@f_zebraさんによる使用済み燃料プールのリスクと福島第一原子力発電所4号機に関する考察

@f_zebraさんによる、使用済燃料プールの燃料棒がメルトダウンするためにはどのような過程を経て、最悪の場合に環境にどのような影響があるのか、福島第一原子力発電所4号機がそのような状況に至る可能性はあるのか、についての考察です。たいへん詳細で参考になるかと思います。 前スレ↓ 「@f_zebra さんによる福島第一4号炉燃料貯蔵プールの状況解説」 http://togetter.com/li/243829
73
Flying Zebra @f_zebra

さて、今更ながら4号機の現状と補強工事の内容について調べてみました。なぜ補強工事が必要だったかについては、具体的な危険が予想されたからではなく、安全性解析のパラメータが不十分だったため、安全尤度を増すために行ったというのが私の理解です。

2012-01-19 23:43:05
Flying Zebra @f_zebra

建屋全体が健全であれば、設計条件から耐震性は簡単に計算できます。ところが外壁の一部が破壊されていたので、FEMで解析することになりました。正確に解析するには、どこまで破壊されてどこまでが強度部材として機能するのか、どの梁がどれだけ強度を保っているかなどの詳細なデータが必要です。

2012-01-19 23:43:52
Flying Zebra @f_zebra

当時そこまでの調査を実施するのは難しかったので、代わりにクリティカルな場所に強度部材を追加したのだと理解しました。そうすれば、不明な箇所は強度ゼロと仮定しても安全性を確認できるからです。仮に工事着手前に同規模の余震に襲われたとしても、何も起きなかった可能性が高いでしょう。

2012-01-19 23:44:49
Flying Zebra @f_zebra

今回はSFP直下のスペースに鉄柱を立て、コンクリートを充填することで比較的簡単に強度部材とすることができました。もし施工が困難で、逆に解析に最低限必要な箇所の健全性確認の方が簡単であれば、補強工事をすることなく安全性を確認できていたかもしれません。

2012-01-19 23:46:46
Flying Zebra @f_zebra

具体的な解析パラメータを見たわけではないので推測に過ぎませんが、東電も保安院もこの問題の優先度を高く扱っていなかったことからも妥当な推測だと思っています。余震でSFPに何かあった場合、誰よりも困るのは東京電力だからです。

2012-01-19 23:48:02
Flying Zebra @f_zebra

他の方へ説明する際の根拠にはなりませんが、私自身は学会などで東電や他の電力、規制側の技術者と仕事をしていて、だれもそこを気にしていないことからも「重要な問題ではない」という認識を強めていました。

2012-01-19 23:49:09
Flying Zebra @f_zebra

何か起きたときに一番困るのは東電、ということについて説明します。東電が困ることは説明の必要がないでしょう。他の人はあまり困らないということについてはもう少し説明が必要でしょう。

2012-01-19 23:50:17
Flying Zebra @f_zebra

まず、巨大な余震やその他何らかの外部事象によって4号機のSFPが倒壊する可能性はもちろんゼロではありません。その時には建屋全体が倒壊し、当然5、6号機を含め1Fの全ての建屋が壊滅的な被害を受けているでしょう。4号機SFPの問題は、巨大な問題のごく一部でしかなくなります。

2012-01-19 23:51:02
Flying Zebra @f_zebra

言うまでもなく、そんなことが起こる可能性は3.11と同程度の余震が起こる可能性より更に何桁も低く、「ゼロではない」というだけで真剣に考える価値はあまりないでしょう。同程度の余震であれば、1~3号機の冷却システムは被害を避けられないでしょうが、4号機が倒壊することはありません。

2012-01-19 23:53:03
Flying Zebra @f_zebra

とは言うものの、工学のベースとある程度の予備知識がない人に納得してもらうのは難しいでしょう。そこで、仮に4号機SFPが「倒壊」し、冷却水が抜けて燃料がバラバラになったらどうなるかも考えてみましょう。

2012-01-19 23:58:17
Flying Zebra @f_zebra

原子炉建屋全体が破壊されるような巨大地震ではなく、4号機のSFP「だけ」が倒壊するというのがどういう状態かなかなか想像できないのですが、仮にSFPの底が抜けて冷却水と使用済燃料が下のフロアに落下するというのを考えます。

2012-01-19 23:59:51
Flying Zebra @f_zebra

燃料集合体が気中に出ると一気に周囲の線量率が高くなりますが、その時点では放射性物質は出ていません。燃料棒が衝撃で壊れていても、ペレットの温度が低いうちは漏洩はごく微量に留まります。そのまま放置されると、温度が上昇しやがて被覆管が溶け、次いで燃料ペレットもバラバラに砕けるでしょう。

2012-01-20 00:09:54
Flying Zebra @f_zebra

何の対策も取られなかった、または失敗した場合、先に考察したようにセシウムなどが環境中に放出されますが、到達距離は限定的で、大部分は発電所敷地内またはごく近傍に留まることになります。強い放射線を出す短半減期核種がないこともあり、警戒区域外への影響は限定的でしょう。

2012-01-20 00:16:35
Flying Zebra @f_zebra

1F4号機の場合、原子炉自体は健全というか空っぽで、SFP以外にはややこしい所はありません。封じ込めるのはそれほど難しくないでしょう。放射性ガスは出ないので、HEPAフィルター程度でほとんど補足できそうです。

2012-01-20 00:23:57
Flying Zebra @f_zebra

そろそろ終わります。4号機SFPに何の危険もないなんてことはありませんが、1~3号機の原子炉に比べてより危険だというのには大きな違和感があります。実際には、危険性はずっと低いと思います。丁寧に調べたわけじゃないので何か見落としているかも知れません。

2012-01-20 00:32:35
Flying Zebra @f_zebra

これまで私が見かけた限りでは、4号機の危険を指摘する意見は定量的な考えを無視しているものや盛大に的を外したものばかりで、なるほどと思えるものは皆無でした。私の一連のツイートに対して指摘、反論があればぜひお願いします。

2012-01-20 00:37:10
Flying Zebra @f_zebra

発電所内の使用済燃料ピットに必要以上の量を溜め込むべきでないのは全くその通りで、さっさと中間貯蔵施設なり再処理施設に送るべきだし、その前提で設計されている。現状は、受け入れ先のない燃料が溜まり続けている。これは日本の原子力政策全体の問題。

2012-01-20 01:17:37
ake @ake_____

@f_zebra たいへん参考になる考察をありがとうございます。素人の素朴な疑問なのですが、原子力工学において、使用済み燃料棒を大気中に放置してどのように溶融するかを観察、といった研究はありますでしょうか?厳重な閉鎖環境で実施したとしても後の処理がたいへんそうですが…

2012-01-20 04:49:23
Flying Zebra @f_zebra

@ake_____ 実際に溶融させるような実験はしていないと思います。数年以上冷却した後の、乾式キャスクでの熱解析には多くの知見があります。

2012-01-20 08:13:46
ake @ake_____

@f_zebra ご返信ありがとうございます。なるほど、中間貯蔵用の乾式キャスクというのがあるのですね。ずっと水冷と思っておりました。ありがとうございました。

2012-01-20 08:35:08
Flying Zebra @f_zebra

福島第一原発の使用済燃料ピットの状況について、先週の第6回意見聴取会の資料で重要な情報が説明されているのを見つけたので、解説しておきます。配付資料は以下で公開されています。http://t.co/t07hisND

2012-01-26 12:06:48
Flying Zebra @f_zebra

各号機のSFPの状態をおさらいしておくと、1号機は建屋爆発によってSFPが天井に覆われており、内部の状況は未確認。2号機は特に問題なし。3、4号機はピット内に瓦礫が落下しており、3号機では燃料の状態は未確認。4号機はラックに収納されて大きな破損のないことが確認済です。

2012-01-26 12:07:31
Flying Zebra @f_zebra

プールの水を採取して核種分析した結果も示されています。1~3号機では建屋地下の滞留水より1桁程度低い濃度のセシウム、4号機ではさらに2桁以上低濃度のセシウムが確認され、同時にヨウ素131も確認されています。

2012-01-26 12:09:05
Flying Zebra @f_zebra

未臨界から時間の経った使用済燃料にはヨウ素131はほとんど存在しないため、確認された放射性物質はセシウムを含めて使用済燃料から漏れたものではなく、主に事故時の炉心由来の可能性が高いと考えられます。

2012-01-26 12:10:01
Flying Zebra @f_zebra

瓦礫が落下した際に燃料の一部が機械的に損傷した可能性は残りますが、燃料の溶融のような大きな損傷があったとすれば核種分析の結果が説明できません。以上より、燃料の状態が直接確認できていない1、3号機でも使用済燃料に大きな損傷は起きていないと考えられます。

2012-01-26 12:11:09