「生物濃縮」の定義について

チーム中川の「セシウムはほぼ生物濃縮しません」発言と補遺から派生した、「生物濃縮」という語の定義についての議論。 五味馨氏は「生物濃縮が1000倍以上というのは慣例として妥当では」という旨の発言したところ、奥山雄大氏から「私の感覚からは大きくずれている」という旨の指摘がありました。 このズレは目指すところの違い、環境から人間への影響を考察するのか、環境自体を科学的に考察するのかの違いではないか、と五味氏がまとめています。 続きを読む
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五味馨 @keigomi29

@katukawa ご意見には概ね賛成致しますが、学術用語としての「生物濃縮」とは、通常、1000倍以上の濃縮に対して使います。100倍程度の場合には「生物濃縮」という用語を使わないのです。これは生態学・環境学の慣例です。(続)

2012-02-08 00:25:00
五味馨 @keigomi29

@katukawa 一方で「濃縮しない」というのは事実ではないというご指摘はその通りですし、リスクコミュニケーションとしての対応として不適切であることには同意いたします。(了)

2012-02-08 00:25:12
五味馨 @keigomi29

「生物濃縮」というのは移行係数が1以上という意味ではなく、移行係数でいうなら1000以上とかの時に使うのが生態学・環境学の慣例です。生物資源学部と地球環境学大学院で教育を受けた私の知る範囲では。

2012-02-08 00:28:34
五味馨 @keigomi29

まぁいいんだけどさ、濃縮はするんだし。

2012-02-08 00:28:45
五味馨 @keigomi29

でも、移行係数1以上のときに生物濃縮があるっていうふうに「生物濃縮」の定義を変えるのってやだな。ものによっては0.ほにゃ~1.ほにゃ、みたいなデータもありえるわけで、「生物濃縮するのかしないのか」が「1以上か以下か」の話になるのはやっぱり嫌だ。

2012-02-08 00:32:37
五味馨 @keigomi29

そのあたりは慣例であって定義でない、っていうのも話をややこしくするな。生物濃縮の定義を調べてもたぶん「1000倍以上のとき」みたいなことはなくて、「環境よりも高い濃度」みたいな書き方のはず。これを文字通りにとると移行係数が1を超えたら生物濃縮、ということになる。

2012-02-08 00:35:57
五味馨 @keigomi29

まあそれはそうと、100倍程度になるよって書いてある資料を挙げているのと同じページで「濃縮しない」って書いてあったのは(「生物濃縮」という用語は使っていなかったけれど)、あの状況でのリスク・コミュニケーションとしてはよろしくないですね。あ、今は「濃縮します」になってますけどね。

2012-02-08 00:41:14
勝川 俊雄🐬 @katukawa

@keigomi29 遅くなりましたが状況をありがとうございます。この「慣例」について、どこかに明文化されていないでしょうか?

2012-02-15 09:51:28
勝川 俊雄🐬 @katukawa

一方で、生態学・環境学の慣例の外にいる大多数の人は、「生物濃縮しないなら、環境と同じ程度の濃度なんだな」と誤解するわけです。生物濃縮は1000倍以上という学会の慣例に従うなら、その定義も明記した方が、一般向けコミュニケーションとしては親切です。

2012-02-15 10:02:38
五味馨 @keigomi29

@katukawa お返事ありがとうございます。研究室所蔵の環境学・生物学事典の類を数冊調べてみたのですが、「何倍以上のときに生物濃縮というのが通常」ということを明文化したものを見つけることは出来ませんでした。(続)

2012-02-15 10:58:21
五味馨 @keigomi29

@katukawa しかし、いずれの事典・総覧でも索引から「生物濃縮」をひくと、対象が有機水銀、PCB、DDTなど1万倍以上の濃縮を起こすことが知られている化合物への言及でした。このことは件の慣例の存在を示唆しますが、やはり定義としては「環境中より高濃度」とされているようです。

2012-02-15 11:05:05
五味馨 @keigomi29

@katukawa なお、私は三重大学生物資源学部の出身です。資源循環学科で農業経済のゼミにいました。(大学院から京都大学地球環境学舎)勝川先生のツイートを拝見して、志摩の牡蠣、学生時代に芦浜原子力発電所について南島町に聞き取りに行ったこと等思い出しております。

2012-02-15 11:10:23
五味馨 @keigomi29

この勝川先生の考え方に私も賛成です。

2012-02-15 11:22:29
五味馨 @keigomi29

でも移行係数(濃縮係数と言ってもいいですが)の測定値って結構幅があったりするので、その幅が1をまたぐとき、例えば0.1~5.0 みたいな値で出てきちゃったときに、「生物濃縮するのかしないのか」みたいな話になるのはイヤだなぁと思いますが、仕方がないか。

2012-02-15 11:24:00
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

横から失礼致します。僕も一応生態学(自然史生態学)の研究室出身の人間ですが、生物濃縮が1000倍以上の濃縮を指す、というのは私の感覚からは大きくずれているように思います。そもそも学術的にも1000倍で線引きする理由が理解できません。RT @keigomi29 @katukawa

2012-02-15 11:24:49
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

(続)これは単純に極端なものを例示しているに過ぎないと思います。RT @keigomi29 @katukawa: いずれの事典・総覧でも索引から「生物濃縮」をひくと、対象が有機水銀、PCB、DDTなど1万倍以上の濃縮を起こすことが知られている化合物への言及でした。

2012-02-15 11:26:11
五味馨 @keigomi29

私は水産庁の意図にはあまり興味がないのですが、同庁は少なくとも2011年4月時点で笠松論文(PDF http://t.co/EEjF5oiE)の内容を把握し公開していました。当時の私のツイート:http://t.co/xW7CGReb

2012-02-15 11:31:41
五味馨 @keigomi29

@yokuyama @katukawa 昨年3月以前に書かれた学術論文・書籍において、100倍程度の移行係数の場合に「生物濃縮」という用語を用いている例がありましたらご教示頂けますか。

2012-02-15 11:34:00
五味馨 @keigomi29

@yokuyama @katukawa 当初から書いているように私はそのような慣例があるようだと認識しています。日本語で「生物濃縮」という言葉が使われたときに1000倍以下の例を見たことがないからです。定義としては「環境中よりも高濃度」だと私も認識しています。

2012-02-15 11:35:33
五味馨 @keigomi29

@yokuyama @katukawa なお、索引から調べた場合には「生物濃縮」の定義・解説を目的とした項目だけではなく、ある汚染について述べた文脈で生物濃縮という言葉を使う項目にもたどり着きますし、そうでした。そのため「極端なものを例示しているに過ぎない」は事実ではありません。

2012-02-15 11:38:26
奥山雄大(茨城県在住関西人) @yokuyama

すみませんこれは微妙に専門を外れている研究者の理解として申し上げました。つまりその慣例の適用範囲は狭いであろうと。RT @keigomi29 @katukawa 当初から書いているように私はそのような慣例があるようだと認識しています…定義としては「環境中よりも高濃度」だと私も認識

2012-02-15 11:38:58
五味馨 @keigomi29

@yokuyama そうですね、私が読んできた文献は人の健康に被害を及ぼしそうな環境汚染に限られている、ということはあると思います。そのコミュニティから出た場合には違うのかもしれません。

2012-02-15 11:41:33
五味馨 @keigomi29

生物濃縮の件、生態学の奥山先生@yokuyamaから、1000倍程度以上の場合を指すのが普通というのは適用範囲の狭い慣例ではないかとのご指摘を頂きました。確かに、私が読んできた文献は高次消費者の健康に被害を及ぼしそうな環境汚染に限られている、ということはあると思います。

2012-02-15 11:45:57
五味馨 @keigomi29

人の健康に被害が出るか(出そうか)どうか、が環境問題の文脈では重要で、そういう問題設定をします。これは、環境問題へのアプローチとして生態学を使う人と、科学的事実の解明を目的として生態学を研究する人との間での認識の違いに関係しているかもしれません。

2012-02-15 11:50:46
五味馨 @keigomi29

比較しなければリスクの大きさが分かりづらくて仕方がないと思うのですが、どうして比較そのものが否定されるのやら。

2012-02-15 11:51:29