- rouillewrite
- 395
- 0
- 0
- 0
『そんなわけない、と言うのは貴方の価値観であり考えね。よほど幸せな環境に身を置いていたのかしら。 この国には、2億540万人の人々が暮らしているの。生まれた場所も考え方も、その環境も、すべてがすべて幸せなもので、なんの歪みも生じないと考えているのなら、それは浅はかで愚直というものよ』
2024-01-28 21:21:20布が摺れる音がする。カメラの向こう側で、せせ笑う彼女が足を組みかえたように思えた。 彼女のその言葉に、ギルバートは反論するすべを持たない。
2024-01-28 21:22:22「…でも、たとえここにいる人たちが罪を犯したり、過ちを背負っていたとしても、極端すぎるだろ! 0か1がみたいなそんな考え!」 ギリ、と歯ぎしりをして、ギルバートは視線を正面に、未だに何も言わない探偵たちに向かって言い放つ。
2024-01-28 21:23:30「なぁ!アンタらはなんで何も言わないんだ!俺たちの相棒だって、小さな子供たちだろ!なんで誰も…」 「ギル、落ち着けって!」 pic.twitter.com/kKaJrl0Ho1
2024-01-28 21:24:31ギルバートの言葉を遮り、彼の肩に手を置いたのは隣に座っていたオースティンだった。 流石にこのままでは、詳しい話も聞けずに親友がヒートアップしてしまう、と必死に宥める。
2024-01-28 21:25:41「オズ!でも、」 「いいから、…まだ詳しいこともわからないんだ。話し合うのは、その後でいい」 「……っ」
2024-01-28 21:26:33少し言い淀んだ様子のオースティン。 それでも、彼の言っていることは正しい。このまま有耶無耶にして、具体的な話を聞けない方が不利だ。 極論、その許しとやらを全員得られればこの海の上の牢獄から脱出できるのだから。
2024-01-28 21:27:21「…わかったよ」 冷静になったのか、ギルバートはそう呟いてストンと椅子に座り直す。 右隣に座っていたシャールに「ごめんな」と小さく言うと、彼女は黙って頷いた。
2024-01-28 21:28:15『それじゃ、詳しいことを説明するわね。この船の航海は27日間、約1ヶ月。 その間に、ここにいる合計20人の罪に対する“裁判”を行ってもらうわ』 「…裁判?」
2024-01-28 21:29:46探偵の誰かがその言葉に疑問を投げかける。 生憎ほとんどが下を向いていたりカメラの方を向いていたり明後日の方を向いていたりで、周りを気にする余裕はなさそうだ。
2024-01-28 21:30:49『そう、まぁここに公平なジャッジをしてくれる裁判官なんて呼んでないのだから、“選択”と呼んだ方が正しいかしら』 「…どういうことだ?」
2024-01-28 21:31:37その言葉に、少しだけザワつく。 ようやくお互いの顔を見合い、首を傾げる者たちがいる中で、彼女は言葉を続けた。
2024-01-28 21:32:40『この船では、貴方たちの罪が暴かれる時が必ず訪れる。 それぞれ、1回ずつ。 それもこの船に招待された貴方たち20人全員に。その度に“選択”を求めるわ。 方法は簡単。』
2024-01-28 21:33:14『その者の罪を許すに値する場合は、指輪の飾りを1度指で叩き、 許すに値しない場合は、指輪の飾りを3回以上指で叩けばいいの。 選択を見せる見せないかは、貴方たちの自由。 …そして、過半数、つまり10人以上が許すに値しないと判断した場合は────その罪人には死が訪れる』
2024-01-28 21:36:31「…そんな方法で、誰がどんな選択をしたかわかるの?」 クラリッサが声を上げる。胸にあるペンダントをギュッと握りしめ、隣に座っているアイディオを気にかけながら恐る恐る問いかけた。
2024-01-28 21:37:50『この世には、貴方たちと同じように不思議な力を持つ子が沢山いるもの。 そういうのがわかっても、おかしくはないでしょう? …あぁ、貴方やアメリア・クロフォードと同じように、人の内面を盗み見る力を持つ子達のようにね』 「……」
2024-01-28 21:39:10嫌味、のような言い方に、クラリッサは押し黙る。 名前を挙げられたもう一方のアメリアはさほど気にしていないようで、周りの様子を伺っていた。
2024-01-28 21:39:48『いつ誰の罪が、というのは告知しないわ。面白くないもの。 …まぁそうね、暴かれるその時は10年前に倣って───その罪を、出来るだけ再現してあげる。 命の選択(ジャッジ)をするのだもの、体感した方がより鮮明に、鮮烈にその罪の重さを理解できるわ』
2024-01-28 21:41:39そう言って、彼女は『エイダン』と呼びかけた。 呼ばれた赤髪の男性は、カメラの方に向かうと、大切なものを扱うようにそっとそれを抱えあげる。
2024-01-28 21:42:31エイダンがカメラを持って去った後も、彼らはレストランに留まっていた。 あの説明をされたあとでは、気まずくて誰もその場から動くことはできなかった。
2024-01-28 21:46:49