思春期のコを持つすべての親のために(白雪姫のテーマby.河合隼雄の言葉)

子どもが思春期に突入すると、反抗期やダンマリなどが始まるが、それは彼らが成熟するためのとても大切な時期なんだと言うことを、白雪姫というメルヘンを題材に河合隼雄先生が解いてくれている。
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河合隼雄のことば @hayaokawai

(1) 白雪姫は小人たちと一緒にしばらくは楽しく過ごす。 -中略- 小人たちはどうせ継母がやってくるだろうから、誰も家に入れてはいけないと姫に固くいいつけておくのに、彼女はやすやすとだまされて、継母の変装を見破ることもできない。 -中略-

2012-01-12 23:38:08
河合隼雄のことば @hayaokawai

(2) こんなのを読むと、白雪姫というのはなんとおめでたいのだろうと思う人もあるだろう。せっかく小人が忠告しているのに、それを忘れて、胸ひもとかに心惹かれて危険を冒してしまう。もっとちゃんと小人のいいつけを守っておればいいのに、と思う。

2012-01-12 23:41:14
河合隼雄のことば @hayaokawai

(3) ところで、もし白雪姫が忠実に小人たちの忠告を守っていたらどうなっていただろう

2012-01-12 23:42:21
河合隼雄のことば @hayaokawai

(4) 胸ひもにも櫛にも、つまり女らしいアクセサリーなどに目もくれず、ひたすら七人の小人の家政婦的役割に専念していたら、おそらく長年月の後に、彼女もしわだらけの白雪婆さまになって、「私の生涯は、この七人の小人のための献身の一生でございました」と述懐したりするのではなかろうか。

2012-01-12 23:44:41
河合隼雄のことば @hayaokawai

(5) それもまたひとつの立派な生き方であるが、そればかりがいいとも言えない。他に生き方はいろいろあり、白雪姫は異なる生き方を選んだ、と言えるだろう。

2012-01-12 23:47:23
河合隼雄のことば @hayaokawai

(6) 白雪姫の少女らしい好奇心、美しくありたいと願う気持ちは、小人たちの「安全第一」の人生観を破り、大変な危険を冒し、遂には死と同然の状態となり、ガラスの棺のなかに身動きもせずに居ることになる。しかし、これも次の王子の出現を待つのに必要な状態と考えられないだろうか。

2012-01-12 23:50:43
河合隼雄のことば @hayaokawai

(7) 少女が徐々に女性らしくなり、髪形を気にしたり、アクセサリーに関心が向いたりしているうちに、「内閉の時期」に入ってしまったと感じることはないだろうか。

2012-01-12 23:53:19
河合隼雄のことば @hayaokawai

(8) かわいかった子がなんとなく無愛想になり、無口になる。体の動きも重くなったように感じられる。実は、このような時期は成長のために、ある程度必要である。心のなかはこのような状態でも、何とか外面は普通に取りつくろって生きている子も多い。

2012-01-12 23:57:02
河合隼雄のことば @hayaokawai

(9) このような時期を、私は「さなぎ」の時期とも言っている。毛虫が蝶になる間に「さなぎ」の時期があり、その時は、まったく外的な動きがなく殻のなかに閉じこもっているが、内的には実にものすごい変化が生じている。この内的変化を成就せしめるためには、外の堅い守りが必要なのである。

2012-01-12 23:58:36
河合隼雄のことば @hayaokawai

(10) 子どもが「さなぎ」の時期に入ると、親としてはどうしていいかわからないような気持になるときがある。お互いの間に気持の交流がないように感じるからである。子どもがどこか他の世界に行ってしまったように感じる。

2012-01-13 00:01:24
河合隼雄のことば @hayaokawai

(11) しかし、焦らずに、外側から見守るような気持ちでいると、子どもはだんだんと成長し、またお互い話し合ったり、理解し合ったりできるようになる。さなぎから蝶が生れてくるのだ。

2012-01-13 00:04:05
河合隼雄のことば @hayaokawai

(12) さなぎの時期に親があわてて、その殻を破るようなおせっかいをすると、子どもは破滅してしまう。子どもにとって必要な内閉の時期を尊重することは、親にとってなすべきことである。しかし、自分の不安の高い親は、子どもの内閉に耐えられず、ついつい余計なことをしてしまう。

2012-01-13 00:06:01
河合隼雄のことば @hayaokawai

(13) 少女の内閉の重要性は、昔話によく出てくる。白雪姫のガラスの棺はその典型である。一般によく知られている例としては、「眠りの森の美女」のお話のなかの、姫の「百年の眠り」をあげることができる。百年は長すぎるようだが、これはその必要性を強調するための数であろう。

2012-01-13 00:07:12
河合隼雄のことば @hayaokawai

(14) グリムの昔話のなかの「ラプンツェル」では、少女は高い塔のなかに閉じ込められている。このような内閉の時期を十分に体験していると、大体は、そこに、一人の男性が現れることになっている。 -中略- 内閉の時期の終りには、異性が現れるものである。 [了]

2012-01-13 00:10:20