新しい楽器:18.クリスチャン・マークレー《Drumkit》(1999)

単著『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』(ナカニシヤ、2023年)(https://www.nakanishiya.co.jp/book/b10044931.html)の宣伝を兼ねてはじめた「新しい楽器」という読み物です。
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nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

18.クリスチャン・マークレー《Drumkit》(1999)|今日は、この楽器の作品について。リンク先の写真の真ん中のやつです。座りにくそうなドラムセットですね。|paulacoopergallery.com/exhibitions/ch…

2024-01-25 11:35:55
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

マークレーといえば、2021年の秋に東京都現代美術館で展覧会が行われました。良い展覧会でした。|クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する] | 展覧会 | 東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO mot-art-museum.jp/exhibitions/ch…

2024-01-25 11:35:57
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

でも、この演奏できない楽器シリーズはありませんでした。展覧会のテーマ(「翻訳」)とは合わない作品だったからかもしれません。このシリーズは、他にも胴の長過ぎるアコーディオンとか穴だらけのリコーダーなどもあって、面白いです。

2024-01-25 11:35:57
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

1950年代生まれで1980年代に世に出てきたマークレーは、そもそもはヒップホップとは別の文脈でターンテーブルを演奏する音楽家として有名になり、また、サウンド・オブジェやらサウンド・インスタレーションやらサウンド・アートやら、あらゆるタイプの音のあるアートに関わってきた人です。

2024-01-25 11:35:58
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

本人はその呼び名を気に入らないでしょうが、90年代には、サウンド・アーティストの代表的存在でもありました。ただし、ここ20年ほどで、「サウンド」とつける必要のないほどビッグになりました。

2024-01-25 11:35:59
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ちなみに、中川は、マークレーが京都にライブしに来たのと藤本由紀夫さんが年に一回一日だけ西宮市大谷記念美術館でaudio picnicという個展を10年継続するということをしていたのに20代前半(=1990年代後半)に遭遇したことが、サウンド・アート研究を志したきっかけです(と言うことにしています)。

2024-01-25 11:36:00
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

藤本由紀夫さんのaudio picnic。チョー重要なのに10年分のレファレンスが見当たらないので、調査報告など作成する必要があり、ですね。|audio picnic 美術館の遠足 - Google 検索 google.com/search?q=audio…

2024-01-25 11:36:01
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

話を戻します。楽器を演奏するマークレーの特徴は、レコード(プレイヤー)を演奏することです。ヒップホップのDJが、スクラッチしたりカッコ良いフレーズをサンプリングしたりして効果的に音を構築していくのではなく、かなり即興的に、レコードやレコードの形に切ったダンボールなどを演奏します。

2024-01-25 11:36:01
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

こんな感じで、〈レコードに録音されている音ではなく、しかしレコード(プレイヤー)が作り出せる音〉(「レコードの音」)を使うのがマークレーの特徴です。この意味では、ミラン・ニザ的な問題意識を共有しているわけです。|youtu.be/IIFH4XHU228 Christian Marclay on Night Music

2024-01-25 11:36:02
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

演奏家としてのマークレーは、基本的には、かなりの程度まで、即興的に演奏する人です。しかし、美術作家としてのマークレー、あるいは映像作家としてのマークレーは、あまり「即興」という感じではありません。

2024-01-25 11:36:03
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

おそらく制作時にはかなり即興的なやり方で作品制作していると思いますが、最終的に出来上がる作品の多くは確定的な形態に落とし込まれます。だからこそアートワールドで評価されるようになったとも言えそうですが、アートワールドのことはよく知らないので、その話はここまで。

2024-01-25 11:36:04
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

とにかく、マークレーは構造を確定的に制作する場合もあるわけです。

2024-01-25 11:36:05
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

彼の音楽作品ではそういうことはあまり無いですが、例外的な作品があります。それがこちら。More Encores (1989) youtube.com/watch?v=Viyk4s…

2024-01-25 11:36:05
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

これは、「その音楽家のいかにもその人らしいところ」だけを使った作品です。僕はサッチモを使った曲が好きです。サッチモのパラリラパラリラが良い感じ。

2024-01-25 11:36:06
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

これはマークレーの作品史においては例外的な作品で、著作権的にも難しいのか、Spotifyにはありませんでした。ただ、こういう音楽はplunderphonicsといって、それなりのジャンルを形成しています。

2024-01-25 11:36:07
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

plunderphonicsとは、剽窃(plunder)した音(を使う音楽)という意味です。有名なのはジョン・オズワルドという人で、作品としてはこのようなものです。 John Oswald, Plexure, 1993 open.spotify.com/album/5kmHY8R6…

2024-01-25 11:36:08
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

1989年には、「一人の音楽家からサンプリングした音だけで作った曲」を集めたアルバム(『plunderphonic』)を出したのですが、こちら、訴えられて販売できなくなったそうです。|plunderphonics.com (「u」のページから探してみてください)

2024-01-25 11:36:08
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

そこで、1993年のものは、やたらたくさんサンプリングして、全部著作権処理してそのクレジットも全部小さな文字でライナーノート(かアルバムジャケット)に書きました。そういうことをしたのは、ジョン・オズワルドが、著作権法は創造的な活動を阻害する!と訴えたかったからのようです。

2024-01-25 11:36:09
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

(そのライナーノートをネット上で探したけど見つけられず)

2024-01-25 11:36:10
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

対してマークレーは、著作権と創造力の相剋という問題意識は強くないと思います。それよりたぶん、世の中に流通している様々なイメージのステレオタイプの指摘と抽出、みたいなことが目的だと中川は思います。

2024-01-25 11:36:11
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

こういうやつと問題関心を共有していると中川は思うわけです。| artsy.net/artwork/christ… Christian Marclay Dictators (1990) Artsy

2024-01-25 11:36:12
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

指揮者がカバーになると独裁者(dictator)みたいだし、サッチモの歌声はパラリラパラリラだなあ、と指摘し抽出する。これが僕のマークレー解釈です。2010年頃にそう論じた頃は「マークレイ」表記が多かったです。|「クリスチャン・マークレイ試論ー見ることによって聴く」sites.google.com/site/audiblecu…

2024-01-25 11:36:12
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

マークレーの話を始めると終わらないので、話をdrumkitに戻します。

2024-01-25 11:36:13
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

マークレーは、音楽文化にまつわるあらゆることを視覚美術作品に仕立てるし、音楽だけじゃなく、電話や映画音楽や、音を感じさせる視覚的イメージ(写真、マンガ)など、音響文化を扱う作家です。

2024-01-25 11:36:14