「世界文学の楽しみ方」池澤夏樹&池内紀

2010年5月26日新宿サザンシアターで行われた「池澤夏樹個人編集世界文学全集」第二期完結記念&池内紀『ブリキの太鼓』完訳記念トークショーの覚え書き。
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こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

大学のパソコンからログイン。昼休み時間中に昨日のトークイベント「世界文学の楽しみ方」(池澤夏樹&池内紀)のまとめをします。

2010-05-26 12:26:15
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

まずは、世界文学全集第二期完結と『ブリキの太鼓』(ギュンターグラス)の翻訳記念を祝う二人。池内「私はこの時代にあってもまだ万年筆を使って手書きで原稿用紙に書いています。『ブリキの太鼓』翻訳の原稿用紙は全部で1605枚だった」

2010-05-26 12:30:26
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池内「翻訳というのは定額の貯金みたいなもので一度にバーッとやっても駄目。一日に少しずつやるしかない。石鹸と同じで最初はなかなか減らない、でも半分まで行くと一気に減る。それでまた小っちゃくなると減らない(笑)」

2010-05-26 12:33:22
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

そういう翻訳の難しさはあるにしても『ブリキの太鼓』には3つの難しさがあった。ドイツの1920~1950という「時代性」、舞台がドイツ郊外という「空間性」、ギュンター・グラスという人物の自伝などにも書かれている過激な「作家性」

2010-05-26 12:37:08
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

そして話題は池澤夏樹編集「世界文学全集」に。池内「J・ケルアック『オン・ザ・ロード』を従来通り『路上』と訳さなかった。池澤さんの全集に入っているのはそういうノマドの人たちの姿勢、つまり旅人の逃走感、道の途上であるという意識が強い作品が多いのではないでしょうか?」

2010-05-26 12:52:52
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池内「この中に入っているので言えば『アデン・アラビア』(ポール・ニザン)『パタゴニア』(チャトウィン)、私が訳したカフカの『失踪者』ル・クレジオの『黄金探索者』等、今までの世界文学は時代と地域にバランス感覚が大事であったけれど、この全集には<世界文学の旅性>がある」

2010-05-26 12:59:38
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池澤「世界文学全集のリストは確かに今言った意見として、私の好みの「旅」があると思います。しかしもうひとつは20世紀全体が「移動」の時代だった。移民や政治的問題として難民にならざるを得なかった人たち、自身の境遇について<言いたいことを持つ>そういった人たちがペンを持った時代でした」

2010-05-26 13:07:36
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池澤「20世紀後半のそういう「今」を表現した文学を選びたかった。そしてそれは私が読んで文句なしにおもしろかったもの、だから私のこの仕事は「読みなさい!」ではなく「面白いからよかったらどうぞ」という書評家の延長でした。だから私のこの全集は若い人にこそ読んでもらいたい」

2010-05-26 13:12:48
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池澤「だから、つまんなかったら読むのやめてもいい。『チャタレイ夫人の恋人』とかを10代で理解しろというのも無理。だから30代、40代になってから理解できるかもしれない、でもその年で理解するために若い時に触れておくのが大切です」

2010-05-26 13:19:08
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池澤「最後まで読めっていうのが学校教育の良くないところ。もし親がこの全集を買ったら子供に「読め」なんて言わないほうがいい。「こんなの読むなよ!」って言ったほうが子供は読むものです(笑)ここでいう『マイトレイ』(M・エリアーデ)とかね放っておいても刺激が強くて見ると思いますよ」

2010-05-26 13:25:18
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池内「長編小説には、読み終わった後の奇妙な浮遊感。別の世界にいたのが急に引き戻される感覚があります。僕も20代のころは背伸びして名曲喫茶で働いている綺麗なお姉さんの前で分厚い長編小説を読む格好をしたものです。内容は全然入らなかった(笑)」

2010-05-26 13:30:37
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

ここで世界文学全集第三集に収録予定の『苦海浄土』の作者石牟礼道子さんのビデオメッセージが上映された。印象的だったのは「『苦海浄土』を読むことで重荷を分け与えてしまうかもしれません」という石牟礼さんの言葉でした。

2010-05-26 13:36:26
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

メッセージが終わった後、池澤さんは次のように言った。「『苦海浄土』は確かに重く辛い話です。だけど幸福を知っているからこそ辛い話が書けます。それがとても美しい」

2010-05-26 13:41:12
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

池澤「日本文学として大江健三郎でも、中上健治でも村上春樹でもいい、でも彼らを選んでも僕がこれを選んだという<身振り>しか残らない。だからこそ『世界文学全集』のなかのひとつとして私は『苦海浄土』を選びました」

2010-05-26 13:45:10
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

というわけで以上です。ノートをもとに書いたので間違いはお許しください。世界文学全集第三集は7月から配本開始!第5巻『短篇コレクション1』 定価2,835円(税込)http://www.kawade.co.jp/sekaibungaku/list/03.html

2010-05-26 13:51:04
こみー【暗中飛躍】 @ConGrazie

第5巻『短篇コレクション1』にはルルフォも入ってるしバーセルミもある。コルタサルにオクタビオ・パスも!何て素晴らしいんだろう!一人の読書家として『池澤夏樹世界文学全集』をこれからも私は応援していきます。みんなも読もう、とりあえず何を読んでいいのか分からないのだったら是非!

2010-05-26 13:54:25