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等価線量と実効線量(2臓器モデルによる説明)

物理量として単純に理解できる等価線量と比べると、管理のための指標として算定される実効線量は、一般にはなかなか理解されづらいようです。 以下では実効線量の意味について、簡単な数値例をもとにして、実際に手を動かしながら理解してもらえるような説明を目指します。
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1.臓器別の等価線量をもとにした実効線量の計算

itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley いまここに体重10kgの人がいるとします。うち1kgが「甲状腺」で、残りの9kgが「その他の臓器」です。健康損害は単純に「発がん確率」とします。ただしこの人は「どれかの臓器ががんになると、ただちに死ぬ」ものとします(続く)

2012-01-31 19:12:10
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 等価線量1Svあたりの発がん確率は、「甲状腺」が9%、「その他の臓器」が1%とします。設定は適当でいいと思うのですが、とりあえず「この人の1年間の臓器別の等価線量をもとに、大晦日に神様がさいころをふる。その結果、どちらかの臓器ががんになると(続く)

2012-01-31 19:18:38
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley この人は死ぬ」としておきます。このモデルが「現実とかけ離れている」と思う人は、この表 http://t.co/JJKFN4kV の意味が理解できていないということになります。

2012-01-31 19:21:33
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 【例1】この人が(外部被ばくによって)γ線を全身に均等に浴びたとします。全身の吸収エネルギーが10[J]だったとすると、体重当たりの吸収エネルギーは10[J]/10[kg]=1[J/kg]、均等に被ばくしたのですから、臓器の重量当たりの吸収エネルギーは

2012-01-31 19:31:47
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley どちらの臓器も1[J/kg]、つまり、どちらの臓器も等価線量で1Svの被ばくをしたことになります。この人が大晦日にがんになる確率は、甲状腺が9[%/Sv]*1[Sv]=9[%]、その他の臓器が1[%/Sv]*1[Sv]=1[%]、したがって(続く)

2012-01-31 19:40:04
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 両方の臓器が同時にがんになる確率を無視すれば、大晦日にこの人ががんで死ぬ確率(=どちらかの臓器ががんになる確率)は9%+1%=10%になります。これがこの人の体全体への影響、いいかえれば「健康損害」の大きさです。

2012-01-31 19:47:54
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 【例2】この人が甲状腺だけに等価線量で1Svの被ばくをしたとします。このとき、この人が大晦日に死ぬ確率は9[%/Sv]*1Sv=9%になります。【例3】同様に、この人がその他の臓器だけに等価線量で1Svの被ばくをしたときの死亡確率は1%になります。

2012-01-31 19:58:59
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 以上の3つの例を比較します。目標は、この人の健康損害(=大晦日に死ぬ確率)の大きさを1つの数字で表せるような「実効線量」を定義することです。【案1】全身の吸収エネルギーを見る使うのはどうでしょう。計算すると、例1では仮定より10[J](続く)

2012-01-31 20:06:04
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 例2では1[Sv]*1[kg]=1[J]、例3では1[Sv]*9[kg]=9[J]になります。例2では例1より吸収エネルギーが小さいのに健康損害は大きい、例3は逆です。つまり健康損害の指標として、吸収エネルギーをそのまま使うことはできないのです。

2012-01-31 20:14:25

ここは間違えました。訂正します。全身の吸収エネルギーが最大になるのは例1です。問題は、例2と例3を比較したときで、健康損害は例2のほうが大きいのに吸収エネルギーは例3のほうが大きい。だから健康損害の指標として吸収エネルギーをそのまま使うことはできない、ということです。

itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 理由は簡単です。臓器によって「感受性」が違うからです。今回の設定では、等価線量あたりの発がん確率[%/Sv]が「感受性」をあらわします。なのでこれに比例した、重みづけのための係数を設定することを考えます。これが「組織荷重係数」です(続く)

2012-01-31 20:27:46

ここも(厳密にいえば)間違っています。等価線量あたりの発がん確率[%/Sv]は、その臓器の「感受性」を反映はするが「感受性」そのものではない。この問題については後で再検討したいと思います。

とはいえ、実効線量算定のための組織荷重係数が「等価線量当たりの発がん確率に比例した、重みづけのための係数」であることに変わりはありません。なので、ここではあまり細かいことにはこだわらずに話を進めることにします。

itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 【案2】組織荷重係数を、「甲状腺」は0.9、「その他の臓器」は0.1と定義する。また「実効線量」を「組織荷重係数で重みづけした等価線量の和」と定義する(数式は省略)。それぞれの例について実効線量を計算すると、例1では1Sv*0.9+1Sv*0.1=1

2012-01-31 20:36:18
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 例2では1Sv*0.9=0.9、例3では1Sv*0.1=0.1となり、健康損害の大きさを正しく反映していることがわかります。問題は単位ですが、等価線量と同じ「Sv」を使います。重みづけのための係数には単位がない(考えない)ので、自動的にそうなるのです。

2012-01-31 20:41:14

省略せずに書くと、例1では、

1[SV(等価線量)]*0.9+1[SV(等価線量)]*0.1=1[SV(実効線量)]

例2では、

1[SV(等価線量)]*0.9+0[SV(等価線量)]*0.1=0.9[SV(実効線量)]

例3では、

0[SV(等価線量)]*0.9+1[SV(等価線量)]*0.1=0.1[SV(実効線量)]

となります。実効線量が健康損害の大きさを正しく反映していることがわかります。

itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 以上が理解できれば「実効線量が同じなら健康損害も同じ」の意味も理解できると思います。実効線量を使えば「この人の死亡確率は1Svあたり10%」だと言えるのです。核種や線種、被ばくの状況が変わっても「1Svあたり10%」は変わりません。

2012-01-31 20:59:01
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 最後にもう一度【例2】を考えます。例2では甲状腺が等価線量で1Svの被ばくをしたのに、実効線量を計算すると0.9Svになってしまいます。この人の「甲状腺への被ばく」の影響を「実効線量」で評価することは「過小評価」になるのでしょうか?

2012-01-31 21:16:08
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 答えは「目的(場面)による」です。「甲状腺への被ばく」による「全身への影響」を考えたい時には「実効線量」を使うべきです。甲状腺は感受性の高さは「組織荷重係数」に反映されています。実効線量の計算は線量を「抑える」ためのものではありません(続く)

2012-01-31 21:29:53
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley 甲状腺の感受性が高い「のに」ではなく、甲状腺の感受性が高い「ので」、体重の1割しかない臓器「だけ」が被ばくしたにもかかわらず、その影響をあらわす「実効線量」は、全身均等被ばく時の値の9割にも及ぶ「高い」値になるのです。

2012-01-31 21:32:44
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley もちろん、「甲状腺への被ばく」による「甲状腺への影響」だけを考えたい時には、甲状腺の「等価線量」をみるべきです。例えば「安定ヨウ素剤を飲むべきかどうか」の判断は等価線量をみて行うべきです。いずれにしても、目的や場面を考えずに(続く)

2012-01-31 21:43:09
itaru nishino @nishinyon2

@leaf_parsley ヨウ素だから甲状腺、甲状腺だから等価線量と短絡した判断をしてはならないのです。以上、長くなりましたが、時間がある時にでもゆっくり読んでみてください。くれぐれも自分で分かったつもりになってるだけの人の「解説」に惑わされませんように。

2012-01-31 21:49:41

補足すると、もちろん

「ヨウ素は甲状腺に集中する」ので「ヨウ素の影響は(そのほとんどが)甲状腺への影響である」

は正しいし、

「甲状腺への影響は(甲状腺の)等価線量で見るべき」

も正しい。だからといって

「ヨウ素の影響は(甲状腺の)等価線量で見るべき」

と短絡してはならない、ということです。繰り返しになりますが、「甲状腺への被ばく」による「全身への影響」を考えたい時には、「実効線量」を使うべきなのです。

2.放射性物質の摂取を想定した実効線量の計算