赤い手は滅びのしるし第5版-血風のアーヴィ- 第05話
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時間が刻々と過ぎる中、痺れを切らしたシギィは「もう、奴らの好きにさせよう。私たちには私たちのやることがある」と、荷物をまとめ始めます。 ソラナ隊長が英雄達に頭を下げます。
2018-12-22 16:15:46「私はこの街で生まれ、この街を守ることを使命と考えています。よって、評議会の命令には従わねばなりません。けれども、あなた方は、もう十分すぎるほど、この街の為に尽くしてくれました。」
2018-12-22 16:16:00「あなた方の力は、このドレリンの渡しではなく、谷全体の為に生かされるべきです。今まで本当にありがとうございました。どうぞ、私たちの街のことは考えることなく、あなた達がなすべきことをなさってください。」
2018-12-22 16:16:18彼女がそう頭を下げると、ザフガーがすっくと立ち上がります。 「ならば、俺も好きにさせてもらうぞ。大声で避難を呼びかけてやる。逃げない奴はこのたてがみで追い散らして逃がしてやる。俺はここのやつらを殺させないぞ!」 サフガーはそう言い放ち、宿の窓、2階の窓から飛び出して行ってしまいます
2018-12-22 16:17:04「あぁ、もう、ザフガーちゃんたら、また勝手に・・・」 そう言って、ディード姐さんが窓の外に目をやると、宿の周囲に人々が集まってきています。
2018-12-22 16:17:25集まった人々は、アーヴィ、シギィ、ザフガー、エルダン、ディード姐さんに 救われた人、その家族、その友人、その話を聞いた人々でした。 そして、その人数は、もはや町全体に広がっていたのです。
2018-12-22 16:18:00「お前たちー! 妻や娘、愛する人を守りたいだろう! 武器をとれ!戦うのだ! 無駄死にではないぞ! 生きるために、逃げるために武器を取るのだー!」 樹上から持ち前の大声で、ザフガーが民衆を煽り立てます。
2018-12-22 16:18:48「アーヴィちゃん、そういえば、約束してたわよね。今してあげるわ。その約束」 ディード姐さんは、アーヴィの顔に素早く化粧を施し、オジランディオンの宝箱にあった王冠を、その頭に被せます。
2018-12-22 16:19:46エルダンはマンドリンを手にアーヴィの隣に立ちます。 「何かを継ぐっていうの、そういうの僕は嫌いだけどさ。今の君には似合っていると思うよ。アーヴィ。いや、アールヴィーネ・レスト」 エルダンのマンドリンがにぎやかな曲を奏で、窓に人々の視線が集まります。
2018-12-22 16:20:11「天と地と、海と海の間に生きる全ての者よ。見よ、聞けよ。この乙女こそ、かの大王国、レスティラーの血筋を受け継ぎ、善なる人々の守護者たる。アールヴィーネ・レスト。さあさあ皆ども尊身を仰げ!」 芝居がかった調子で、エルダンが人々を扇動します。
2018-12-22 16:27:09アーヴィは決意を固めるために少しだけ下を向き、そして、民衆に面を上げつつ、窓から身を乗り出します。 「皆、私はアールヴィーネ・レスト。皆のことを守りたい。その為に、協力してほしい」
2018-12-22 16:27:19そして、爆発的な歓声が沸き起こります。 「アールヴィーネ様!」 「女王様!!」 「私たちの女王!」 「俺たちの王国が蘇った!」
2018-12-22 16:27:33「だから、一旦撤退する。この谷の力を集めて、赤い手に打ち勝つんだ。皆、そのために、生きてここに戻ってくるために、今は避難してほしい」
2018-12-22 16:28:20「おー!」 「流石は女王だ、俺たちのこと、考えてくれてる!」 「いつかこの街に帰ってこれるのね!」 「避難かー、大変だけど、あの人たちと一緒なら!」
2018-12-22 16:28:31街の人々と英雄達の様子に圧倒されつつも、ソラナ隊長は声を絞り出します。 「アールヴィーネさん、それにエルダンさん、先ほども申し上げましたが、この街の為にあなた方を拘束するわけにはまいりません」
2018-12-22 16:28:42アーヴィは振り返り、ソラナ隊長にはにかみの笑顔を向けます。 「どうやら、そうもいかないみたいだ。でも、私たちにやることがあることは、わかっているよ」
2018-12-22 16:28:53「でしたら、今からでもすぐに、この街のことは放っておいて」 アーヴィとソラナの会話に、曲を弾き続けながらエルダンが割って入ります。
2018-12-22 16:29:03エルダンは、曲を盛り上げます。 「赤い手の襲撃に備えて、水桶や、民兵の配置に戦術、資源の保管、人々の戸締りの徹底を実行させたのはソラナ隊長。君の手腕だ。君こそが、この人たちを守るのに、ふさわしいと思うよ」
2018-12-22 16:29:24