内田樹先生@levinassien 【「待ったなし」という条件つきの提言について】」

東京大学が秋入学へシフトする話を皮切りに、 「待ったなし」というもの言いについての考察。
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内田樹 @levinassien

東大が秋入学にシフトするようです。その理由が「検討と行動に『待ったなし』のスピード感が求められている」。「待ったなし」を選択の根拠にあげる人は、その選択が失敗した場合の「言い訳」をはじめから用意しているように僕には見えます。

2012-01-18 14:09:30
内田樹 @levinassien

どうして、「熟慮の末これしかないと全会一致で決定しました」と言わないのでしょう?

2012-01-18 14:10:48
内田樹 @levinassien

ほんとうに「待ったなし」なのは教育行政そのものの「ボタンのかけ違い」なんですけれど、これは60年代からあとずっとかけ違っているので、誰もそれを修正することができるということ自体を思いつかないのです。「待ったなし」でぽんと頭に浮かぶようなアイディアは定義上凡庸なものでしかありません

2012-01-18 14:32:18
内田樹 @levinassien

僕も「待ったなしの改革」を大学で提言したことがあります。教員評価システムです。教員の研究教育学務の業績を数値的に評価して、資源分配に適用するという「選択と集中」のグローバリストモデルの旗振りを4年間やりました。そのときに何度も教授会で「待ったなし」を繰り返しました。

2012-01-18 14:36:34
内田樹 @levinassien

あれは呪文ですね。あとからなぜもっと熟慮しなかったのか、猛省しました。大学の同僚のみなさん、ほんとにごめんなさい。ウチダはバカでした。

2012-01-18 14:37:24
内田樹 @levinassien

そのときに僕は評価コストを過小評価し、かつ資源の傾斜配分の効果を過大評価しておりましたが、実際はまったく思い違いでした。アクティヴィティの高い教員たちを業績査定のための会議と書類書きに縛り付けることで、大学は教育研究に使えたはずの膨大な時間を失ったのでした。

2012-01-18 14:43:23
内田樹 @levinassien

「人間は自己利益の増大のために働くときに能力を最大化する」というロジックで組織を再編する人のピットフォールは、そう言っている当人はけっこう「意地」や「義理」や「思い込み」でそうしているのであって、自分の行動が自己利益を求めてのものではないことに気づいていないことです。

2012-01-18 14:48:59
内田樹 @levinassien

「意地」や「義理」や「思い込み」は数値化できない、格付けできない、斉一的なしかたでは統御できない。でも、それこそが人間がオーバーアチーブを果たすときの根拠なんです。

2012-01-18 14:50:48
内田樹 @levinassien

教授会で僕の提案が通ったのは、「まあ、ウチダくんがあれだけがんばっているんだから、そのひたむきさを多としてようではないか」という先輩教授のひとことがあったからです。コンテンツの適正さではなくて、「一生懸命やってるから」が主たる理由だったのでした。

2012-01-18 14:53:04
内田樹 @levinassien

というわけで「待ったなし」という条件つきで提言されることの内容の適切性はそれが「待ったなし」であることによって少しも基礎づけられないということを申し上げました。おやかましう。

2012-01-18 14:55:42