新しい楽器:14.椅子

単著『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』(ナカニシヤ、2023年)(https://www.nakanishiya.co.jp/book/b10044931.html)の宣伝を兼ねてはじめた「新しい楽器」という読み物です。
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nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

14.椅子:『サウンド・アートとは何か』という本の宣伝かつ次の動きとして「新しい楽器」について書いています。書店発売日は1227。よろしくお願いします。今日は椅子という楽器について。椅子は座られてこそ意味のある道具でもあるし、参加型椅子作品についても少し。 nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2023-12-22 12:48:02
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

椅子は良いものを使うべきです。僕は20代の頃から年に1,2回ギックリ腰をするようになり、卒業論文をコタツで書いた頃、決定的に腰をダメにしました。20代はだましだまし過ごし、30代に「高価な椅子」を使いはじめ、それ以来、ぎっくり腰は数年に1回に。椅子は大事。|DUOREST- duorest.jp

2023-12-22 12:48:03
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

また、僕はドラムセットを演奏してきたのですが、ドラムセットは、ドラム椅子に座りながら、両手両足を(できるだけ)バラバラに動かしながら演奏します。体幹の中心を椅子に乗せて、体がズレないように両手両足を動かすわけです。

2023-12-22 12:48:04
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

椅子が安定していることは当然として、バスドラムを叩くフットペダルとの位置調整とか高さの調整が大事です。椅子は大事。 |ドラム 椅子 通販|サウンドハウス soundhouse.co.jp/search/index?s…

2023-12-22 12:48:04
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

そんなにも大切で重要なものなので、当然、椅子は素晴らしい楽器にもなります。文化的に重要なものは、なんでも新しい楽器になるものなのです。例えば、ジョージ・ブレクト《インシデンタル・ミュージック》(1961)。|George Brecht. Incidental Music. 1961 | MoMA moma.org/collection/wor…

2023-12-22 12:48:05
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

次のような指示のあるワード・スコアです。「5つのピアノ作品。5つが、連続して、あるいは同時に、あるいは、それぞれもしくは他の作品と、どんな順番でどんな組み合わせで演奏されてもかまわない。 1.ピアノ椅子を傾け、ピアノの一部にもたれかけさせる。(つづく)

2023-12-22 12:48:06
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

2.木片を用いる。一つはピアノの中に置かれる。その上に木片が置かれ、3つ目は2つ目の上に、と、順番に一つずつ置かれる。少なくとも一つの木片がその段から落ちるまで続ける。 3.ピアノがある風景を写真撮影する。(つづく)

2023-12-22 12:48:07
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

4.3つのインゲン豆かソラ豆を一つずつ鍵盤の上に落とす。鍵盤の上に残ったそれぞれの豆は、豆が残っている場所の鍵もしくは最も近い鍵に、テープで貼り付ける。 5.ピアノ椅子を上手く配置して、パフォーマーはそこに座る。」 以上です。

2023-12-22 12:48:08
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

椅子をピアノに持たれかけさせたりする時、パフォーマーは音を出そうとするわけではないけど、でも、そこには常に付随的な音(=incidental sound)が発生している。そういう発想のうかがえる、拡大された音楽的素材を使うフルクサスの「イベント」作品です。

2023-12-22 12:48:08
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

こういう発想の源泉は、ジョン・ケージが自分の《Theatre Piece》(1960)について述べた次のような意識です。いわく 「演奏者は自分の行なうことを行なう。しかし音を出さずに行為することは出来ない。」|John Cage: THEATRE PIECE (1960) - YouTube youtube.com/watch?v=xQEdKj…

2023-12-22 12:48:10
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

このincidental soundの使用は20世紀アメリカ実験音楽における「音楽的素材の拡大」という戦略を採用する系譜に位置付けられます。「音楽的素材の拡大という戦略の系譜」は興味深い系譜ですが、とはいえ、ともあれ。少し話を戻して。椅子を使う作品の話です。

2023-12-22 12:48:11
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ラ・モンテ・ヤングの《Poem for Chairs, Tables, Benches, Etc. (Or Other Sound Sources)》(1960)も椅子を使います。 moma.org/collection

2023-12-22 12:48:12
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

詳細不明ながら、ラ・モンテ・ヤングの準備したスコアを用いて、演奏用スコアを制作する、というタイプの作品のようです。 |Poem: for chairs, tables, benches, etc. (LaMonte Young) - Nadar Summer Academy 2020 - YouTube youtube.com/watch?v=Ea8Zxe…

2023-12-22 12:48:12
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

椅子を押して動かしています。床が痛みそうな気もしますが、なかなか芳醇なドローン音が出ているような気もします。|Poem for Chairs, Tables, Benches, etc. | Luisa Greenfield luisagreenfield.com/poem

2023-12-22 12:48:13
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

椅子というのは、押して動かすだけでなく、そこに座ることもできます。椅子に座ると、そこで落ち着いて色々な作業をすることができます(このツイートを作成している僕も、今は椅子に座っています)。

2023-12-22 12:48:14
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

例えば、椅子に座ると、頭を抱えたり、落ち着いて音を聴くことができます。こちら、有名な作品です。|ローリー・アンダーソン[Laurie Anderson]《ハンドフォン・テーブル[Handphone Table]》(1978)ntticc.or.jp/ja/archive/wor…

2023-12-22 12:48:15
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

観客は椅子に座ってテーブルに向かうと、机の上に窪んだ箇所がふたつあることに気づきます。で、ちょうど良い距離なので、そこにヒジをついて両手で頭を抱え込む姿勢を取ります。すると、耳をおおう掌に振動が伝わってきて、骨伝導で耳に振動が伝わるので、音響知覚が生じる。これはそういう作品です。

2023-12-22 12:48:16
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

聞こえてくるのは17世紀の詩人の詩をローリー・アンダーソンが朗読したものなんですが、そのことを知らずに経験しても十分新鮮です。

2023-12-22 12:48:16
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

インスタレーション作品に自分の身体を設置すると音響知覚が生じるという体験は、通常の音響知覚/聴覚経験とは違う経験で、新しい身体の使い方を教えられるかのようで、刺激的です。ただ、これは椅子の作品というより机の作品かもしれませんが。

2023-12-22 12:48:17
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

あるいは、ベルンハルト・ライトナー《サウンド・チェア》(1976)というものもあります。これは、複数のスピーカーの取り付けられた椅子に鑑賞者が座ると、音響が聴こえてくる、という作品です。ドイツで経験したのですが、固くて座りにくかったです。|bernhardleitner.at/works/indexLoa…

2023-12-22 12:48:18
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

「Soundings」展(MoMA, NY、2013年)には、セルゲイ・チュレプニン《Motor-Matter Bench》(2013)という作品がありました。展示会場手前に設置されていたベンチだったのですが、中川が展覧会に行った時は、壊れていて、ただのベンチでした。何も聞こえなかった。|SOUNDINGS moma.org/interactives/e…

2023-12-22 12:48:19
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

また、日本のevalaさんがシナスタジアラボに協力し、Media Ambition Tokyo 2021で展示された《Synesthesia X1 - 2.44 波象(Hazo)》(2021)というものもあります。

2023-12-22 12:48:20
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

これは、44個の振動子(あるいはスピーカー)から作られている椅子で、その椅子に座り(というか寝転び)、真っ暗闇の中で44個のスピーカーから振動を感受して、全身で聴くものでした。

2023-12-22 12:48:20
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

神戸から新幹線で東京に行ったその日のうちに疲れた体で体験したところ、至福の体験でした。言い方がアレかもしれませんが、極上のマッサージチェアでもありました。|シナスタジアX1 - 2.44 波象(Hazo) | Media Ambition Tokyo 2021 mediaambitiontokyo.jp/art/synesthesi…

2023-12-22 12:48:21