いきものがかり水野良樹さんの「ポップミュージック」

水野良樹（ いきものがかり / HIROBA ）official @mizunoyoshiki

これは水野良樹、個人として。音楽、そして音楽にまつわることを生業にしている人々。今は直接的な救援に重きがおかれるべきだが日が経てば経つほど音楽が被害に遭遇した人々の精神的なプラスになる可能性が増してくる。彼らにとっての音楽の重要性、価値が増してくる。考え、準備しよう。

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日常を続けることは、被災者ではない人間の責務のひとつでもあろう。そう言い聞かせて、作業場に戻り、自分に課された作業を今はします。

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歌詞を書いていて思う。いろんな単語のいろあいが変わっている。３月１１日を境に、「希望」とか「日常」とかいう言葉のいろあいは、ちょっと変わった。

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いい曲つくれなきゃ俺なんてなんの意味もないわけで。やはりそこに集中するべきなんだろうな、使命として。別に悪い揺らぎ方じゃないと思うけど少し揺らいだここ数ヶ月。ぼやっとした言い方だけどさ、少なくともいい曲つくれれば、誰かがハッピーになるんだよ。メンバーもスタッフもしいてはリスナーも

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神戸で食事。店のお母さんは齢80を越えてお元気に厨房に立たれていた。先の阪神の震災では火災でご自宅に被害を受けたとのこと。「でも、あの時は前を向くしかありませんでしたな。」とにこやかに。戦争も震災も越えてきたひとの笑顔に素直に感動した。帰ったらできることを。普段通り、曲を書こう。

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ぼくだってなにかを変えたいんだ　 　NEW WORLD MUSIC　　　 だいすきなキミに希望（ひかり）を届けたい　音楽（ことば）を聴かせたい　「世界よ変われ」 新曲の名前は「NEW WORLD MUSIC」です。

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震災ソングはやっぱ自分は書かないかな。ポップミュージックをひたすら信じてる。今まで自分が戦ってきたポップミュージックはこういうときにこそ誰かのために機能すると思ってる。こんなときに震災ソングとか安易に作ったら「じゃあお前は今まで何のために曲つくってきたんだよ」って自分に思うんだよ

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まぁ、そもそも震災ソングってほんとひでぇ単語だな。

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いつも悲しみはそこにある。気づいていないだけで毎日誰かが大切なひとを失う現場はある。地震であろうと事故や病気であろうとそれらを比べることなんてできないし、するべきでもない。でもどんな悲しみにもポップミュージックは誠実であるはずだ。少なくとも俺が憧れたのはそんなポップミュージックだ

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「さよならは悲しい言葉じゃない」なんて歌詞を、いま被災地で、自分は歌えない。何も失っていない僕はその場にいる人たちの抱えている感情を本当の意味では理解できていないからだ。でも避難所では被災した中学生たち自身がYELLを歌い、皆が泣いていたりする。そのズレに僕は多くを気づかされる。

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「ＹＥＬＬ」について書きましたけど、曲を否定しているとか、歌詞に後悔しているとか、そういうことではないので。自分を責めているとか、そういうことでもないです。全く違います。常日頃言っていますが、大事なのは聴き手の物語。その前提のうえで、いま自分は何をなすべきかのヒントをもらったと。

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小田急線から桜を見る。駅まで送ってくれた親父がひとこと「今年は桜もあんまりみんなに相手にしてもらえなくてかわいそうだな」春は来ている。

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桜は咲いている。誰かの気持ちにおしつけがましく踏み込みもせず、ことさらに責めたり、声を挙げたりもせず。ただそばにあるものとして。あるときは、曲も、そういうものになれるんだと思う。

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「YELL」のどんケツはDmじゃなくて、D。マイナーじゃなくて、メジャー。希望へのD。「帰りたくなったよ」の間奏終わりはA♭／B♭じゃなくてA♭m／B♭。メジャーじゃなくてマイナー。静かに立ち上がる声へとつなぐA♭m／B♭。

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10年が経ち、半年が経ち。もちろんそれ以外にも数えきれないほどの悲しい出来事があって。そのなかで僕はこの”今”を与えられていて。だからこそ、ちゃんと笑い、ちゃんと泣き、ちゃんと生きようと思う。

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大学の入試のとき。小論文の課題文が「ふるさと論」とかいうもので。ようは共通記憶の変化、溶解について話したものだったような個人おぼろげ記憶があるんだけれど。それが、自分を完全には表現の主体としない不特定多数に投げる音楽を作るうえで大きなヒントになった。でもきっかけがそもそもおぼろげ

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「うさぎ追いし かの山 小鮒釣りし かの川」うさぎを追ったことも小鮒を釣ったこともないんだけどね。でもなんか感じるわけで。「わすれがたきふるさと」ってくるとまぁわかりやすいんだけど。なんて越えていく曲なんだろうと。

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卒業アルバムが皮の表紙じゃなくても、わーって思うわけで。

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「これは実話ですか」「あなたがこの曲にのせたメッセージは？」と、個の物語の発現をすごく求められがちなんだけど、なんかそこにむにゃむにゃ反抗してるんよね。でも個の物語を極限まで詰めると、ブラックホールじゃないけど、向こう側で普遍につながっていったり。

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噺家さんがそばを食べる場面を演じたり、主人と奉公人の高低差のある人間関係を演じてみせたり。話術、表現の巧みさでそこにお箸と御碗がたち現れるんだけどお客さん、みんな違う箸をイメージしてると思うの。個の世界の中で。でも同じところで笑ったり。「リアリティがあるよね」って口にしたりする。

水野良樹（ いきものがかり / HIROBA ）official @mizunoyoshiki

でも噺家さんの技術の如何によって、箸と御碗がうまくたち現れる噺とたち現れない噺があるわけで。そもそも無数の箸と御碗が客席のお客さんの頭の中にあるから、困難なはずなんだけど。その差が生まれるというところに、普遍ってなんだろうと。

水野良樹（ いきものがかり / HIROBA ）official @mizunoyoshiki

共通記憶？普遍らしきもの？（いまだにそれがなにかはわからない、もしくははっきり表現できる言葉を自分が持っていない。）から入って、聴き手の個のパーソナルな物語とか、心情とか、そこに接近する。ってことなんだと思うんだけど、たぶん、その過程でさらにそこに変化を与えようとしていると。

水野良樹（ いきものがかり / HIROBA ）official @mizunoyoshiki

と、小難しい風なことをさも小難し気になんちゃってしながら、車を待っていると。昨日買ったプリン食べよっかな。

水野良樹（ いきものがかり / HIROBA ）official @mizunoyoshiki

でも、やっぱ「世界よ変われ」なわけですよ。

水野良樹（ いきものがかり / HIROBA ）official @mizunoyoshiki

夢を持っていないことはあなたの価値を無意味にするものではないと思うんですよ。夢を持っている人がどうかってのはひとまず置いといて。少なくともあなたの価値がマイナスにはならないと。「夢がないと輝けないぞ」とか適当に言われちゃったら心配してくれてありがとうって言って全力で受け流せよと。