新しい楽器:10.イントナルモーリの復元について
- nakagawa09
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以前、イントナルモーリについて紹介した時、この動画で用いられているイントナルモーリはどこにある?という質問を受けたことがあります。その際にちょっと調べたことをメモしておきます。|Luigi Russolo, Intonarumoris, 1913 - YouTube youtube.com/watch?v=BYPXAo…
2023-12-02 15:46:41(1) YouTubeのキャプションには「2012 exhibition at Lisbon’s Museu Coleção Berardo」とあり、ポルトガルのベラルド現代近代美術館 (Museu Coleção Berardo)で2012年に展示されたもののようだが、「Museu Coleção Berardo intonarumori」と検索しても確証が得られない…。
2023-12-02 15:46:43(2) 英語版Wikipediaの「Intonarumori」の「Intonarumori reconstruction」という部分の説明によると、ルッソロの手になるスケッチなどに基づいて復元されたイントナルモーリたちは三セットあるらしい。 1.イタリア未来派100周年を記念してSFMoMAなどが協賛して2009年辺りに作られたもの
2023-12-02 15:46:442.「雑音の芸術」100周年を記念してカーネギーメロン大学などが協賛して2013年辺りに作られたもの 3.オランダのサウンド・アーティストのWessel Westerveldという人が作ったもの
2023-12-02 15:46:44近年のルッソロ研究として参照すべきChessa, Luciano. 2012. Luigi Russolo, Futurist: Noise, Visual Arts, and the Occult. University of California Press.によると、1は、Luciano Chessaがグラントをとって調査研究したうえで復元作業を行ったものとのこと(Chessa 2012: 275 ch9のn35)。
2023-12-02 15:46:45動画のやつもそう。2と3がダメということでもなさそう。どちらも詳細不明。3はオランダ語の情報しか見つけられないけど、これなどしっかりした造りで復元しているみたいで、面白そう。
2023-12-02 15:46:46(3) Wikipediaに書かれていないものもたくさんある。 秋山邦晴が復元したことで日本では有名な多摩美のイントナルモーリもそう。というか、一台だけ復元した事例はWikipediaに記載しきれないほど多い、ということかもしれない。
2023-12-02 15:46:47たぶん一番流通しているルッソロ《都市の目覚め》の録音物は、1977年のヴェニス・ビエンナーレの際に復元されたイントナルモーリを使って、1978年にDaniel Lombardiというひとが収録したもの(と、ライナーノーツに書いてあったけど、spotifyのリンク先では1977年と書いてあるな…)。
2023-12-02 15:46:471の復元をしたLuciano Chessaも、Pietro Verardoなる人物による復元ヴァージョンを参照した、と述べている。
2023-12-02 15:46:48(4) なので、上記動画のイントナルモーリは、おそらくLuciano Chessaという、ルッソロ研究の著作もある音楽家が復元したものだと思うが、確証はない。本人に聞くのが一番早い/速い案件だろうな。 :Luciano Chessa website lucianochessa.com
2023-12-02 15:46:49最後に宣伝。『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』というタイトルでナカニシヤから本が出ます! サウンド・アートと呼ばれるタイプの視覚美術と音楽とメディア・アートとサウンド・インスタレーションについて、その歴史をまとめています。よろしくお願いします。
2023-12-02 15:46:50このイントナルモーリの復元のことは、第二章の脚注に含めています。また、こちらにもまとめてあります:I am alive.: メモ:再制作されたイントナルモーリについて after34.blogspot.com/2022/11/blog-p…
2023-12-02 15:46:50新たに作られたけれどもその後大衆に一般化していない(しなかった)音響生産装置を「創作楽器」と呼ぶとすれば、創作楽器には、一般化することによってその固有性が薄まればその意義が薄れる、というある種のジレンマがあると言えるかもしれない。といったことを、第三章には書きました。
2023-12-02 15:46:51この「創作楽器のジレンマ」ということについて最初に書いたのはけっこう昔で、ジョン・ケージのプリペアド・ピアノと鈴木昭男さんのアナラポスのことを考えたときでした。|Audible Culture - 2011年09月 楽器の運命―創作楽器の場合 sites.google.com/site/audiblecu…
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