f_zebraさんの「エネルギー問題について思うところ」

知識がないのでうまく言えないんですけど、こういう冷静な(冷徹なとも言えるかも)が議論がたくさんあってこその原発問題だと思います。 色々な考え方や切り口があって、こうやってその色々を示してもらえるのは市民としてとてもありがたいです。 初めてのまとめなので、不手際がありましたらごめんなさい。 ご指摘くださいませ。
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Flying Zebra @f_zebra

エネルギー問題について思うところを。食糧自給率について色々な議論がありますが、自給率が低すぎることを問題視する意見の多くは、その理由を安全保障に求めているようです。食べることは人間の生存に直接関わることだけに、飽食の世代でも食べ物が無くなることへの不安は大きいのかもしれません。

2012-02-04 12:24:48
Flying Zebra @f_zebra

国民の食糧が国内で確保できるのは安心ではありますが、我が国ではエネルギー問題を無視して食糧自給率を語ることには実はほとんど意味がありません。と言うのは、現代の食糧生産は大量のエネルギー消費なくして成り立たず、日本はそのエネルギーの96%を輸入しているのです。

2012-02-04 12:26:32
Flying Zebra @f_zebra

なお、エネルギー消費のうち、最終的に電力として消費される割合は2008年度のデータで23.6%です。1970年度の12.7%からはほぼ倍増しており、電力化率は現在も増加の一途です。電力のうち原子力を「純国産エネルギー」として自給分に含めると、自給率は4%から18%に増えます。

2012-02-04 12:27:25
Flying Zebra @f_zebra

原子燃料の原料であるウランは全量を輸入しているのですが、エネルギー密度が桁外れに高いため備蓄が容易で、市場動向や紛争などの地政学リスクに左右されにくいことから資源依存度の低い「純国産エネルギー」として扱われることがあります。

2012-02-04 12:28:09
Flying Zebra @f_zebra

エネルギー密度とは、ある体積なり重量なりのエネルギー源からどれだけのエネルギーを取り出せるかという値です。大型原子力発電所が1年間運転するのに必要な原子燃料は約35tですが、同じ電力を石油火力で発電すると200万kL、石炭火力なら300万tの燃料を必要とします。

2012-02-04 12:35:53
Flying Zebra @f_zebra

さらに、今や幻となりつつありますが、核燃料サイクルが完成した暁には国内で新たな再処理燃料を産出できるようになるという願いも込めての「純国産エネルギー」だったのでしょう。

2012-02-04 12:37:12
Flying Zebra @f_zebra

一次エネルギー(電力は二次エネルギー)供給に占める化石燃料の依存度は83%です。主要国ではフランスが51%と際立って低く、これは原子力発電の比率が高いことによるものでしょう。電力以外での一次エネルギーはほぼ全てが化石燃料ということになります。

2012-02-04 12:37:51
Flying Zebra @f_zebra

エネルギーの輸入が完全に止まれば、食糧の生産はできず、調理もできず、交通機関は動かず、あらゆるライフラインが止まり、短期間のうちに社会は破綻するでしょう。エネルギーを将来に渡って安定的に確保(日本の場合はイコール輸入)することは、日本が生存していく上での必須条件です。

2012-02-04 12:39:34
Flying Zebra @f_zebra

日本にとって、エネルギーに関する最大のリスクは供給リスクです。市場や国際情勢に左右されるリスクを減らす特効薬的な方策はなく、基本的にはリスクを分散することしかできません。特定のエネルギー源、供給先、輸送ルートなどに依存せず、なるべく多様な調達先を確保しておく必要があります。

2012-02-04 12:41:32
Flying Zebra @f_zebra

今のところ、日本の社会は時期はともかくとして、いずれは原子力から脱却するというのがコンセンサスとなりつつあるように感じます。それが果たして「安全な社会」に貢献するのかどうか、少し慎重に考えてみたいと思います。

2012-02-04 12:43:03
Flying Zebra @f_zebra

供給リスクのような社会的要因を除いて、それぞれのエネルギー源にどういった固有のリスクがあり、その程度がどれほどなのかをなるべく定量的に評価してみます。輸送用燃料のように化石燃料以外での代替が難しいものは除き、ここでは発電用エネルギーに絞って考察します。

2012-02-04 12:44:01
Flying Zebra @f_zebra

まず、化石燃料やウランなどの地下資源は採掘、輸送、加工、貯蔵の各段階で事故のリスクがあります。水力、風力、太陽光などの自然エネルギーにはそれらがありませんが、施設の建設、運用中にはやはり事故の可能性があります。これらは地下資源でも同様です。

2012-02-04 12:45:42
Flying Zebra @f_zebra

リスクの定量評価には様々な方法がありますが、ここではそれぞれの発電用エネルギー利用に起因する死者の数で評価します。単位発電量(TWh:テラワットアワー)当たりの死者数の比較です。データはこちらから引用しました。http://t.co/inBOLuGD

2012-02-04 12:47:48
Flying Zebra @f_zebra

お断りですが、引用したのは個人のブログで、元の情報源、算定根拠などは不明です。アメリカ政府または国際機関のデータを利用しているようですが、トレースできませんでした。データの信憑性についての担保がないことを予めご理解下さい。http://t.co/inBOLuGD

2012-02-04 12:48:25
Flying Zebra @f_zebra

詳しくはリンク先を見て頂くとして、(死者数/TWh)を上位から並べてみます。石炭(161)、石油(36)、バイオマス(12)、泥炭(12)、天然ガス(4)、太陽光(0.44)、風力(0.15)、水力(0.10)、原子力(0.04)となります。

2012-02-04 12:50:19
Flying Zebra @f_zebra

石炭の死者が多いのは大気汚染が大きな原因で、特に中国が酷く、中国だけだと278人/TWhです。逆にアメリカだけなら15人と、石油の半分以下です。日本のデータはありませんが、排出基準が厳しいので更に少ないと思われます。

2012-02-04 12:51:07
Flying Zebra @f_zebra

太陽光は小規模な屋根上タイプがメインで、メンテナンス時の転落事故が多いとのことです。メンテナンスフリーのタイプが普及すれば「安全性」が高まるだろうとコメントされています。

2012-02-04 12:51:44
Flying Zebra @f_zebra

補足すると、屋根からの転落事故のような決して多いとは言えない死者数が影響するのは、分母である太陽光の発電量がまだまだ圧倒的に少ないからです。

2012-02-04 12:54:15
Flying Zebra @f_zebra

水力はかなり「安全」と言えそうですが、このデータは中国の板橋ダム決壊事故(17,000人死亡)の死者数を含めていません。これを含めると1.4人/TWhとなりますが、それでも天然ガスの1/3程度です。

2012-02-04 12:55:43
Flying Zebra @f_zebra

原子力が非常に少ないのは、発電量が大きい割に死者がほぼチェルノブイリ事故に限られるためです。チェルノブイリ事故の死者数は諸説ありますが、ここでは国連最終レポートの4000人という数字を採用しているようです。

2012-02-04 12:56:29
Flying Zebra @f_zebra

死者の数だけで安全性が評価できるわけではありませんが、人の健康に与える影響を定量的に比較するには他になかなか使える指標がありません。毒物の有害性評価などでも、半数致死率などで評価されています。

2012-02-04 12:57:32
Flying Zebra @f_zebra

ここで言いたいのは、原子力は安全だからどんどん推進しようということではありません。先に断った通り、このデータだけで判断するのは危険です。更に、エネルギー源の選択には供給リスク、言い換えれば調達性も考慮する必要があります。

2012-02-04 12:58:45
Flying Zebra @f_zebra

ちなみに、調達性の大きな要因となるコストについては政府や電力会社の試算はあまり当てになりません。市場動向や国際情勢で価格が大きく変動するのは化石燃料も同じですが、原子力に関するコストは政治的な要素が大きく、今後の政治判断次第でどうにでも変わり得ます。

2012-02-04 12:59:26
buvery @buvery

このリスクを死者で評価するのは止めた方がよいですね。原発事故は死者数は少ない。それは、初期のプルームが来ても逃げたり、屋内退避できるからです。ただし、社会的な損失は巨大なので、例えば経済損失で評価した方が良い。RT @f_zebra: (死者数/TWh)原子力(0.04)

2012-02-04 12:59:50
Flying Zebra @f_zebra

特に中間貯蔵、最終処分などのいわゆるバックエンド費用については、未だ具体的な計画が一つも無いにも関わらず非常に楽観的なシナリオに基づいてコストを算出しています。今後しばらくは天然ガスの供給過多が続くこともあり、原子力のコスト競争力はそれほど高くないと思います。

2012-02-04 13:00:45