『メタ・メッセージ論』

『情報化社会における「情報強者」とは良質な情報をたくさん所有している人間のことではありません。そうではなくて、自分の個人的なメッセージを「手押し車」に載せてやりとりできる術を知っている人間のことです。』 2011年12月27日の内田樹先生の「メタ・メッセージ」に関するつぶやきをまとめました。
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内田樹 @levinassien

『街場の読書論』ゲラチェック95%ほど終了。年内に「あとがき」書いて、戻せそうです。今日は「メタ・メッセージ」論を20枚ほど書き足しました。メタ・メッセージというのは「これは嘘です」とか「後ろの方、聞こえますか?」とかいう言明のことです。これは誤解の余地のないメッセージなんです。

2011-12-27 19:53:42
内田樹 @levinassien

メタ・メッセージというのは「メッセージの解釈にかかわるメッセージ」のことです。不思議なのは、「後ろの方、聞こえますか?」という問いかけには二種類の回答しかないことです。それは「はい、聞こえます」と「いいえ、聞こえません」です。不思議でしょ?

2011-12-27 19:55:08
内田樹 @levinassien

「聞こえません」て、お前聞こえてるやんか!そうなんです。メタ・メッセージは「聞こえない人にも聞こえてしまうメッセージ」なんです。すごいですね。

2011-12-27 19:56:13
内田樹 @levinassien

こんな話があります。ある工員がどうも工場からものを盗み出しているらしいという嫌疑がかかりました。警備員たちはこの工員が手押し車を押しながら工場から出るとき、彼をとめて、手押し車の中をすみずみまで探しました。でも、何も出てこない。

2011-12-27 19:57:38
内田樹 @levinassien

毎日、止めては手押し車の中を点検するのですが、何も見つからない。さて、この工員は何を盗んでいたのでしょう?もうおわかりですね。彼は手押し車を毎日盗んでいたのです。

2011-12-27 19:58:33
内田樹 @levinassien

いかにもラカンが好きそうな話ですが、「手押し車」を「メタ・メッセージ」と書き換えると、コミュニケーションについての恐るべき真理が明らかになります。メタ・メッセージは「情報についての情報」ですので、誰もその真偽や理非については問わない。警備員はこれを組織的に見逃すのです。

2011-12-27 19:59:54
内田樹 @levinassien

だからもっとも賢いメッセージ発信者はパーソナルなメッセージを「手押し車」のかたちにして発信するはずなんです。これは誰にも咎められず、どこまでも、誰にでも届くから。

2011-12-27 20:01:18
内田樹 @levinassien

情報化社会における「情報強者」とは良質な情報をたくさん所有している人間のことではありません。そうではなくて、自分の個人的なメッセージを「手押し車」に載せてやりとりできる術を知っている人間のことです。

2011-12-27 20:03:14
内田樹 @levinassien

パーソナルなメッセージをあたかも価値中立的で、真偽の判定になじまず、「警備員たち」の検査の眼をを逃れるものであるかのように発信できる人間が、情報社会における情報強者だと僕は思います。

2011-12-27 20:04:52
内田樹 @levinassien

つねに「自分がいま発信している情報についての情報」を繰り込むことのできる言語能力が情報社会における階層差の形成要因であるというのが僕の仮説です。自分の言明に含まれる真実含有量についての検査値を公開しながら話すんです。楽しそうなんだけどなあ。

2011-12-27 20:09:07
内田樹 @levinassien

「自分はどれくらい嘘つきか」についてもっとも信じられる語り口を思いついた人間が「勝つ」ゲームって、いいと思いません?だって一等賞品が「こいつは嘘つきだ」という公的認知なんですぜ。

2011-12-27 20:11:30