掌小説語り~自作つぃのべる集~97

自作つぃのべるのまとめです。 2021年5月分。
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リュカ @ryuka511

あっけなく朝が来たね 昨夜の嘆きも覚悟もなかったみたいに穏やかな朝。君の横顔はとても綺麗で、このまま永遠に見つめていたかった。私達を許さない世界に嘆き、こんな世界から消えようと決めたのに。なぜ私はまだ生きている? 私の覚悟は偽物だというのか? 君を独りにはしない。今行くから #twnovel

2021-05-02 00:24:43
リュカ @ryuka511

人が信じる神など、人が作り上げた幻想だ。良く言えば理想や希望、悪く言えば妄想や現実逃避の具現化だ。そんなものを神と崇め救いを求め、ある時は争いの種をまく。人が作り上げたものが人を超える力を持つ事は無い。神は神としてただ在り、人なぞに干渉しないのだ。愚か者よ、と神は嗤った #twnovel

2021-05-03 00:54:04
リュカ @ryuka511

「明日は死神が来るよ」そう言うとママに怒られた。「子供の言う事ですから」っておじいちゃんに謝ってる。違うよ。死神が迎えに来るのは、お医者さんに貰ったおじいちゃんのお薬を、違うお薬に取り替えてるママの方だよ。おじいちゃんは片目をつむって笑った。おじいちゃんにはわかるんだね #twnovel

2021-05-03 23:36:16
リュカ @ryuka511

「戦場に、行ってしまうの?」震える君の手をそっと握り、静かに深呼吸する。「行かないよ」「でも、命令なのでしょう?」「君を残して行けない。明日の朝、迎えに来るから。ずっと、君と一緒だよ」兵役は貴族の義務だ。貴族の子に自由などない。夢をありがとう。君はどうか、自由で幸せに。 #twnovel

2021-05-05 00:27:44
リュカ @ryuka511

お嬢様が生まれた時に雇われ、以来お嬢様の成長を見守ってきた。読み書きも私が教えたのだ。お嬢様は私を慕ってくれた。だがついに、私の役目が終わる。学校へあがるお嬢様に、ベビーシッターは不要だ。旧型の私は廃棄処分が決まった。私の眼から落ちたのは記憶と悲しみというものだろうか #twnovel

2021-05-06 00:37:51
リュカ @ryuka511

生きる世界が違うと身を引こうとしていた。なのに貴方は「必ず迎えに来ると約束する」と告げた。あの時の貴方は、確かに本気だったのだろう。だけどあれから十数年、貴方は来ない。果たせないなら約束などしないでほしかった。この地獄のような地で、遠い約束にすがりついて、今日を生きてる #twnovel

2021-05-07 00:27:22
リュカ @ryuka511

クラスでいじめられている奴がいる。だけど僕はわざと何も見ていなかった。担任に聞かれても「知らない」と答えた。だってあいつは、かつて僕をいじめて楽しんでいた奴だ。殺すぐらいじゃ済まないほど憎い。何であいつが標的になったか解らないけど、僕があいつを助ける道理なんか無いだろう?#twnovel

2021-05-07 23:08:01
リュカ @ryuka511

青と水色の色鉛筆がなくなったから、赤とオレンジで空を描いた。きれいな夕焼けが描けたと思ったのに、みんなが僕の絵と僕のことも「怖い」って言った。空は青いだけじゃないのに、どうしてだろう。僕は絵を描くのをやめた。なくなった色を買い足しても、僕の絵はきっと怖がられるに違いない #twnovel

2021-05-08 23:34:33
リュカ @ryuka511

あの人の隣に、私の知らない綺麗な人。お似合いの二人だから、お幸せにって、鏡の前で笑顔の練習をする。決して永遠の別れじゃない。けど、あの人が決して私のものにはならない事実を、目の当たりにするのは悲しい。天気予報は晴れだけど、明日は雨だといいな。雨の中なら涙をごまかせるから #twnovel

2021-05-09 23:45:11
リュカ @ryuka511

生まれた時から守ってくれた彼が、とうとう私から離れていく。旧型の彼は不具合が頻発し修理の部品ももう存在せず、廃棄処分するしかなかった。彼にも解っていたのだろう。その日、彼は変わらない声でこう言った。「あなたを忘れることを許してくださいますか?」頷くかわりに彼を抱きしめる #twnovel

2021-05-11 00:41:47
リュカ @ryuka511

村を守る為に、毎年山の神へ生贄を差し出している。大人達は何の疑いも持たずこの儀式を続け、今年きみを生贄に選んだ。村を守る神が生贄を求めるなんておかしいという僕の主張は、無視された。山の神は生贄に乙女を求めているという。なら、きみが覚悟を決める前に、奪ってしまえばいいんだ #twnovel

2021-05-11 23:50:13
リュカ @ryuka511

「アンタの使命は私を無事にここへ導くだけ」「はぁ⁉︎」「魔王を私の生命で封印する、私はその為に生まれた。アンタは魔王を封印したと、胸を張って帰還していい」「何言ってんだよ!」「アンタとの旅、楽しかった。さよなら」「儚く散るのはお前に似合わない 。魔王は封印しない、俺が倒す」#twnovel

2021-05-13 00:07:21
リュカ @ryuka511

知らなかったと言えば嘘になる。私の作った宝石は魔力が宿り、人々の欲望を煽って多くの運命を狂わせた。いくつもの王国が滅び多くの人間が傷つき死んだ。それでも宝石を作り続けた。私の宝石は美しく、高く売れたからだ。生きる為、人々を狂わせると分かっていながら宝石を売る私は、罪深い #twnovel

2021-05-13 23:41:20
リュカ @ryuka511

夜の海を照らす灯火。漁船に商船、客船はもちろん、海賊船でもこの灯りには敬意を払う。目的地に着く頃には忘れているかもしれない。だが、あの火を灯してくれている見知らぬ誰かも、海を知る、同じ船の仲間なのだ。船旅の無事を、商売の成功を祈りながら、人々は静かに灯台を見つめている #twnvday

2021-05-14 23:32:27
リュカ @ryuka511

世界に私を繋ぐ軛が貴方でも、それは決して厭わしいことではないのに。貴方は罪を犯しているような、苦しげな顔をするのは何故? 死ねない私を哀れんでいるのなら、それは間違い。貴方を守る為に私は在る。貴方の死のみが私を解放する。けど貴方が自らの死を望んだとしても、貴方を死なせない #twnovel

2021-05-16 01:01:17
リュカ @ryuka511

闇に濡れた貴方の横顔を見つめる。神託を受け、世界に光を取り戻す為共に旅した。絶望しきった人々は誰も助けてくれず、過酷な旅の意味を見出せなくなった。なぜ我々だけがと疑問を抱き、答えを得られぬ疑問は怒りに変わった。「世界に光など不要」と笑う貴方。やはり貴方には闇の方が似合う #twnovel

2021-05-17 00:32:49
リュカ @ryuka511

君が微笑む、その瞬間が酷く嫌いだった。君を利用し踏み躙るこの世界で、君がそんなにも綺麗に微笑む理由に、気づいてしまったから。君は全てを諦めてる。諦観は絶望よりタチが悪い。希望なんて捨てたくせに、超然と微笑む君が嫌で目を逸らす。君が捨てた希望の一つは僕だと、思い知らされる #twnovel

2021-05-17 23:33:13
リュカ @ryuka511

太陽が奪われたあの日以来、この地は暗闇に包まれた。寒さと恐怖に震えながら、目の前すらも見えない暗黒の中で、君を抱きしめていた。私に縋る君。君の温もりは私の希望だったのに。君は諦めてしまった。私の腕から消えてしまった。たとえ太陽が戻らなくても、君がいれば生きていけたのに #twnovel

2021-05-18 23:33:59
リュカ @ryuka511

王と臣下の魔女は密かに想い合っていた。だが王に自由な恋愛は許されない。王は魔女の追放を強いられ、魔女は黙ってそれを受け入れた。城から見える森でひっそりと暮らし始めた魔女は、王国簒奪を狙った罪人として討たれた。魔女が暮らした小屋の跡には、魔女の愛した一輪の花だけが、揺れる #twnovel

2021-05-19 23:36:38
リュカ @ryuka511

あなたが私を桜の樹の下に埋めたのはなぜなのですか?あなたは私を邪魔に思い、憎んだのでしょう?桜の下に埋められた私の体は死蝋になって、今宵もあなたを想います。愛と呪いは表裏一体。放っておいて良いのですか?たとえ動けなくとも私はあなたを愛し、呪います。ほら、季節外れの桜が今宵も #twnovel

2021-05-20 22:49:09
リュカ @ryuka511

神殿で唯一武器を持つ剣士は、巫女達を守る存在だ。神々に仇なす者を神々に授かった剣と卓越した剣技で殲滅する。身を守る術を持たない巫女達にとって、血に染まる剣士は畏怖の対象であり剣士もそれを解っていた。巫女達の奏でる舞楽に剣士は密かに舞う。自分もまた、神々に仕える者なのだと #twnovel

2021-05-21 23:50:41
リュカ @ryuka511

人は叶わないから願うのだ、と思う。人の力で解決できる事ならば神頼みなどしないだろう。そして、人の力でどうにもならない事は、神々の力でもどうにもできない事なのだ。世界への過剰な干渉は神々といえど許されない。叶わない願いをかけた人々から逆恨みを受けるのもまた、神々の業なのだ #twnovel

2021-05-23 01:07:20
リュカ @ryuka511

あの頃僕は確かに君が好きだった、でも今は後悔してるし憎んでる。君を巡って僕とあいつが争うように仕向けたのは、君なんだってね。僕らの争いを見物するのは楽しかったかい?親友を失うまで気づけなかった僕も悪いけど、元凶はやはり君だ。僕らの人生を狂わせた覚悟は、できてるんだろうね? #twnovel

2021-05-23 23:03:03
リュカ @ryuka511

なつかしい夢をみた 。君と二人で広い庭を駆け回る。誰かが君を「お嬢様」と呼ぶ。僕は誰にも呼ばれない。君は呼び声に応え、僕を庭に残したまま行ってしまった。悪気は無かったのだろう。君を呼ぶ大人には逆らえなかったのかもしれない。あの日から今もずっと、誰かが僕を呼ぶ声を待っている #twnovel

2021-05-24 23:41:41
リュカ @ryuka511

世界の終焉、それは星が洪水のように降り注ぐ日だった。古代から人を魅了してきた星々が、天から地上を目がけて降り注ぐ。地上に落ちた星は爆発炎上し、大地を赤く染め上げた。地獄だ悪夢だと人々が騒ぐ中、僕は降り注ぐ星を美しいと思った。こんなにも美しい光景が地上の最期なら、悪くない #twnovel

2021-05-26 00:17:25