戦車小話~T-35重戦車はどうしてああなったの?

戦車趣味の方なら多分だいたい知っているT-35重戦車。でも実際どういう想定のもとにああいうものが生まれたのかと言われると、案外よくわかりませんわよねというおはなし
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

最近はむしろ「敵の基幹対戦車装備に満足に耐えられないような装甲しかない『不完全な突破戦車』は一体どんな説得力によって生まれ得たのか」が気になっております。「あほだったから」ではないはずで pic.twitter.com/V9YEk2G47T

2023-12-13 22:20:26
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

これは最初からこうだった訳ではなくて、元々は真っ当な装甲を持つ突破戦車を目指してはいたのです。にも拘わらずその理想から外れた中途半端な代物がどうして許されてしまったのか、そこにはどんな説明や言い訳があったのか、大変興味深いのです

2023-12-13 22:35:27
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

「何故?」「あほだったから」はそれを言った瞬間に森羅万象に説明がついてしまうんで面白くないんですよね。勿論実際にあほだったからの場合もあるとしても……

2023-12-13 22:45:39
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

なお私自身についての大抵のことは「あほだったから」で説明することができます

2023-12-13 22:47:14
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

なおT-28については「37mm対戦車砲に距離750mで耐える」というのが開発当初の要求でした。T-35の装甲厚はそれと同等なので、防御設定も同様だったと言えそうではあるんですが……。でも「要塞突破戦車」なのに遠距離でしか耐えられない想定でいい、とはどういう事なのか説明が欲しいところ

2023-12-14 10:36:34
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

37mm対戦車砲って戦車の防御力設定を考える上で大変面白いんですよね。実は至近距離ではかなり強力だけど、小口径故に距離が開くと急速に威力が落ちる。なので遠距離限定なら25~30mmくらいの装甲厚でも足りるのに、全距離完全防御には50~60mmが必要になる。一口に「対37mm防御」といっても幅が超広い pic.twitter.com/BtPWcPkeBK

2023-12-14 10:42:53
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そういうわけなので戦間期の戦車の30mmくらいの装甲というのは、実は後年のイメージほどには無力なものでもないわけです。安全距離だけ見れば長砲身76mm対戦車砲クラスが一般化した年代における100mm級装甲なんかと相対的に同じこと……と書いてみると、なんだか急にイケてるような気がしてきません?

2023-12-14 11:24:44
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

まあこれは大変恣意的な書き方ではあるし、実際には遠距離限定という前提はハマらなかったりとかするわけですが

2023-12-14 11:32:28
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

37mm級対戦車砲の各国での採用と普及の時期……そうか。確かに3.7cm Tak28は1928年に現れてはいるけれど、ソ連がそれを採用するのは31年。仏25mmが34年。日本の94式と英国2ポンドが36年、アメリカに至っては38年です。小口径高初速対戦車砲は30年代初頭だと「まだウチしか持ってない新兵器」なのね pic.twitter.com/FYSlT00BrI

2023-12-14 18:02:24
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

もちろん小口径対戦車砲の普及以前には対戦車装備が存在しなかったなんてことは全くなくて、75mm野砲級は強力無比な事実上の対戦車砲として第一次大戦中から存在しました。他にも短砲身の歩兵砲とか、低初速37mmの機関銃破壊砲クラスも一応使える。そういうものは既に各国に広まってはいた……けれど pic.twitter.com/DU2LQGWfiN

2023-12-14 18:05:59
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

このうち野砲(野戦カノン)は大変強力なので、それに耐えることを前提とするような戦車は実現難易度が大変高い。なのでそれに対する防御はほとんどの場合で端から諦めるしかなく、現実的に考慮できる既存の脅威は歩兵砲・機関銃破壊砲クラスしかないということになりますか

2023-12-14 18:09:32
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

30mm程度の装甲でも機関銃破壊砲クラスは完封でき、また歩兵砲級も至近距離以外ならなんとかなる。新兵器たる小口径高初速対戦車砲には分が悪いけれど普及はまだまだこれから。野砲には無力だけど実際的には扱いにくい「重対戦車砲」なので遍在する脅威とは言えない……みたいな状況があった訳ですか

2023-12-14 18:18:38
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

30年代初頭時点での37mm対戦車砲遠距離限定防御というのは、その時点で正に必要なものというより、「現時点では必要十分&近い将来でもまあまあ戦えるかも」くらいの設定になるのかしらね。そう考えるとまあ特段奇妙な考えではないような気もしてきました

2023-12-14 18:22:53
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

Tak28が28年に現れたからといって、別にその瞬間に世界の対戦車装備が一挙に更新された訳ではなし。30年代初頭だとそもそも小口径対戦車砲という方向性は「登場したばかりで満足に検証されていない新奇な兵器ジャンル」でさえあったかも知れません。その普及を確定路線として捉えるべきではないのかも

2023-12-14 18:28:27
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

大戦期の頭で見ると37mm対戦車砲は小さく軽い大砲ですが、でも30年代頭頃の常識からすれば37mm級対戦車砲は「嫌んなっちまうくらい重すぎる代物」という扱いでしたし。手軽ではないのでそこまで広まらないかもしれない、という期待だって存在してもいいのかもしれない

2023-12-14 18:35:47
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

hmmm... 戦間期の戦車を考えるとき、後年のことを知っているのがむしろ邪魔になる感じですわねえ。大戦期脳を一旦取り外して考えるべきなんでしょうね

2023-12-14 18:41:37
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

あと装甲から見れば野戦カノンは強力すぎて対処不能な相手と開き直るしかないといっても、装甲以外での対処は考え得るんですよね。野砲はその大きさの関係で防盾の重防御化が難しいので、せいぜい4mm厚の小銃普通弾対応くらい。これだと機関銃の徹甲弾なら1000m辺りでさえ抜き得る

2023-12-14 18:46:41
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

また第一次大戦の戦訓として、対戦車砲転用された野砲は大変強力ではあるもののデカくて隠しにくく的になりやすい、重すぎて戦闘中は動かせない、発射速度が十分でない、旋回範囲が狭く同目標対処が苦手といった話が出てきます。威力以外のところは理想的対戦車砲とは程遠い代物だったわけです

2023-12-14 19:00:42
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

つまり野砲の防盾は実際的な距離ではだいたい抜けるので、問題はむしろ見つけて当てられるかどうかになり、そして野砲はその点に弱みが多い。そう思うと、「人間の目と機関銃を多く備えた戦車は野砲と首尾よく戦える可能性が高い」という考えを導き出すのも無理ではないような気はします

2023-12-14 19:05:57
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

野砲対戦車装備としては強力だけど先述のように不向きでもあり、成功と同時に全滅するような高くつく手段でした。そして野砲本来の仕事は別のところにあるので、そんなところで消耗したくはない。戦間期のおはなしでは「次の戦争ではこんなことは許されない」なんて書かれている例さえあります

2023-12-14 19:19:25
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

これからの野砲がそれを踏まえて使われるのなら、戦車側から見れば野砲との直接戦闘は「場合によってはあるかもしれない」くらいのものと考えてもいいのかも知れません。野砲にとっての対戦車戦闘が稀な緊急事態であるのと同様に、戦車にとっても稀な緊急事態であると

2023-12-14 19:23:46
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

であれば戦車にとっての野砲対策は完全優位まで備えさせる必要性は薄く、万一起きても一応無策ではないよと言える程度の対策でいいのかも知れません。そして多数の機関銃装備はそこに数えてもいいのかも、と

2023-12-14 19:27:21
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

あと戦間期の重戦車には大きさが「必要とされる」という面もあるんですよね。第一次大戦めいた陣地戦や巨大な対戦車壕が想定されるので、低い接地圧と超壕・超堤のための大きな車体が必要になる。後年の戦車のように必要なものを詰める為にサイズが決まるんでなく、先にサイズありきの考えもあり得る

2023-12-14 19:59:26
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

しかしこの方向性を選ぶと、KVやマチルダみたいにサイズを抑えて装甲面積を縮小して重装甲化するスタイルは難しくなります。装甲によって身を守るのは難しいけど、でもデカいので空間的余裕はあるなんて戦車が出来てしまう。それなら無意味に空気を運ぶより武装を増やしたほうがまだマシかも、とか

2023-12-14 20:05:29
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

みたいなことをぐにゃぐにゃ考えているのですが。でもそういう推測に繋げられるような当時のおはなしはあっても、「実際T-35はこういう考えのもとにああなりました」という具体的なおはなしまでは見つけておりません。あくまで繋がり「そう」なだけ

2023-12-14 19:44:12