エリザ氏による、16世紀イギリスの奢侈禁止令の背景説明

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エリザ @elizabeth_munc

いんたーねっと講談師。イギリス歴史面白講釈。軍記物語り。特定キャラばっかAIアートで描いてもらってる。

🇬🇧エリザ🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿 @elizabeth_munc

16世紀、エリザベス1世時代に入る少し前からイギリスでは奢侈禁止令が乱発されてて、乱発されてると言う事は誰も言う事を聞かないんだけど、名宰相セシルまでかなりの熱心さで奢侈禁止令に取り組んでる。つまり形だけのものではない。 何故こんな事をしたのか。

2024-05-05 15:08:16
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一つには身分秩序が動揺してる。 テューダー朝時代はヨーロッパ全体がインフレの中にあり、地代収入で食べてる伝統貴族の収入が相対的に低下し、それを新興階級ジェントリが追い上げてる。日本でも武士達が同じ目に遭ってるね。 ジェントリに貴族と同じ格好をして欲しくない。

2024-05-05 15:10:51
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当のジェントリ達もしかし当初は奢侈禁止令に賛成してた。 別に彼らが身を弁えて謙虚に振る舞うつもりがあった訳でなく、当時のモードの中心はイタリアやスペイン、フランスであって間違ってもイギリスではない。即ち流行の服は全て輸入となる。 保護貿易的な観点から彼らは奢侈禁止令に賛成した。

2024-05-05 15:13:23
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つまり身分制度の強化と経済政策と言う二重の意味から奢侈禁止令はエリート達に支持されてた。 ところがエリザベス登極辺りからジェントリ達は突然奢侈禁止令に反対し、庶民院の賛成が得られないので奢侈禁止令は法としては成立せず、単に布告としてのみ出される。

2024-05-05 15:15:59
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新時代のエリートを自認するジェントリ達は奢侈禁止令が本質的に自分たちに弁えを要求するものだと気に食わなかったのが一つ。 もう一つは、消費する事を罰するやり方はそもそも保護貿易的ですらない事に気付いた。お金の流れを滞らせては国力が伸びない。

2024-05-05 15:18:59
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それでも奢侈禁止令は身分制を護持したい人達には重要で、何度も何度も布告されるも、誰も守らず、取り締まる方法もなく、やがてなし崩し的に終了する。 人間の欲に蓋をするのは難しいし、蓋をしてしまったら消費が伸びないんだよね。贅沢は経済の本質だ。

2024-05-05 15:21:41