- motoyaKITO
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日本各地を旅をしながら廃墟、ひなびた風景、不思議な伝承など「人の生きた記憶」を記録・著作しています。廃墟/路地裏/街並み/建築/旅館/医療/民俗学/たまーにポトレ。 調査・原稿依頼など連絡はDM/メールから:polaris453121@gmail.com)fantia.jp/fanclubs/34782
・鬼太郎 地名の謎 鬼太郎の新作映画を見て思い出したが、かつて私は「鬼太郎」という名の土地に行ったことがある。四国は徳島を旅行中、地図に「鬼太郎」という地名が出てどうしても気になって訪問した。ゲゲゲの鬼太郎とは関係ないと思うが…読み方も由来もどんな場所かも気になってねぇ…(続) pic.twitter.com/0VCxAjmOXv
2023-12-06 20:07:59地図によれば、その鬼太郎という場所は徳島県阿南市の田園地帯にある。実際に行ってみると、「鬼太郎」という名から連想するような妖しい土地ではなく、山裾のどんづまりながらかなり開放的な雰囲気の農村だった。面積は小さく、別の県ならはるか昔に消滅していてもおかしくない小字地名だ。 pic.twitter.com/jWdzp6HlUs
2023-12-06 20:12:48地名の読みは「おにたろう」
まずは地名の読み方だ。「きたろう」なのか「おにたろう」なのか…超気になる。ちょうどよく畑で草刈りをしていたお婆さんがいたので声をかけると、読み方は「おにたろう」であるとのことだった。そして、今実際に鬼太郎に住んでいる人はもう誰もおらず、空き家しかないというのだ…。 pic.twitter.com/FgIgLcsFHd
2023-12-06 20:16:30その日は祭り
お婆さんはすぐ隣の地区に住んでるそうだが、「私は嫁に来たけん、名前の由来は…わからん」とのことだった。もう80歳を過ぎてそうな方で、正直この人でもわからないとなるとこれはもう誰もわからないだろうな…と思ったが、「今日から祭りじゃけえ、神社におるもんに訊いてみい」と教えてくれた。 pic.twitter.com/haX46Pi4iE
2023-12-06 20:19:13その頃はちょうど四国では秋祭りの時期だった。お婆さんに言われた通り、鬼太郎から少し下流にある神社へ向かうと、境内には旗と山車が並んでいた。社殿の中では祭の準備が進んでいる。阿南市一帯は大阪文化の影響でだんじりを曳く形の祭が今でも伝承されていて、本祭の日はそれはそれは賑やかだとか。 pic.twitter.com/6pQSXYUrVX
2023-12-06 20:21:48地名の由来は失伝
社殿内で掃除をしていた男性(50代くらい)に訊いてみるもわからず、近所の方にも訊ねてまわったが、いづれも鬼太郎の由来は首を傾げるばかりだった。特にこの祭り旗を掲げた家のご夫婦(70代くらい)は「そういうのわかる人は皆もう亡くなっちゃったよ…訊いときゃよかったなあ」と残念そうだった。 pic.twitter.com/ZG8vgNy21Q
2023-12-06 20:25:26どうやらこの土地の古い記憶も一つ一つお墓の下へ行って久しいようだ。こうした地元の郷土誌にも記載されないようなちょっとした伝承記録は、それを知るお年寄りが亡くなれば完全に失伝してしまう。この手の話が好きで旅をしている身としては「訊きに来るの…また遅かった」とひとり無念に包まれる…。 pic.twitter.com/Co1BXQzfNl
2023-12-06 20:29:26「そんなの残して何か役に立つの?」と言われたらそれまでだけど…そうじゃないんだよ(無念) この鬼太郎にも何か不思議な伝承や由来があったのかもなあ…でももう誰もわからない、想像するしかない。というわけでゲゲゲとは関係がない「鬼太郎(おにたろう)」の由来について少し考察してみましょう。 pic.twitter.com/Oh0crvCGYl
2023-12-06 20:33:58この手の風土記的な話は、その土地の人が居なくなると、そのまま消えてしまうんだよな。で、住んでる人は日常なので、そこまで地元には興味が無かったりする。なので、ヨソの人がこうして話を蒐集して回る事には意味があるのだが…。 twitter.com/North_ern2/sta…
2023-12-06 20:37:27由来の考察
他の地方に鬼太郎とつく地名がないのか探すと、福島県に「鬼太郎山(おにたろうやま)」、熊本県西原村に「鬼太郎(おにたろう)」がかつてあったことに辿り着いた。前者は今もあるが、後者は地番整理で「鬼山」に統合され、その鬼山も今では消滅している。いづれも由来は調べる限り不明だった…ぐぬぬ。 pic.twitter.com/eh4NN9bcBf
2023-12-06 20:41:08では他に鬼太郎という名が昔使われてなかったかを探すと、武将の幼名や「力がとても強い者」「反抗する者」の別称とした例があった。例えば岐阜県願興寺の古文書(御嵩町史収録)にはかつて付近を荒らした賊の頭領を鬼太郎とし、戊辰戦争で活躍した仙台藩士鮎貝盛房は薩長兵から鬼太郎と呼ばれたとか。
2023-12-06 20:46:20また、石川県の小松市本江町にはかつて「鬼太郎平(おにたろうだいら)」という地名があって、こちらは由来もわかっている。「大岩や巨木を持ち上げて平気なほど力がとても強い”鬼太郎”という者がいた場所。彼はかつて村境を決める時もその金剛力で活躍した」という伝承がある(力比べでもしたんか?)
2023-12-06 20:51:46昔から鬼は異端者の言い換えに使われた概念だ。この徳島県の鬼太郎にも、そういった「力の強い者」「言うこときかないやつ」がいたのだろうか。あるいは「奥の垂る(奥側の水はけの悪い所)」が「おにたろう」に音が変化したとか、「太郎丸」「次郎丸」地名のように土地相続の名残とも解釈できる。 pic.twitter.com/9vztEp53WB
2023-12-06 20:58:43いづれにせよ、どれだけ類推しても鬼太郎の由来はもう誰もわからないのだ。ゲゲゲの鬼太郎の新作映画では終盤「伝え残すこと」の大切さを説くシーンがあるが、水木翁は日本民俗学会の名誉会員でもあり、スタッフさんも翁への敬意をあのシーンに込めたのかもなあって私は思います… 鬼太郎の謎・おわり pic.twitter.com/O2dPNaJ7sy
2023-12-06 21:08:22