生ハイツなのに雨戸がついてんのよ。ほれ、西日本って雨戸閉めんよなぁ?だけど、こうやって閉めたら朝でも昼でも一発で夜になるのよ、あはは…」なんて言いながら闇を取り戻す。コンポステレオの表示パネルだけが灯りを放つ。カセットが反転して静寂。
2011-12-10 13:33:34サザンオールスターズは当時の大学生に人気のあるバンドだったのだけれど、僕の学校ではとりわけ人気があったのではなかろうか。順子はサザンが大好きでカセットのみで発売されたベストだとかをいつも持ち歩いて聴いていたし、僕の部屋でもいつも自分でカセットを突っこんで流すのがお気に入りだった。
2011-12-10 13:47:08今でもはっきり憶えているのはあの時にかかっていたサザンの数曲。『わすれじのレイド・バック』『My Foreplay Music』『お願いD.J.』あたり。順子が僕のジャッチをするっと脱いでベッドに入ろうとした時の脚の白さに息をのんだ。火傷の癒えた跡と。『栞のテーマ』が流れていた。
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