松原耕二『ここを出ろ、そして生きろ』をめぐる連続ツイート

2012年元旦、松原耕二さん(@matsubarakoji )の小説『ここを出ろ、そして生きろ』に対して著者自身がよせた連続ツイート。報道職のかたわら、どうして小説を書き始めたのか、twitterでの縁で出版することになった経緯、閉塞感のある時代で生き抜くヒントなど本書のメッセージについて語られている。
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松原耕二 @matsubarakoji

年の初めだから「連続ツイート」やってみます。去年10月に出した初の長編小説『ここを出ろ、そして生きろ』をめぐるツイートです。今の時代だからこそ是非に読んでもらいたい作品です。なぜ報道の人間が小説を?と不思議な顔もされるので、年の初めに免じて説明させてください。

2012-01-01 13:58:41
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(1)書き終えたのは、震災の一週間前だった。それから3ヶ月、週末ごとに被災地に通った。そこで被災者の方々と向き合って感じたことと、この小説で言いたかったことは同じだと気づいた。難しい時代を生き抜く、そのヒントがこの小説にはあると信じている。(続く)

2012-01-01 13:58:49
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(2)この小説はNY時代に書き始めた。エルサレムに旅行に行き、空港のセキュリティーのあまりの厳しさにうんざりしていた時、これをファーストシーンにした物語が描けると確信した。NYに戻って机に向かい、登場人物が動くままに物語を進めていった。(続く)

2012-01-01 13:59:02
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(3)NY時代にまだ暗いうちから起き出して、出勤前の2時間を執筆にあて、休日にも朝から夕方まで書き続けた。1行も書けない日もあったし、出版の見込みがあったわけでない。でも書かずにはいられなかった。自分の中に突き動かすような何かがあったからだ。(続く)

2012-01-01 13:59:11
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(4)NYに赴任した時、本当はアメリカをテーマにしたノンフィクションを書こうと思っていた。だが支局長に仕事はネタの振り分け、人事、会計、接待などなどあまりに忙しくて、ひとつのテーマを追って取材する時間がとれないことは明らかだった。(続く)

2012-01-01 13:59:20
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(5)そこで小説を書こうと思い立った。去年11月に文庫になった人物ノンフィクション「勝者もなく、敗者もなく」を、当時読んでくれた作家の方が、小説を書いてみればと薦めてくれた言葉を思い出したのだ。それから早朝の2時間を執筆にあてた。(続く)

2012-01-01 13:59:28
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(6)小説なんて自分とは関係ない、別の世界の人が描くものだと思っていた。果たして自分に書けるのか、そのあてもなかった。人を描きたいという思いからメディアの仕事についたが、その日のニュースに追われてなかなか描ききれない。そんな思いも蓄積していた。(続く)

2012-01-01 13:59:43
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(7)開高健もフィクション、ノンフィクションの両方を書いたではないか。人を描くという意味では同じだ。そう思い定めてフィクションに挑んだ。もちろん簡単ではなかった。試行錯誤を繰り返した。その中で小説を書く苦しさと楽しさを知った。(続く)

2012-01-01 13:59:49
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(8)NYから帰国するときには、中編2本と、書きかけの長編1本、短編が4本が手元に残った。出版した『ここ出ろ』は中編の1本を肉付けし完成度を高めたもの。今も机の引き出しの中に眠る作品も、かわいい子どもだ。さあ、どう育てるか。(続く)

2012-01-01 13:59:57
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(9)これはツイッターが生んだ小説でもある。ツイッター上で10年ぶりに再会した編集者の方、ツイッターで出会った作家の方と3人で食事をし、話の流れで机の中に眠る原稿があることを白状した。それがすべての始まりだった。今思っても不思議な展開だ。(続く)

2012-01-01 14:00:05
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(10)この小説が恋愛小説だと思って書いたことはなかった。極限の世界に投げ込まれた人間が、どうその運命に抗って生き抜くか、を描いたつもりだった。林真理子さんが帯文に「壮大な恋愛小説」と評してくれて、恋愛小説だったんだ!と編集者と驚いた。(続く)

2012-01-01 14:00:13
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(11)この小説は仕事で悩んでいる人にも読んでもらいたい。主人公のひとりが語る言葉。「ぼくらの仕事は、大聖堂を建てるようなものじゃないかな。大聖堂をつくる建築家や職人は、自分たちが死ぬまでに建物が完成することがないと知っている。絶対に、だ」(続く)

2012-01-01 14:00:22
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(12)「それでも彼らはやめない。毎日、仕事場に出かけてはレンガをひとつ、またひとつと積み重ねていく。ぼくらも同じだ。誰も大聖堂の最終的な姿を見ないまま死ぬだろう。それでも続けるのはなぜか。それが正しいことだと知っているからだ」(続く)

2012-01-01 14:00:29
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』(13)仕事に迷っている人、行き詰まりを感じている人、やりがいを見つけられない人、新しい世界に飛び込みたい人、そんな人にも読んでもらいたい。ぼくも毎日、悩むたび自分に問いかけながら暮らしている。大変な今の時代にこそ読んでもらいたい。(終わり)

2012-01-01 14:00:42
松原耕二 @matsubarakoji

『ここを出ろ、そして生きろ』をめぐる連続ツイート、長くなってごめんなさい。活字・テレビを通して、2012年も人間を描いていきたいと思っています。2012年最初に、ぜひ小説『ここを出ろ、そして生きろ』を読んでいただければと思います。今年もどうぞよろしくお願いします!

2012-01-01 14:00:51