弁護士 「ライターがAIに仕事を奪われる、と騒がれていますが、」

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弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

第一東京弁護士会所属。法律事務所アルシエンパートナー弁護士。本好きが高じて学生時代より出版関係に関わり、著作権関係が専門。ここでは、主に出版社、クリエイターの方向けに役立つような著作権法の話題や、日々の雑感などをつぶやいてます。

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弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

ライターがAIに仕事を奪われる、と騒がれていますが、資料を調べて引用する必要のある記事を書けるライターは、法律上の理由でAIが使えず意外に生き残れるのでは、とふと思いついた。過去の判例を前提にすると、全く同じ記事でも人が書けば適法な記事なのにAIが書くと違法、ということが起こりうる?

2024-03-10 23:44:22
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

全くの仮説なのですが、まず、AIが生成した記事は、人の創作を経ていないので、著作権(創作性)が認められないとされていることを前提とします。

2024-03-10 23:46:51
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

ところで、記事中で他人の著作物の引用が許されるのは、著作権法32条の引用に該当するからで、その要件としては、一般的に、明瞭区分性や出所の明示といった他の要件に加え、主従関係が必要とされています。

2024-03-10 23:50:12
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

引用につき、引用以外の部分が著作物であることを要するか、という問題があります。仮にそう考えると、AIが文章を書くと著作物にならないなら、同時に引用の要件も満たさない、つまり、AIには他の著作物を引用することはできないというハンデがあります。そして裁判例はその立場に立つように読めます。

2024-03-10 23:58:25
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

例えば、東京地判H22.5.28は、「利用する側に著作物性,創作性が認められない場合は「引用」に該当せず,同項の適用はないというべき」とし、他にも同H10.2.20もほぼ同様に述べています。それゆえ、素直に読むと、AI創作物も著作物性がない以上、引用ができない、というのが裁判例の帰結になります。

2024-03-11 00:05:50
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

これらの裁判例はまだAI等のない時代のものなので、これがAI生成物にも当然に適用されるかどうかはわかりません。ただ、少なくとも、これを否定する裁判例が出るまでは、発注側としてはリスクヘッジとして、AIによる他者著作物の引用はしない(それが必要な場合は人間が書く)必要があるのでは。

2024-03-11 00:12:06
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

そうだとすると、他者著作物の引用が必須のジャンル(本の紹介や専門性の高い記事)などは、当面は人が書くしかないので、この分野のライターの仕事はなくならないのではないか。もちろん、今後の立法や裁判例にもよるので、絶対に安泰とは言えないが。

2024-03-11 00:16:59
ひかる @hika_nintendo

@kawano_lawyer AIに条件を与えて資料の抜粋と共に結果を出力させる行為は、引用ではなくて第47条の5に当たるのでは? その結果の文章を人間が雑誌という著作物の中で借用してるという形になりませんかね。

2024-03-11 13:47:48
かさこ@好きを仕事にする大人塾かさこ塾•Kindle作家&アドバイザー @kasakoworld

@kawano_lawyer ライターが自分で書いた風を装って ばしばしAIを使って書いちゃった問題は 悩ましいかもしれません(笑)

2024-03-10 23:54:49
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

@kasakoworld まさに、上記のように通常なら引用として許される行為もAI使用により違法になるとすると、何らかの理由でAIによる創作であることがバレた場合、ライターは、著作権を侵害した原稿を納品したことになってしまうので、契約でAI使用が禁じられているといないとにかかわらず責任を負うことになるのかと。

2024-03-11 00:19:40
ぽな@書籍執筆中 @ponapona_levi

専門ライターの場合、下書きでAIを使い、最後にファクトチェックしつつ仕上げるイメージが近く、資料の引用をする場合は仕上げの段階で調整する感じになるかと思います。故に、文献にあたってファクトチェックできるだけの専門知識がある人が生き残れて、引用もクリアできるみたいな話になるのではと… x.com/kawano_lawyer/…

2024-03-11 12:01:32
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

@ponapona_levi 下書きにだけ使う場合のさらにややこしい問題として、ファクトチェックや仕上げでどこまで直せば創作性が認められるか、という問題が… 従前、校正や校閲が共同著作物にならない(創作的寄与がない)とされてきたことからすると、それなりに自分で書かないと認められないのではないかと。

2024-03-11 13:12:32
ぽな@書籍執筆中 @ponapona_levi

@kawano_lawyer そうですね。実際、AI使うときは全体的に手を入れるようにしています…! 一方、法的な問題とは別に、実用系の記事(特にSEO)だと、そもそも選択できる表現の幅が狭い気もするんですよね…。正直AI作品と人が書いたものとの区別はかなり難しい気がしています。書き手としては悩ましいところです。

2024-03-11 13:41:14
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

自分の著作物をAIによる学習に利用することを著作者の意思だけで禁じることは著作権法30条の4の書きぶりからして現行法上は無理。 やるとすれば、著作物の閲覧に利用規約への同意が必要な仕組みにして、AIによる学習を禁じる旨を予め盛り込むことくらいか。著作権侵害でなくとも規約で禁じることはできる

2024-03-11 12:39:32
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

ただ、この方法の実効性は極めて疑問で、どこか一箇所でも無断転載された場合、規約の効力は無断転載先からの学習者には及ばないから、結局そちらから学習されることを防げない。 文化庁の見解では、無断転載先からの学習について30条の4ただし書に直ちに該当するとはしておらず、考慮要素の一つでしかない。

2024-03-11 12:58:15
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

無断転載の方をやめさせればいい、というのは確かにその通りだし弁護士として取り組んでいきたいことではあるんだけど、簡単にできてしまうのでいたちごっこになり疲弊しているのが現状だし、何より、それをすぐ把握して学習される前に削除させる、というのは全く現実的でない。

2024-03-11 17:15:39
のんのん @nonnon__nonai

@kawano_lawyer そもそも法律に反した規約というものに効力があるのか甚だ疑問なのですが、著作権法30条の4で基本的に肯定されている生成・開発段階における機械学習を防ぐ目的での規約自体に問題はないのですか?

2024-03-11 22:00:42
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

@nonnon__nonai 規約というのは、民法上の定型約款として、契約の一種ということになります。契約自由の原則というものがあって、法律上自由な行為であっても当事者が合意する限り契約で禁じることは自由なので、問題ないと思われます。

2024-03-11 22:03:18
のんのん @nonnon__nonai

@kawano_lawyer なるほど、解説ありがとうございます。 規約違反ということで民事で争うことは現行法でも可能なのですね。

2024-03-11 22:05:57
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

立法論になるが、海賊版対策として、私的利用であっても海賊版サイトからのDLは禁止、という姿勢を取り権利制限からの明文の除外規定を置いているのに、機械学習についてはそのような明文の除外規定を置かず「利益を不当に害する」とするだけで解釈に丸投げしていることの是非は議論すべきではないか。 x.com/kawano_lawyer/…

2024-03-11 14:19:30
弁護士 河野冬樹 @kawano_lawyer

なお、小説書きの方の場合、自費出版に絡んだ消費者被害が多く、国民生活センターから過去に注意喚起が出ています。 x.com/ichiro_sakaki/…

2024-03-11 22:33:33
榊一郎@来年度のスケジュールを模索中♪ @ichiro_sakaki

なんかコレ、そのうち『小説書き』や『脚本書き』も狙われそう......とか思ったけど、そう言えば、ソレそのものな案件が以前ありましたな。なんたらスクール。(敢えて名前はぼかす)〉RT

2024-03-11 22:15:35
榊一郎@来年度のスケジュールを模索中♪ @ichiro_sakaki

なんかコレ、そのうち『小説書き』や『脚本書き』も狙われそう......とか思ったけど、そう言えば、ソレそのものな案件が以前ありましたな。なんたらスクール。(敢えて名前はぼかす)〉RT

2024-03-11 22:15:35
まとめ 【聞かせてクリエイター】文化庁がAIによる著作権侵害事例を収集している件 反AIゲフンゲフン生成AI特に作画に懐疑的な層もAI肯定勢も大注目ですねっ。 4564 pv 19 1 user