掌小説語り～自作つぃのべる集～100

リュカ @ryuka511

｢私が怖くないのか?｣｢僕は医師の卵。怪我人を放っとけない｣吸血鬼狩に襲われ深手を負った私を助けた人間。｢私に襲われても同じ事を言えるか?｣｢それも本望と言えればいいけど、正直怖いね｣彼は奴らとは無関係だと漸く安堵する。｢礼がまだだったな｣「それは完治するまで取っといて｣ #twnovel

リュカ @ryuka511

救いとは祈りとは何なのか。人々の懺悔に神父は苦悩する。救いを求め祈る彼らに救済の御手は届かず、やむにやまれず罪を犯した人々。自分が彼らを断罪する事に意義は無い。許しと救いがあるようにと、ただ祈り導くだけ。救いを求める人々を罪人にしてしまった自分もまた、罪深いのではないか #twnovel

リュカ @ryuka511

君の傷と痣は君の母親がつけたのだと聞いた。事実なんて関係ない、そんな奴は母親じゃない。君を苦しめる奴を消してやりたいと考えてたある日。君が血だらけで泣いていた。駆け寄って足元の包丁を握り、動かない女の胸に突き刺す。これでお揃いの罪になったよ。ずっと独りで苦しませてごめん #twnovel

リュカ @ryuka511

やっと辿り着いた魔王城。ここからまた激戦だと気を引き締めたのに。城を守る者はいなかった。罠ではないかと警戒しながら無防備な城を進む。隠し扉に無限回廊、迷宮のような城の最奥に、魔王はいた。｢ようこそ、我が城へ。この城は我が肉体」｢どういう事だ?｣｢帰還の道は無いという事だ」 #twnovel

リュカ @ryuka511

神託に選ばれた戦士たちにより魔王は倒された。吟遊詩人はこぞって彼らの英雄譚を歌い、作家や画家も次々と彼らを題材に作品を作った。それらは作り手の解釈や自己顕示欲を孕んで、次第に事実とかけ離れていく。後世に語り継がれた戦士たちの戦いは、現実味の無さから只のお伽噺とされている #twnovel

リュカ @ryuka511

物置から古びた拳銃が出てきた。仲間を募って過激な活動をしていたあの頃を思い出す。若かったし真剣だった。今思えば、それは愚かさでしかなかったのだが。古びた拳銃を空に掲げて自嘲する。こんなちゃちな拳銃で世界を変えようとしていたなんて。自分こそが正義だと思い込んでいたなんて #twnovel

リュカ @ryuka511

君が言うには、人は輪廻転生を繰り返しているらしい。なら、ここで僕が倒れても、来世でまた、逢えるかな。銃弾に貫かれた胸から、血が溢れて止まらない。痛みと熱さに意識が遠のく直前、脳裏に浮かんだのは君の泣き顔だった。きっとまた、逢えるから、どうか、そんな顔を、しないで #twnovel

リュカ @ryuka511

魔王を倒したのは人間でも魔族でもなかった。どの生物とも異なる彼らに人々は困惑する。彼らは新たな脅威なのか。王は問う。｢魔王を倒した事に感謝する。だが君達は何者なのだ?｣｢果たして我らが何者であろうとも、お前になんの関係が有る。勘違いするな、元より地上は人間のものでは無い｣ #twnovel

リュカ @ryuka511

布団を頭からかぶって、ラジオの電源を入れる。遠い国の音楽や、DJの軽快なお喋り、同じ時を過ごす人達のメッセージ。自分のメッセージが読まれて心踊ったり、知らない誰かの話しに共感したり。こんな時間まで起きている人達だけが楽しめる、夜明けまでの穏やかな時間。夜よ、まだ明けないで #twnovel

リュカ @ryuka511

人々は君を醜いだの才能が無いだのと罵る。だが僕は知っている。ダンサー達の最下層で舞う君は美しい。トップダンサーの誰よりもだ。君に足りないものは自分が美しいという自覚だけ。さぁ、僕の手を取って。君の美しさを世界に知らしめようじゃないか。僕にしかできない魔法を、君の為だけに #twnovel

リュカ @ryuka511

君の姿が大きく揺らいで、もう時間が無いと気づく。だめ、神様まだ待って。君に伝えなきゃいけないことがあるんだ。捨てられた僕を拾ってくれて、ずっと側にいてくれて、ありがとう。君がいなくなったら、幸せになれる自信は無いけど、強くなることはきっとできるから、見ていてね。 #twnovel

リュカ @ryuka511

ケンカして、仲直りして、またケンカして、そんな事を繰り返して共に歳を重ねていくんだと思ってた。怒って家を飛び出した君。ここまではいつもの事で。意地を張って君を追わなかった。サイレン。着信。お決まりのパターンを崩してはいけなかったのだ。謝らせてよ。君のごめんねを聞かせてよ #twnovel

リュカ @ryuka511

「ここだよ、間違いない!」新月の夜、空を切るように現れるエメラルドの塔。世界中の冒険家が探し求める幻の塔だ。今、目の前の闇にエメラルド色のオーラが広がっている。塔が出現する前ぶれだ。固唾を飲んで見守る。父さんが果たせなかった夢。僕達は下から、父さんは上から、一緒に果たそう #twnovel

リュカ @ryuka511

「今宵の狙いはお父上のコレクションですが」怪盗は令嬢に微笑む。「あなたと噂になるのも悪くない」「私を利用して名を上げようと?」「使えるものは何でも使うのが下流で生きる術でして」｢いいわ、盗まれてあげる。丁重に扱って頂戴」勝気に笑う令嬢の瞳に浮かぶものを、怪盗はまだ知らない #twnovel

リュカ @ryuka511

「愛しています」二足歩行で頭部に一対の目、金属の身体のロボットが私にそう言う。その機械はときどき嘘を吐く。誤作動さ、と貴方は言った。私を愛していると言う機械と首をすくめる貴方を見比べる。真っ直ぐ私に視線を向ける機械と、決して私の目を見ない貴方。嘘を吐いているのは、どっち?#twnovel

リュカ @ryuka511

演奏を終えると万雷の拍手が沸き起こった。立ち上がり、更に大きくなった拍手に深々と一礼する。最高の気分だ。その時、視界の端に手を叩く君の姿が映った。目を潤ませ、一心に拍手する君に胸が痛んだ。君より夢を選んだ僕。恨まれていると思っていた。それでも後悔しない僕は、薄情な奴だ #twnovel

リュカ @ryuka511

貴族の家に生まれた私と、スラム街で生きる貴方。出会うはずのない私と貴方が出会った時、こんな世界を変えられると思った。それは大きな思い上がりだったのだけれど。これだけは誓う。私が貴方を守ると。貴方が憎む財力で。だから貴方の憎悪と祝福に満ちた予告で、私をここから連れ出して #twnovel

リュカ @ryuka511

ずっと前から一緒にいた、ぼくの大好きなおもちゃ。だっこするとやわらかくてあったかい。でも、長い時間がたったから、もう壊れちゃうかもしれない。つんつんしても反応がなくなった。まただ。集めても集めてもみんな壊れて、捨てなきゃいけなくなる。これももう駄目だ。また連れて来なきゃ #twnovel

リュカ @ryuka511

「久しぶり」数年ぶりの故郷。変わらない景色、家族の笑顔、きみ……は随分変わったね。昔は抱きしめたら折れちゃいそうだったのに、今は……いや、そんなきみも可愛いよ。昔のようにそっと抱きしめる。｢痛っ!」気に入らない抱き方をすると炸裂する猫パンチ。きみも変わってなくて安心したよ #twnovel

リュカ @ryuka511

隠れ家に潜む剣士は唇を噛む。王国軍の攻撃に革命軍は総崩れだった。決起するには早かったのだ。武器と情報を集め、潜むべき時期だった。不安がる仲間の顔を見回す。「大丈夫、まだ勝機はある」自分が戦意を喪失してはいけない。始まってしまったものを今更止められない。ならば。「行くぞ」 #twnovel

リュカ @ryuka511

君についた嘘の数と、君がついた嘘の数。一体どっちが多いんだろう。最初に嘘をついたのは確か僕だ。怒った君も平然と嘘をつくようになった。互いについた嘘の数や罪深さを責め合うようになって。嘘を数え量るのもバカらしくなった頃。「大嫌い」最後にして最大の嘘で、僕らの関係は終わった #twnovel

リュカ @ryuka511

天を摩する建物の群れ、その灰色のビルに切り取られた青い空。この大都会で何も手にできない私の、唯一手に入れられるもの。忙殺される日々の中で見る小さな空の青さに、心安らぐ自分に安心する。バラ色の人生でなくていい、不確かな未来をあの青に染めよう。灰色のビル群に埋もれないように #twnovel

リュカ @ryuka511

永く生きていると昔話のネタには事欠かない。懐かしい話をしたくて旧友を訪ねたが、忙しいと断られた。日を改め訪ねると、なぜか居留守を使われた。私は何か友の機嫌を損ねる事をしてしまったのだろうか? #twnovel 人間の僕を友と思い込んだ、最後の吸血鬼。友のフリをしてあげるべきだったんだろうか

リュカ @ryuka511

これは虚像からの通信だ。あの人を想う全員への一字一句同じメッセージ。解っている。なのに、あの人が私だけに綴ってくれたかのように錯覚してしまう。それ程までにあの人の言葉は、悩み迷う私の心に沿っていた。きっと、他の人も同じ事を感じてるだろう。真実は、それぞれの胸にあればいい #twnovel

リュカ @ryuka511

神託に嘘はない。が、それを告げる人間は嘘を吐ける。神々が救世の英雄と決めた人は、私の大事な人だった。神託は英雄の未来に責任を負わない。だが私はあなたの未来を守る。旅立つあなたの末路を知らされ、あなたが英雄だなどと言えるはずもない。あなたの死を経て得た世界など、正しくない #twnovel