新しい楽器:21.共有玩具、共遊楽器

単著『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』(ナカニシヤ、2023年)(https://www.nakanishiya.co.jp/book/b10044931.html)の宣伝を兼ねてはじめた「新しい楽器」という読み物です。
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nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

21.共有玩具、共遊楽器:今日は、僕はよく知らなかった楽器について。簡単楽器というか簡易型楽器というか、そんな呼び方をしたくなるけど、共有玩具とか共遊楽器という代物があるそうです。

2024-02-20 12:28:58
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

横浜ではホッチポッチミュージックフェスティバルというものがあります。arcship.jp/hotchpotch/

2024-02-20 12:28:59
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

もう2,3年前ですが、僕が行ったときは、横浜スタジアムのそばで行われていました。いくつかの会場で演奏とかダンスが行われていて、すごく有名な演者とかはナシだったので、人混みに疲れるということもなく、消防団による消防車試乗会があったり、公園の遊具で遊んだりもできたり。

2024-02-20 12:29:00
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

早稲田の下駄で踊るサークルのダンスパフォーマンスとか、米米クラブのコピーバンドとか、フェイスペインティングのお店とか、そういうのもありました。娘と一緒に休日の午後をしっかり遊べました。

2024-02-20 12:29:00
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

全体的に何だかよく分からないながらも、いちおうコンセプトとしてはいわゆる「共生社会」を掲げる祭りだったみたいで、なので、手話で歌う人(歌詞を手話で翻訳していただけですが)や、視聴覚障がい者ツアーなどがあったようです。

2024-02-20 12:29:01
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

で、ここで「ブンネ楽器」というものを知りました。帰宅して調べたところ、僕が触ったのは、スウィングバー・ギターというものでした。ギターの弦を押さえて音高を操作する時に、指で押さえるのではなく、レバーで押さえる、という仕組みのものです。|bunnemusic.jp/instrument/

2024-02-20 12:29:02
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

指に筒のようなものを付けて演奏するボトルネック奏法というものがあります。あれは微妙なニュアンスを出せる演奏技法ですが、ブンネの方は、ガチャコンという感じでレバーを倒して弦を押さえるので、微妙なニュアンスは出せないし、出せる音もかなり限られていて、和音3,4個だけのようです。

2024-02-20 12:29:03
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ブンネ楽器は、スウェーデン人ステン・ブンネ氏が開発したものだそうです。また「ブンネ・メソッドでは、”ご高齢者”、”楽器の演奏経験のない健常な大人”、”幼児”、”障がいをお持ちの方”の、4つの異なる対象グループを想定しています」とのことです。|日本ブンネ音楽協会 jbmusic.or.jp/pages/instrume…

2024-02-20 12:29:04
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

楽器演奏に習熟していなかったり習熟しにくい人でも、演奏する喜びを持てる楽器、として開発されたものとのこと。 で、僕は不勉強で知らなかったのですが、こういうのは「共有楽器」と呼ぶそうです。|arcship.jp/hotchpotch/tru…

2024-02-20 12:29:04
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

「共有玩具」というものが先にあったそうです。|yamaha-mf.or.jp/onkenscope/kan… 「共遊楽器」って何だろう? | ON-KEN SCOPE 音楽×研究

2024-02-20 12:29:05
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

で、そういうことを知った後に思い出したのが、大正琴です。 日本の伝統的な楽器である琴を、レバーで押さえられるようにした楽器。ですが実は弦は糸ではなく鉄弦なので、琴とはまったく異なる音色で、ピックで弾くので、オートハープみたいなものです。 |youtube.com/watch?v=7eLer5…

2024-02-20 12:29:06
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

この楽器の起源については、掘ったらもう少し色々ありそうですが、今はよく知りません。数字譜を採用したおかげで、五線譜の読めない当時の日本人たちに受け入れられたとのことですが、実は、僕も最近メルカリで安いのを買って、数日だけ遊んでみた楽器でもあります。

2024-02-20 12:29:07
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

音を出すだけなら簡単な楽器ですが、綺麗な音色でメロディを弾くのはけっこう難しく、面白い楽器です。はやくも部屋の隅で埃かぶってますが。

2024-02-20 12:29:07
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ということで、このブンネとか大正琴とかを話に出すことで言いたいことは、まずは、〈新しい楽器を作るためには、すでにある楽器を改造すれば良い〉です。プリペアド・ピアノの時も言ったような気もしますが。一般論として、何か新しいものを作ろうとするときにゼロから始めるのは良くないかも。

2024-02-20 12:29:08
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

ただ、ブンネや大正琴については、もうひとつ言いたいことがあります。

2024-02-20 12:29:09
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

それは、例えばブンネの場合、高齢化社会の先輩であるスウェーデンで作られた云々、ということが語られるということです。また、大正琴の場合も、その発明家に関する説明がWikipediaにはあります。|ja.wikipedia.org/wiki/大正琴

2024-02-20 12:29:10
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

つまり〈楽器の由来を考えると面白い〉と言いたいわけです。ブンネの場合、作られた経緯は楽器のコンセプトと分かち難く結びついています。大正琴の場合、作られたきっかけはよく知りませんが、それが普及した文脈は重要です。つまり、西洋芸術音楽がまだ十分浸透していなかった日本、という文脈です。

2024-02-20 12:29:10
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

なので、「新しい楽器」を作るなら、その由来を考えると面白いかもしれません。由来以外に効能とか値段とかエピソードとか考えても良いかもしれません。この楽器は実は植民地時代の台湾で日本文学を志した台南の文学者たちの間でこれを弾けば日本風になるという噂と共に流行したものなのだ云々とか。

2024-02-20 12:29:11
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

まあ、そんな由来とか嘘話を仕立てるなら、何らかの信憑性を感じさせる仕掛けも必要な気がします。何をどうやってもあざといし余計なものになりそうな気もしますが。 以上です。それではまた。

2024-02-20 12:29:12
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

最後に宣伝。『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』が出ました。音響彫刻など視覚美術のことだけではなく、実験音楽などアヴァンギャルドな音楽のことだけでもなく、包括的に「サウンド・アート」について整理した唯一の本です。 nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2024-02-20 12:29:13
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

四つの領域におけるサウンド・アートの系譜を整理しました。それぞれ、音響彫刻小史、実験音楽としてのサウンド・アート小史、メディア・アートとしてのサウンド・アート小史、サウンド・インスタレーション小史として読めます。この領域への解像度を高めてください。nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2024-02-20 12:29:13
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

サウンド・アート(音のある美術やアヴァンギャルドな音楽など)について語る語彙と概念が更新されるはずです。『サウンド・アートとは何か 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜』が広く、長く、読まれますように。nakanishiya.co.jp/book/b10044931…

2024-02-20 12:29:14
nakagawa@『サウンド・アートとは何か』 @nakagawa09

共遊楽器については語っていません。こういう色々な楽器について、何かもっと語り口を考えたい、と僕は思っているので、こういうこと(「新しい楽器」の連続スレッド)をやってみているわけです。そのうち何かの形にまとめてみたいけど、どうなることだろう。

2024-02-20 12:29:15